第9話 その7
「では課題を発表します。ひまわり、あれ出して」
「はいよ〜」
そういうと自分で運んできた箱の中から、ビニールの紙束を取り出してくる。
「はい、どうぞ」
「えっと、ありがとうございます?」
僕から見えていたのは裏面だったようで、表を見てなんとなく察する。それは400字詰の作文原稿用紙だった。しかも100枚セット。
「佐々木さんにはゴールデンウィーク明けの部活の時に、小説を一本持ってきてもらいます」
「……えっ?」
いやいやいやいや。
作文とかじゃなくて、しょっぱなから小説?嘘ですよね?嘘だと言ってくださいよ。
「えっと、文字数とかは――」
「できれば10000字は超えて欲しいところね。無理そうなら数千字でも構わないわ。とにかく一本、なんでもいいから書いてくることよ」
どうやらこの文芸部はスパルタらしい。
ゴールデンウィークまであと2日。金曜日からの連休で本格的に執筆するとして、期限は一週間と言うところだろうか。とても短い。
そもそも書く内容や題材が決まっていないから、それを探すための時間も必要になる。連休から書き始めるなら明日明後日で見つけるのがベストだが、実際はそううまくいかないだろう。
これはなかなかの難問だぞ……。
「課題ができなかったから入部拒否、みたいな話ではないけれど、せっかくだし力を入れて取り組んでもらえると嬉しいわ。その原稿用紙は餞別のようなものよ。あと、執筆中は無理に部活に来なくてもいいから」
「そ、そうですか」
この文芸部でやっていけるか、とても不安になってきた。
大量の課題に、部員足りない問題。これから僕はどのように活動すればいいのだろう。先行きが見えないことは今までいくらでもあったけど、それらとはまた違うベクトルの不安感が僕を襲ってくる。
「っていうか全然大したことない、なんてことないじゃないですか。かなり難しい課題だと思うんですけれど」
「そう?私やひまわりはそうでもなかったけど。ねぇ?」
「そだねー。内容はともかく、3日くらいでぱぱっと書けちゃうし」
う、厳しい。
先輩方も例に漏れず、自らが優秀なことに気がついてない人たちだ。まだ筆をとったことのない僕には眩しくて仕方がない。
「とにかく気楽にやってみてよ。私でよければ手伝うから。ね、ね?」
「日向先輩の申し出はありがたいんですけど、とりあえずは一人で頑張ってみます」
「その方が自分の身にもなると思うしね。手伝いなんてダメよ」
「えー……」
日向先輩が残念そうに言葉を吐く。
やるしかない。僕がどこまで書けるかはわからないけど、書くしかない。
まずはどんなことについて書こうか、それを決めよう。時間は残り9日。やるしかない。





