第1話 その4
「その、何かあったんですか?」
「へ?どうしてそんなことを?」
「なんていうか、さっきと比べて声色が暗いっていうか、そんな感じがしたので」
「……鋭いですね。もしかして心理学者とか目指してるんですか?」
「いえ、別にそういうわけではないんですが」
これは僕が他人の顔色を伺うことが多いからだろう。
碧眼もそうだが、事故のときに背中に大きな傷を背負ってしまった。他人から特異な目で見られてしまうのは、仕方のないことだ。
そういうのを隠すために眼帯をつけたり、髪を伸ばしたりしたわけで。結果としては眼帯もかなり目をつけられるが、碧眼を晒していた頃に比べればまだマシといったところか。
そもそも碧眼を見られることは精神的に辛いことだったし、早かれ遅かれ身に付ける必要はあっただろうけれど。
「お家が吹っ飛んじゃいましてね。どうしようか悩んでます」
「……それって、もしかしなくてもとんでもないことですよね?」
お家が吹っ飛ぶって、どういうことなの……?日本で普通に生活していて、そんな事件はほとんど聞いたことがない。ガス爆発とかテロとか、あったとしてもそういう危険な類のものだろう。少なくとも頻発してはならない。
「もともとボロアパート住まいで、けが人も出なかったようなのでその辺りは安心なんですけどね。血が流れなかったのは喜ばしいことです」
「でも住む家がなくなっちゃったんですよね?それって危険なんじゃ」
「そうなんですよね……。今知り合いに頼んで新居を探してもらってるんですが、2〜3日かかるみたいで。お金あったかな」
袖口からがま口の財布を取り出して中身を見ているが、沖田さんの顔は厳しそうな表情になっていく。
「住む家がないなら、うちに泊まっていきませんか?」
それは頭の中に思い浮かんだ途端、ほとんど反射的に言葉として発せられた。
「いや、それは少し迷惑じゃないですか?お布団や食事の用意だって簡単じゃないですし」
「困った時はお互い様って、沖田さん言ってたじゃないですか。今度は僕の番です」
「む、確かにそう言いましたけど……」
我ながら今のはうまく言葉をつくことができたと思う。
「それに命の恩人ですからね。3日くらいならどうってことありませんよ」
「うむむ……」
「だからどうです?」
「……わかりましたよ、お言葉に甘えさせていただきます」
「やった!」
……あれ?何がやったなんだ?
そもそも、僕はなぜ沖田さんを引き止めたんだろう。
「しかし私を引き止めるのに、妙に必死でしたよね。なにかありました?」
「……いえ、命の恩人ってことです。多分……」
今はまだ、答えられないらしい。





