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碧眼の怪物  作者: 曼珠沙華
フィクションならよくありそうな話
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第14話 その5

 自分の病室内くらいはなんとか歩けるようになった頃、僕は精神科の病棟に移ることになった。まだエスカレーターで疲れてしまうくらいだから、看護師さんに車椅子で運んでもらったけれど。

 そこからの日々はほとんど定型文のようになっていた。病室とリハビリセンターを往復するか、両手足を紐でくくりつけられてベッドの上で過ごすか。その二択だ。


 リハビリが本格化してきた頃に、作業療法士に言われた言葉が自然と頭に残っている。

「いいですか、あなたは今『生きるための体力』を取り戻したばかりなんです。これからは『生活するための体力』を取り戻すために、リハビリを続けていかなければなりません」

 上手な例えだと思う。歩くことができず、ベッドで寝たきりになった人間はいずれ死ぬんだから。

 けれどそれと同時に、回復するまでの道のりがまだまだ遠いことも実感できた。

 歩き回るだけで倒れそうなほど弱っている体を、日常生活が支障なく遅れる程度まで戻さなければならないのだ。それを実感した僕の心は、またしばらく荒んでいった。

 その結果、発作的に暴れ出す日が少しずつ増えていった。暴れるといっても、体力が皆無なので長時間には及ばない。けれど体をぶつけたりすることを考慮して、そういう日は一日中ベッドの上でに拘束される羽目になってしまった。

 しかし結果論ではあるが、ここで暴れたのが無理な運動になってくれたおかげで、僕の体力回復計画は随分と前倒しされていった。

 体力が元に戻ったなら、1日に活動できる時間も増えていく。そうしてリハビリの量もだんだんと増えていき、体が自由に動かせるようになる。ストレスの原因が薄れていくことで精神的な不安も和らいでいく。

 運良くそんな好循環を作り出せたおかげで、僕自身や担当医の予想をはるかに超えるペースでまともになっていった。


 僕が眼帯をつけるようになったのはちょうどその絶頂期だった。

 自分の身の回りのことに気がいくくらいには、心の余裕が生まれ始めていたからだ。

 こんなでも女の子だからな。病院内とはいえ、身だしなみについて少しくらいは気にするものだ。けれどそれで鏡を見るたびに癇癪を起こしているのではたまったもんじゃない。せめてこの碧眼を隠すくらいのことは……。

 担当医も二つ返事でOKしてくれた。それが仕事だから当然かもしれないけど、次の日から清潔な眼帯をもらえるようになって、心底安心した。

 最初の方はかなり混乱したが。それまでずっと両目で生活していたから、片目だと距離感がつかめなかったりという苦労が絶えないのだ。慣れるまではよくあちこちに体をぶつけて、その場に倒れるようなことがあった。

 そんな感じで、僕の今のスタイルが出来上がりつつあった。

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