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碧眼の怪物  作者: 曼珠沙華
フィクションならよくありそうな話
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第11話 その2

 あれから倉橋先輩とあらかたの話は終わらせた。

 あの人が綴木先輩のことを好いていることはもちろん、僕ができる限りの協力をすることも伝えた。といっても僕が協力しすぎても意味がない。あくまで倉橋先輩本人から動くべきだ、とも同じく伝えたのだが。

 今日は先輩には一人で部室に向かうように指示しておいた。僕の方から紹介したと言うよりも、自ら興味を持ってやってきた、という形の方が印象は良いだろう。たいていの場合、自主的な人間の方が評価されやすい。例外は話にならないほどの無能くらいのものだ。

 そして表向きには、僕と倉橋先輩は知り合いでもなんでもないということにしておいた。いちいち二人で密会しているほど暇はないし、他人に見られた時に誤解されかねない。綴木先輩への好意を伝えるのなら自主性も必要だし、できるだけ干渉しすぎないようにするためだ。だから二人でやり取りをする時は顔をあわせるのを極力避け、基本的にはメールで処理することにした。


 しかし人の恋路の面倒を見ていられるほど、僕にはあまり余裕がないはずだったんだけどな。それがわかっていながら断れず、新たな問題を抱え込んでしまった形になる。

 正直なところ、倉橋先輩が僕の姿と重なってしまった。どうしても放っておけなかった。

 他人に理解されないことの辛さを、僕はよく知っている。また先輩は僕と違って、他人に理解されることに拒絶感は示していなかった。この人のことはまだよく知らないが、優秀だと言うことは強く伝わってきた。

「頼まれたら断れないよなぁ……」

 そんな愚痴っぽい言葉を口から漏らす。幸いにも喧騒の多い教室内での独り言だ、僕のことを注視する人物など誰一人としていなかった。

 そう、断ることができなかった一番の理由は、頼られてしまったことだ。

 事故以降、僕には頼られるという経験が圧倒的に不足していた。治療やリハビリ、その後の生活面においても、僕は常に頼る側の人間だった。治療が続いている今でもそれはあまり変わらない。

 要は期待されることがなかったわけだ。だからどうしても断れなかった。それだけなのだ。

 人間らしい理由なんじゃないかと、そう思う。


 部からの課題も残っている。まだ何を執筆しようか、その題材すら決まっていないままだ。

 明日からは連休に突入する。そうなると学校には足を運ばなくなるだろうし、今日は早めに部室に向かって、本棚に積まれている本をできるだけ読んでおこうか。

 どうせ上級生よりも早い時間に授業は終わるのだ、時間はたっぷりある。倉橋先輩が来るのも早いとは思えないし、余裕はあるだろうな。

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