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碧眼の怪物  作者: 曼珠沙華
フィクションならよくありそうな話
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第13話 その3

 ……頭が痛い。

 朝起きた途端にこれとは、頭痛がさらに痛むような話だ。要は重複するようにものすごくひどいということ。

 そして頭の中には、自分の知らない記憶が書き込まれている。

 本能的な理解、とでも形容しようか。思えば目を合わせる能力は、病院のベッドの上で目を覚ました時、自分が使えることをなぜか知っていた。能力という存在はやはり奇怪が過ぎる。

 僕の頭の中では、二つ目の能力が名乗りを上げていた。

 ――せっかくだし、図書館に行った時に使ってみるとしよう。多分ちょうどいい能力だ。

 そんなことを考えながら雑めな朝食を摂る。あまりにも頭痛がひどいものだから、普段は食べない予備のコーンフレークを食べることにした。さらにぶち撒いて、牛乳をぶち込めばすぐに完成してしまうんだから、こういう時には大助かりだ。


  しかし、能力というのは原則一つだと琥珀インターリャさんは言っていた。目を合わせる能力が失われているような感じもしないし、おそらく二つの能力は同居しているんだろう。

 こういう例外は基本的にハイリスクハイリターンだと相場が決まっている。能力の使いすぎで体が蝕まれるとか、デメリットになる能力が追加されるとか、ライトノベルならそういう展開が待っている。

 残念ながら僕に主人公補正はないので、今後負の側面が強調されることも覚悟しておかなければならない。その前に琥珀インターリャさんにも話を聞いておかないと……。

 今日は春先の寒さが和らいで、ちょうどお出かけ日和と言えそうな暖かな日になると予報されていたのに、朝からこんな調子では、不安が募るばかりだ。

 そういえば列車に乗る方法を聞いていない。自分が乗りたいと強く願って眠れば、自由に乗車できてしまうものなんだろうか?しかし僕以外に乗車する人がいることを言及していたし、そういった人々とバッティングする可能性もあるのかもしれない。……まだまだ瞳は他人に簡単には晒したくないな。その覚悟はまだ疎かだ。

 朝食を終える頃には頭痛は少しマシになった。まだキーンという耳鳴りがかすかに残っているけど、しばらく歩くのに不自由するようなほどではない。予定通り図書館に向かうとしよう。


 目当ての本は案外すんなり見つかった。タイミング悪く他に誰かに借りられていたとか、そもそも蔵書の中に存在しなかったとか、そんなトラブルは皆無だ。

 けど最近の図書館は便利だな。ディスプレイを操作すると、目当ての本がどの辺にあるとか、だいたいの情報を網羅してくれている。こういう時って大抵ジャンルから攻めていって、五十音順に並んだ作者名とにらめっこして時間を浪費してしまうものだけれど、ものの10分で三冊全て揃ってしまった。

 三冊とも借りられればよかったのだけれど、残念ながら一冊だけ禁帯シールが貼られてしまっていたので、これだけ読んで帰るとしよう。

 その一冊は司馬遷の太史公書――通称『史記』だ。古代中国の1000年分くらいの歴史を網羅しているわけで、人物ごとにまとめられているのが特徴だ。当然成功談・失敗談の類は掃いて捨てるほど収録されているので、今回の小説の着想に使うにはぴったりだろう。流石に内容そのものが古すぎるので、現代風にアレンジする手腕が必要だが。

 しかしまぁ……分厚い。あまりにも重たいものだから、机まで持っていくのにかなり体力を使ってしまった。1000年分の歴史ともなれば当然か。

 元が漢文であることを考えると、これは日本語注釈が大量に入れられているタイプなので、原文の数倍くらいの量はあることだろう。

 普通なら読み終えるのに数日はかかるだろうが、今回は秘密兵器がある。

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