第14話 その6
気がつくと、見知らぬ場所にいた。暗くて静かなどこかで、長椅子の上に座っていた。仄暗い世界の中で、天井からぶら下がった「佐々木」と書かれた看板が目に痛い。
……いや、どこかで見たことがある。この光景を目にしたのはいつのことだ?
答えを思いつく間もなく、横から光が差し込む。その眩しさに目を閉じると、次の瞬間には目の前に列車が止まっていた。
ドアが開かれ、古めかしい内装がその姿を現す。
そうだ、思い出した。この光景は――
ドアをくぐると、そこでは琥珀色の髪と瞳を持つ、あの人が待っていた。
「やぁ、久しぶり。元気にしていたかい?」
無限夜行列車を降りたその先、終点の光景に、それは酷似していた。
「どうしたんだい?この前倒れたあの時みたいに、顔色が真っ青だよ?」
「……長い夢を見ていたようです。気にしないでください」
「それほどの悪夢と言われると気になってしまうよ。思い出したくなさそうだから深くは聞かないけどさ」
「そうしてもらえるとありがたいです」
どんな夢を見ていたのか、何も思い出せない。琥珀さんのいう通りロクでもない夢だった気はするのだが、いざ思い出そうとすると、頭の中に靄がかかったように読み取れない。
人は思い出したくないようなトラウマや記憶を、きっかけがない限りできるだけ思い出させないようにする、なんて学説を聞いたことがある。その影響だろうか。
まぁ夢はもともと思い出しにくいものだし、気にしないでおこう。
「それで?君の方から乗車しに来たてってことは、何かあったんだろう?」
「えぇ、まぁ。相談……になるかもしれないんですけど」
「いいさ、好きに話したまえ」
質問したいことは山ほどあるがまぁまずは。
「能力ってなんなんですか?」
「その質問は曖昧がすぎる。もっと具体的に聞いてもらわないと、私としても答えようがないよ」
「じゃあ、能力のメカニズムってどうなっているんですか?どうして能力が目覚めたり、目覚めなかったりするのかとか……」
「――そうだね」
琥珀さんは考えるようなそぶりを見せる。
やはり何でもかんでも喋ってくれる、とはいかないか。こんな風に悩むってことはそういうことなんだろう。
「それを順序立てて応えるためには、私からもいくつか質問する必要がある。先にいいかい?」
「どうぞ」
「それじゃあ。君が能力を自覚したのはいつのことだい?」
一瞬だけ、応えるのに躊躇した。
まぁ、この人にならもういいかと、そう思えてしまえるんだけど。





