第13話 その5
そういえば昼食を決めてなかった。
頭痛はもうない。あれのせいで朝食は軽めに抑えていたけど、流石にこの時間になるとお腹が減ってくる。それに能力で集中しすぎてとても疲れた。ここはいつもよりしっかりとしたものを食べておきたい。
しかしこの辺りは図書館以外の用事がなく、あまり街中の様子を知らないのだ。一応大きめの服屋やデパートがあるのは知ってるんだけど、近場のスーパーで間に合ってしまうので利用機会は少ない。
デパートの中ならそれなりにご飯屋が入っているだろうけど、ちょうど正午だからかなり混雑していることだろう。
適当にぶらぶら歩いて料理店でも探そうか……。
そんなことを考えながらぶらぶらと歩いていると、道道で見かけるのは喫茶店やファミレスばかりだ。喫茶店はあまりがっつりとしたメニューが思い浮かばないし、ファミレスは量を頼むと価格設定が問題になってくる。
一度家に帰ることも一瞬考えたが、往復の時間があまりにももったいないし、単純にしんどい。
さてどうしたものか――その時、中華料理屋の看板が見えた。
あぁ、中華料理。ちょうどいいんじゃないか?チャーハン+おかずみたいな組み合わせなら十分お腹にたまるだろうし、高級店じゃないなら1000円以内に収まりそうだ。普段食べる機会もないし、そういう意味では気晴らしになるかもしれない。
店の前には立て看板も置かれていて、「本日のランチ」と大きく書かれていた。
Aランチが麻婆茄子定食、Bランチがエビチリ定食、Cランチが担々麺とチャーハンと唐揚げのセット。ABが600円でCが700円。安い。ちょうど都合の良いお店だ。
この並びなら普段なら絶対に口にしないであろう、担々麺一択だ。辛いのは苦手じゃないし、それをいうなら麻婆茄子もエビチリも全部辛いのであまり関係ない。
そうと決まれば入店するとしよう。
「いらっしゃいませ〜。お好きなお席へどうぞ」
しかし想像よりも店内はガラガラで、空席がぽつぽつと目立っていた。あまり評判がよろしくないのだろうか、と心配になってしまう。入った以上食べて帰るけど。
ちょうどよくカウンターの一番奥の席が空いていたので、そこに座った。
「おしぼりとお冷です。ご注文が決まったらお呼びください」
「あ、Cランチでお願いします」
「Cランチ、かしこまりました」
厨房の方から、ごま油のような心地よい香りが流れてくる。中国人じゃなくても、このあからさまに美味しそうな香りにはどこか惹かれてしまうものがあるな。思わず唾が溢れてきそうだ。
10分ほど待つと、店員がランチを持ってきた。その間新しくお客さんが来店することはなかったけど。
「お待たせしました、Cランチです」
「ありがとうございます」
しかし運ばれてきたものを見て僕は驚愕した。ラーメンとチャーハンが一人前分くらいあるのだ。
「……これって本当にCランチですか?」
「はい、そうですけど?」
どうせ半チャーハン半ラーメンくらいなんだろうな、くらいの軽い気持ちで注文してしまったので、正直なところ度肝を抜かれている。唐揚げの個数が少ないから、食べられない量ではないが……。
「いただきます」
えぇい、ままよ。どうせ量はしっかりと食べたいと思っていたんだ、願ったり叶ったりじゃないか。
まずは坦々麺のスープを――と思ったが初手で辛いものを食べると味覚が軽く麻痺しそうなのでやめた。火傷しそうだしね。というわけで麺から勢いよくすすっていく。
……なんだ、美味しいじゃないか。ちょっと辛すぎる気もするが、別にお客さんを寄せ付けないようなものはなにもない。冬場に食べたらもっと美味しくなるだろうな、これは。
唐揚げとチャーハンもいただく。唐揚げは噛んだ瞬間に肉汁が溢れてくるようだった。付け合わせの塩胡椒もちょうど良い。そこにぱらぱらのチャーハンを口に放り込むと、これがまた合うのだ。
本当に美味しいな、休日に繁盛していないのが不思議なくらいだ。ランチメニューは量の割に格安な値段設定なのは見てわかるし、他人を寄せ付けないような風貌でもないし。もっと知られるべき良いお店のように思う。
まぁ、少し量が多いけど。僕は痩せすぎているから気にしないけど、女子受けは良くないかもしれないな。間食こそできたが、朝食をしっかり食べていたら厳しかったかもだ。
「ごちそうさまでした」
今度誰かにオススメしておこう。男子の宮原部長あたりならうまく刺さるかもしれない。





