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碧眼の怪物  作者: 曼珠沙華
フィクションならよくありそうな話
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第9話 その5

 話を戻そう。

「しばらくは何もすることがないみたいですね」

「いやいや〜、佐々木ちゃんには大事なお仕事があるでしょ?」

 さっきまで話に参加していなかったはずの日向先輩が、唐突に口を割って入ってくる。

 会話の最中はどことなくぽかーんとしたような表情だったし、内容が難しすぎたのかもしれない。……もちろんこの人をバカになんてしていない。本当だ。

「そうね。佐々木さんには課題があるって言ったじゃない」

「あぁ、すみません。そうでしたね」

 つい頭から抜けていたが、これは日向先輩の言う通りだ。僕は新規部員勧誘以前にまず、その課題とやらに専念しなければならないんだった。

「でも課題の内容を隠し続けなくてもいいじゃないですか。そろそろ教えてくださいよ」

 そこまで隠さなくてもいいと思う。重要性の低さは先輩方のそぶりから読み取れるし、実際のところそこまで大したことないんだろうから。

「じゃあもう倉庫の鍵借りてこようか?」

「……佐々木さんの言う通りね。ひまわり、お願いするわ」

「はいよー」

 よし、ようやく話してくれる気になったか。

 ここにいない宮原部長には失礼にあたるが、そのあたりは明日改めて謝罪するとしよう。


 飛ぶように日向先輩は部室を出て行く。

「私たちも追いかけましょうか。倉庫まで案内するわ」

「鞄は置いていってもいいですか?」

「倉庫から荷物をこちらに運ぶくらいだから、そのままでいいわよ。きちんと鍵は閉めるから、盗まれる心配もないでしょう」

「あ、そうだ」

 ポケットに入れっぱなしの鍵のことを思い出した。すぐさま取り出し、綴木先輩に手渡す。

「これ、お願いします」

「はい、お願いされました。入り口のところにフックみたいなのがあるから、今度からはそこにかけておいてね」

 そう言って綴木先輩が指差す先には、確かにフックのような何かが壁に取り付けられていた。見た目はかなり鋭いので、頭にぶつけたりしないよう気をつけよう。

「じゃあ行きましょうか」

「はい」

 そのまま僕たちは部室を出ていった。



 さっきまでそれなりの会話をしていたけど、まだ眠気が取りきれていないな。あの環境は人間にとって、かなりリラックスできる場所のようだ。

 一年生の間は5時限で終わる曜日が多い。上級生になると次第に6時限の曜日が増えるのだが、僕だけ5時限の時は先に部室に行って、軽い仮眠をとってもいいかもしれない。エアコンも完備されているし、環境はかなり整えられていると言ってもいいだろう。

 そんなことを少しおぼろげな頭で考えていると、すれ違う人にぶつかってしまった。

「あ、ごめんなさい」

「こっちこそごめん。不注意だったよ」

 ぶつかられた相手はそれだけ言い残して、すぐに部室棟に入っていってしまった。

 このままではいけないな。目を覚まさせるために。自らの両頬を二回手のひらで叩く。

「大丈夫?」

「向こうはああ言ってましたけど、僕の不注意が原因ですから。あまり気にしないでください」

 映画ならよく見るこの目の覚まし方だけど、効果は全くないわけではないらしい。おかげさまでわずかに残っていた眠気も、きちんと吹き飛んでくれたようだ。

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