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碧眼の怪物  作者: 曼珠沙華
フィクションならよくありそうな話
60/91

第10話 その7

「例えば?」

「その、なんていうか……。綴木さんの好みをさりげなく聞いてもらうとか、私と間を取り持ってもらうとか」

 この人、もしかしなくても綴木先輩本人とは話したことがないな。奥手というよりもウブそうな印象が残る言い回しだ。


「とにかくなんでもいいんだよ。私はまだ告白とか、そういうのできる立場じゃないから。友達から徐々に初めていくべきじゃない?」

「そりゃあそうでしょうね。初対面の人にいきなり告白されたら、誰だってびっくりするもんです。優しい人なら『まずはお友達から』なんて言われてしまうのが関の山でしょう」

「だから少しずつ仲を深めていきたいんだけど、どこから始めればいいのかわからなくって……」

 もし二人が同じクラスだったとしても、好きな相手に話しかけるハードルは高いんだろうな。少女漫画で幾度となく勉強したことだ。幼い頃は僕も何遍と読み返してロマンスを感じたものだ。

 話しかけるにしても、まずはとっかかりになりそうなものを見つけなければ。僕も綴木先輩と知り合って日が浅いので、好みとかそういうのは知らないけど――


「あぁ、いい話を思いつきました」

「えっ、もう!?」

「倉橋先輩が文芸部に入ればいいんじゃないですか?」

 倉橋先輩は綴木先輩との繋がりが作れる。文芸部われわれは部員が増えるおかげで、部としての存続に王手をかけられる。まさしくWin-Winの関係性だ。

「ちょっとまって、私はもう部活動に入ってて……」

「毎週水曜日に顔を出すだけでも十分だと思いますよ。その部活とやらは、水曜日が定休日なんでしょう?」

「え?」

 さて、ここからは沖田さんではない、僕の推測の時間だ。


「あなたが入部してるのは運動部なのは簡単にわかりました。昨日ぶつかった時にかなり汗をかいていたので。体操服の上にビブスをつけてましたし、大方バスケ部ってところじゃないですか?」

「えっと、そうだけど……」

「昨日今日で怪我をした様子もありませんでしたし、二年生って大事な時期にサボれないでしょう?この学校、何でもかんでもに力入れてますし」

「……すごい」

 そんなものじゃない。僕はもっとすごいものを見ている。比較するのもおこがましいほど、もっとすごいものをね。


「でも……文芸部かぁ……」

「倉橋先輩は、本はあまり読まないんですか?」

「それなりには読むよ。でも私が読むのって、ライトノベルとかそういうのばかりだから……」

「別にいいじゃないですか」

 そんなものに貴賎する本読みは、真の読書家じゃない。中身が面白ければそれでいいのに、わざわざジャンルで優劣をつけたがるなんて。好き嫌いならともかく、だ。

「それに文芸部誌に寄稿しなきゃいけないんでしょ?私はそういうの向いてないし」

「やる前からうだうだ言い訳見繕ったって仕方ないですよ。明日一緒に部室に行きましょう」

 すこし強引かも知れないが、二人の関係をとり持つならこれが最善だろう。知り合う仲にさえなってしまえば、無理に僕が背中を押す必要は無くなってしまうんだから。これほど楽な手伝いはない。


 あぁ、そういえば僕も二の足を踏んでいた。

 とりあえずゴールデンウィーク中に執筆。苦しい、苦しいと嫌なことばかり考えていても仕方がない。とにかく書いてみなければ何もわからない。

 まぁ、それなりに頑張ってみようかな。うん。

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