第14話 その3
けれどそのコミュニティには興味がある。
情報の入手経路はいくらあっても困ることはない。能力者としてまだまだひよっこの僕にとっては、魅力的な提案といっても間違いではないのだろう。あまりにもイライラしているせいで、その実感が湧いていないのが問題なのだが。
「それって、結成されてからどのくらい経つんですか?」
「確か、今年で五年目ね」
歴史はそれほどでもないか。長ければ溜め込まれた知識も膨大なものになっていただろうが、それは望みすぎ、というか都合が良すぎるよな。
本末転倒気味だが、ここは琥珀さんに相談してみるか……。
とにかく情報が欲しい。ただでさえ精神がボロカスなのに、新たな問題を抱え続けていたら心が破滅してしまいかねない。沖田さんのこともあるし、不安要素を取り除いていかなければならないはずなんだけど……どうしてこんなことになっているんだろう。
「それで、興味を持ってくれたかしら?」
「そうですね。少し――ゴールデンウィークが明けるまで、待っていてもらえませんか?急な話ですから、僕も混乱していて」
「それはもちろん。入会するかどうかは本人の自由意志に任せてるから。ゆっくり考えてちょうだいな」
僕も秋篠先輩も、社交辞令的な言葉を交わす。話にならないな。
「本当に夕飯は奢らなくていいのかしら?もう良い時間だけど」
「その辺のスーパーで買って帰りますよ。後はじっくり考えさせてください」
喫茶店を出てしまおう、なんて提案したのは僕だった。その綺麗な緑色の瞳で見つめ続けられるのが、どうしようもなく耐えられなかったのだ。
コンプレックスというものは恐ろしいとつくづく思い知らされる。秋篠先輩に非がないのは誰だって知っている。僕がただただ卑屈になりすぎているだけなんだ。わかっていてもどうしようもない。
僕は結局のところ、沖田さんと出会う前から――真っ白なベッドの上で、管を繋がれて生きていた頃から何一つ進歩していない。
「最後に一つ、いいですか」
「構わないわよ。なんでも言ってちょうだいな」
「……どうして僕が能力を持ってるって、そう確信できたんですか」
「そりゃあもちろん、その瞳の色ね。能力を使っているときは、瞳が緑色に輝いていたじゃない。今は真っ黒なままだし。はたから見ればわかりやすいことこの上なかったわ」
どうやら勘違いしているらしい。奥側の席でずっと座っていたから、秋篠先輩からは右瞳しか見えなかったようだ。眼帯をしている今は隠れているものな。
わざわざ訂正しなくてもいいか。この人にはできるだけ碧眼を見せたくはないし。
……ひねくれているのはわかっているんだ。本当に。きちんと自覚できている。
「それじゃあ気が向いたら、教えた連絡先にいつでも電話かけていいからね。また会いましょう」
「えぇ、また」
こういう感情をどう表していいものか。
不甲斐ない自分に憤りを覚えているのか、進歩しない自分に悲しんでいるのか、大人気ない自分に呆れているのか、悩んでいる自分に同情しているのか、自問自答する自分に憐れんでいるのか――
夕日が暮れ沈んでいく中、町の雑踏の中に消えていく秋篠先輩の背中を目で追いながら考える。
けれどやっぱりというか、当然答えが出るわけもなかった。
一つわかったのは、僕はあの人が嫌いだという、くだらない事実だけだ。
本当にくだらない。





