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百合帝国  作者: 旅籠文楽
1章 -

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113/370

111. 〔女神〕

 


     [2]



 ―――前々から、少なからず不思議には思っていたのだ。

 ユリの視界の隅には常に、自身の『魔力の残存割合』を示すメーターが表示されている。これは『アトロス・オンライン』のゲームに存在していたものと同じで、いわゆる『HPバー』や『MPバー』と呼ばれる類のものだ。


 『アトロス・オンライン』では、生命力や魔力が満タンではない(・・・・)時にだけ、このメーターが表示されるようになっている。

 ユリの視界に『生命力の残存割合』を示すバーが表示されていないのはそのためだ。都市の外に出ない限りはダメージを与えてくる敵と遭遇することも無いので、基本的に生命力は満タン状態が維持され、バーが表示されることはない。


 一方で『魔力の残存割合』を示すバーは常に表示されている。

 ユリの魔力が普段から様々なことで継続的に消費されているため、『満タン』の状態が殆ど維持されないからだ。


 例えば、百合帝国の支配下にある全ての都市・村落に掛けている【空間把握】の魔法。これを維持するために、ユリは少なくない量の魔力を常に消費している。

 『転移門』もそうだ。百合帝国とニムン聖国、更にはシュレジア公国と元王国領の全ての都市に設置しており、利用すれば迷都ユリシスへ一瞬で移動できる『転移門』は、ユリの魔法によって作成されたものだ。

 本来であれば『転移門』は必要な時にだけ設置し、不要になれば即撤去するものであり、複数を維持するようなものではない。だというのにユリは、多数の都市にこれを設置しているため、当然その魔力消費はかなりのものになる。


 そして―――最も魔力を継続消費するのは『召喚中の使役獣』だ。

 実は現在、ユリは総勢『3000体』以上という途方も無い数の使役獣を、常に召喚し続けていたりする。その用途は言うまでもなく、迷都ユリシスにて絶賛稼働中の『迷宮地(ダンジョン)』に配置する『魔物役』だ。


 『迷宮地』には各階ごとに平均100体前後の魔物を配置するようにしている。

 実際には低レベルの場所だと、1階あたり120体ほど配置していることが多いだろうか。逆に高レベル向けの場所だと、70~80体ぐらいしか配置していないことが多い。

 それぞれの『迷宮地』は基本的に地下5階まで存在しており、迷都ユリシスには『迷宮地』が全部で6箇所ある。

 だから全部で100体×5階×6ダンジョン=3000体程度というわけだ。


 使役獣を召喚していると、常にユリは魔力を消費し続ける。

 消費する魔力量は高レベルの使役獣ほど多くなり、低レベルの使役獣ほど少なくて済む。特にレベルが120以下の魔物は『下級使役獣』と呼ばれ、消費魔力量は非常に少ないのだけれど―――。

 とはいえ流石に3000体ともなれば、総合量としてはかなりの負担だ。


 また配置している個体とは別に、『迷宮地』に挑むパーティの光景を『放送』する為に、撮影役として召喚している『シルフ』などの使役獣が200体程いる。

 ユリの『側室』と懇意にしている商人たち―――つまりエシュトアとソフィア、リゼリアとロゼロッテの側室4名と、ルベッタとアドス、エリンにオーレンスの商人4名には、それぞれ『グレーター・レイス』というレベル『140』の使役獣を護衛に付けている。

 レベル120~199までの魔物は『中級使役獣』と呼ばれ、召喚中は下級個体の数倍近い魔力を消費する。全部で8体だけだが、これも幾許かの負担にはなる。


 そして単体で最も魔力を食うのは、もちろん『覇竜ラドラグルフ』だ。

 随分久しく顔を見ていないような気がするけれど。覇竜ラドラグルフは現在でも召喚され続けており、当然ユリは多量の魔力を消費し続けている。

 何しろ覇竜ラドラグルフのレベルは『1850』なのだ。レベルが200を超えると『上級使役獣』という括りになるのだけれど、流石にこれだけ突き抜けたレベルに達していると、最早『上級』より『超上級』と呼ぶべきな気さえする。

 これ程に強大な魔物を召喚していれば、それだけで普通の人なら1時間と経たずに魔力が枯渇してしまうことだろう。


 ユリの職業である〈絆鎖術師(エーテリンカー)〉は『アトロス・オンライン』のゲームに実装されていた職業の中でも、かなり高い魔力量を有する職業だ。

 とはいえ―――【空間把握】と『転移門』、そして膨大な『召喚中の使役獣』。

 これだけ多くの魔力を負担していれば、いかに〈絆鎖術師〉とはいえ、そろそろ魔力の枯渇が見えてきても良さそうなものだが。

 常に表示されているユリの『魔力の残存割合』を示すバーは、常に最大値付近を行ったり来たりしており、一向に減りそうな気配さえ見えない。


 流石に訝しく思って、ユリが自身を〈鑑定〉で()てみると。




----

 ユリ

   人間種(ノルン)/18歳・女性/性向:極悪(-100%)

   〈絆鎖導師(エーテリンカー)〉- Lv.200

   〔女神〕- Lv.155


   生命力: 444808 / 444808 (288468 + 156340)

    魔力: 354162 / 354162 (346162 + 8000)


   [筋力]      0 (2840 + 1620 + 117/装備補正-100%)

   [強靱]      0 (3160 + 2128 + 150/装備補正-100%)

   [敏捷]      0 (3160 + 1620 + 339/装備補正-100%)


   [知恵]   6352 (3520 + 2271 + 561)

   [魅力]  51342 (5000 + 10303 + 1811/装備補正+200%)

   [加護] 288468 (4290 + 90826 + 1040/装備補正+200%)


----




「……何、これ……」


 思わずユリは衝撃のあまりに、その場で愕然としてしまう。

 なんだか一見しただけで判る程に、色々と大変なことになっていた。


 ―――突っ込み所が多すぎて、何から触れたら良いのかも判らないけれど。

 まず、この〔女神〕という職業は一体何なのだろう。いや、表記から察するに、この〔女神〕というのは職業ではなく『天職』の類だろうか。


(一体いつから、私はこの天職を得ていたのだろう……)


 普段ユリは〈鑑定〉を用いて自身のステータスを確かめることが殆ど無い。

 何故なら、レベルが限界の『200』に達して久しい自身の身体は、それ以上の成長など望めるものではないからだ。いつも同じ数値だけが並ぶステータス画面など、見ていて虚しいだけでしかない。

 ただ、リュディナが大変革を実施して以降は、訓練を積むことで『スキル』が会得可能となったので、その辺の情報だけを〈鑑定〉で確認することはあるけれど。一方でレベルや能力値などが列挙された『ステータス画面』自体は、全くと言って良いほど普段から表示させたりはしていなかった。


 だから―――気付くのが遅れた。

 〔女神〕という天職を得ていることにも、そのレベルがいつの間にか『155』にまで成長していることにも、ユリは今の今まで全く気付いていなかった。


「何だか、生命力と魔力の数値も、おかしいことになってるわね……」


 ユリの元々の生命力は、普段身に付けている装備品込みで大体『15万』ぐらいだった筈だ。魔力の方も大体『6万』ぐらいだったように思う。

 それが今や―――生命力が『44万』で、魔力は『35万』。

 最早プレイヤーの能力値というより、ちょっとしたボスモンスター並みの数値にさえ達しているように思える。


 修得しているスキルや、身に付けている装備品の効果により、ユリは1分ごとに魔力を『最大値の15%』ほど自然に回復することができる。

 以前の魔力最大値は『6万』ぐらいだった筈なので、元々は1分間に『9千』点程度の魔力を自然回復できていたわけだ。

 けれど―――今や、魔力の最大値は『35万』。

 となれば自然回復量はその15%で、1分間に『5万2千』点ぐらいの魔力が、常に補充され続けることになる。


(……道理で私の魔力が、全然減らないわけだ……)


 魔力の自然回復速度が、以前の6倍近くに増えているのであれば。様々なことに膨大な魔力を消費していてなお、回復速度のほうが上回るのも理解できる。


 理解はできるのだけれど―――納得は、正直できていない。

 そもそも、どうしてこんなことになったのだ。


「やっぱりこの〔女神〕という天職が、原因の可能性が高そうね……」


 そう思ったユリは、執務机の椅子から立ち上がる。

 餅は餅屋だ。判らないことは、同じ『女神』に訊ねるのが一番だろう。





 

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[良い点] 更新乙い [一言] 女神は仕事だからね
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