第15話 その2
「しかしその調子だと、今週中に完成っていうのは難しいか」
「そうですね。締め切りは守れてませんし……」
「いや、この締め切り設定はあんまり守れなくても良いんだよ。初めて小説を書く人達に対して、時間の大切さを知ってもらうためのものなんだ。文芸部伝統のね」
「なんていうか、ちょっと負の遺産みたいな感じしません?」
良い言い方をするなら洗礼とか色々あるんだろうけど、この話だけ聞いているとどうもマイナスのイメージが頭に残ってしまいそうだ。
「それともう一つ。毎年ゴールデンウィーク明けが締め切りのコンクールがあって、余裕のある人はそこに応募してみよう、なんてのも兼ねてるんだ。佐々木さんは今年の参加は流石に厳しいだろうけどね」
「まぁちょっと、余裕とかそういうのはないですね」
終わらせられるようなら苦労してはいないだろうからなぁ。
けれど進学と同時に最速で入部しても、締め切りまでは長くて一ヶ月くらいになる。このハードな難易度設定をクリアした一年生は、過去に何人いたんだろうか……?
「残りのコンクールはいくつあるんですか?」
「大きいのは夏と秋かな。あとは部活単位ではないけど、先輩方は小さい賞にもちょくちょく応募してたみたい」
「となると、僕が最初に応募する可能性があるのは夏ですか?」
「だね。夏の締め切りは7月の終わりだから、まだ二ヶ月もある。今のうちにしっかりと筆を進めておくといいよ」
自分で最後まで書くだけなら、今月中にはなんとかなりそうなペースだ。それから先輩方によっでもらって修正したとしても、それからまだ一ヶ月近く余裕があるかな。
「あぁ、言い忘れてた。夏休みから文化祭にかけてはかなり苦しい時期が続くから。覚悟しておいてね」
「……詳しくお願いします」
「秋のコンクールの締め切りは9月末。文化祭は10月初めの開催だけど、文芸誌を作らなきゃいけないから、締め切りは同様に9月末になるんだ」
「それまでに一作品作って、両方に応募って感じですか?夏休みの間にかなり気合い入れないとですね」
「いや、そうじゃないんだ」
なんだろう。当たり前だがこんな言われ方をしたら、不安が募る。
「コンクールに応募できる作品って、未発表の作品じゃないといけないんだよ。それに結果がはっきりと出るまではあまり公表しない方がいいんだ」
「つまり、コンクール用の作品と文化祭用の作品、二つ書かないといけないってことですか」
「その通りだ」
確かに、すでに発表してて評価されている作品を応募されると問題だもんな。
作品全部を調査するなんて無理な話だし、そういうのはあらかじめ弾いておけば下手なトラブルに巻き込まれることもない。
しかし二ヶ月で二作品か。
今回の僕はかなり運が良い方だろう。というか史記から少しパクってるから、かなり楽して執筆している。それで一ヶ月。あまりにも短い。
――不安だ。





