第10話 その7
「例えば?」
「その、なんていうか……。綴木さんの好みをさりげなく聞いてもらうとか、私と間を取り持ってもらうとか」
この人、もしかしなくても綴木先輩本人とは話したことがないな。奥手というよりもウブそうな印象が残る言い回しだ。
「とにかくなんでもいいんだよ。私はまだ告白とか、そういうのできる立場じゃないから。友達から徐々に初めていくべきじゃない?」
「そりゃあそうでしょうね。初対面の人にいきなり告白されたら、誰だってびっくりするもんです。優しい人なら『まずはお友達から』なんて言われてしまうのが関の山でしょう」
「だから少しずつ仲を深めていきたいんだけど、どこから始めればいいのかわからなくって……」
もし二人が同じクラスだったとしても、好きな相手に話しかけるハードルは高いんだろうな。少女漫画で幾度となく勉強したことだ。幼い頃は僕も何遍と読み返してロマンスを感じたものだ。
話しかけるにしても、まずはとっかかりになりそうなものを見つけなければ。僕も綴木先輩と知り合って日が浅いので、好みとかそういうのは知らないけど――
「あぁ、いい話を思いつきました」
「えっ、もう!?」
「倉橋先輩が文芸部に入ればいいんじゃないですか?」
倉橋先輩は綴木先輩との繋がりが作れる。文芸部は部員が増えるおかげで、部としての存続に王手をかけられる。まさしくWin-Winの関係性だ。
「ちょっとまって、私はもう部活動に入ってて……」
「毎週水曜日に顔を出すだけでも十分だと思いますよ。その部活とやらは、水曜日が定休日なんでしょう?」
「え?」
さて、ここからは沖田さんではない、僕の推測の時間だ。
「あなたが入部してるのは運動部なのは簡単にわかりました。昨日ぶつかった時にかなり汗をかいていたので。体操服の上にビブスをつけてましたし、大方バスケ部ってところじゃないですか?」
「えっと、そうだけど……」
「昨日今日で怪我をした様子もありませんでしたし、二年生って大事な時期にサボれないでしょう?この学校、何でもかんでもに力入れてますし」
「……すごい」
そんなものじゃない。僕はもっとすごいものを見ている。比較するのもおこがましいほど、もっとすごいものをね。
「でも……文芸部かぁ……」
「倉橋先輩は、本はあまり読まないんですか?」
「それなりには読むよ。でも私が読むのって、ライトノベルとかそういうのばかりだから……」
「別にいいじゃないですか」
そんなものに貴賎する本読みは、真の読書家じゃない。中身が面白ければそれでいいのに、わざわざジャンルで優劣をつけたがるなんて。好き嫌いならともかく、だ。
「それに文芸部誌に寄稿しなきゃいけないんでしょ?私はそういうの向いてないし」
「やる前からうだうだ言い訳見繕ったって仕方ないですよ。明日一緒に部室に行きましょう」
すこし強引かも知れないが、二人の関係をとり持つならこれが最善だろう。知り合う仲にさえなってしまえば、無理に僕が背中を押す必要は無くなってしまうんだから。これほど楽な手伝いはない。
あぁ、そういえば僕も二の足を踏んでいた。
とりあえずゴールデンウィーク中に執筆。苦しい、苦しいと嫌なことばかり考えていても仕方がない。とにかく書いてみなければ何もわからない。
まぁ、それなりに頑張ってみようかな。うん。





