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碧眼の怪物  作者: 曼珠沙華
フィクションならよくありそうな話
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第10話 その2

 昼食を食べ終わって、手紙と精神安定薬を懐に忍ばせながら、校内を散策する。入学して一か月、まだ僕の知らない場所は多い。

 空き教室はいくつかあるけれど、そういう場所は既に仲良しグループが占拠しているばかりだ。誰かが何を言ったわけでもなく、自然とそういう流れができたのだろう。

 他に空いてそうな教室は鍵が閉められているか、特別教室しかない。


 ……仕方ないがトイレに行くしかないか。

 あそこは個室だから機密性に優れているし、トイレに長居するくらいは誰にでもあること。怪しまれる可能性は万に一つもないだろう。

 だが食事後にトイレに篭るというのは、なんというかこう、胃袋から戻ってこないか心配になる。こんなことなら弁当は後回しにするべきだった。今更どうしようもないし、後悔する時間が勿体無いのでもう放置するけど。



 トイレの中は意外と臭くなく、むしろ芳香剤がほのかに香る程度だった。居心地は思っていたよりも悪くない。念のため保健室近くのトイレを選んだのは正解だったかもしれない。

「中身の確認かぁ……」

 気が滅入る。何が書かれているかわかったものではないし、あんまり酷い書きなぐりようだったら、それこそ吐き出してしまう。僕のメンタルは未だ完治していない以上、自分の精神は自分で守る他ない。

 それに本来の目的以外でトイレに篭っていると強烈な違和感に襲われる。幸いにも便所飯のお世話になったことはないが、せざるを得なくなった方からすればたまったものではないだろう。あんな悪臭はさっさと廃れてしまうべきだ。


 話を戻そう。

 手紙というのはごく一般的なもので、便箋におかしなところは見つからない。膨らんでいるような感じもないし、中身は手紙で間違いないだろう。

 いじめなら針とか、いろいろと変なものを仕込まれると聞いたことがある。実害が出たなら訴えられるので有利といえば有利だが、被っている時点で勝利した木にはなれないだろう。

 今はまだ陰口で抑えられているけど、そろそろなんらかの問題が発生しそうで怖いんだよなぁ……。もうそろそろ他人の心象に気を配った行動をとらないと、ロクな未来が見えない。


 また話が脱線した。

 封蝋がわりのシールは黒丸の普通のやつで、ラブレターのようなハート型のものではない。

 正直言うと0.1%くらいは期待した。あり得ない話なのはわかってたし、期待度もそんなものなのでダメージは0に抑えられている。

 そういえば沖田さんに啖呵を切ったけど、女性らしくなるなら恋の一つや二つは経験しておくべきなのかな?沖田さんはそういうのと無縁そう――いや、これはさすがに失礼だった。


 ……閑話休題。

 とにかく中身を拝見しよう。話はそれからだ。 

 頭の中で色々と考え始めると、すぐにいろんな方向の話を組み立ててしまうからこうなる。時間は有限だから、有効に使わねば。

 中は手紙と思しき紙が一枚。これも普通のもの。意を決してそれを開いた。

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