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碧眼の怪物  作者: 曼珠沙華
フィクションならよくありそうな話
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第9話 その4

「でも、先輩方はどうしてそんなに落ち着かれているんですか?まだ二ヶ月あるとはいえ、早いうちに残り二人の部員を探さないといけないんじゃ……」

「今は急がなくてもいいわ。部活動には入部ラッシュってものがあるの」

 なんだかラッシュと聞くと物々しい感覚を覚えてしまうな。ライトノベルの読みすぎかもしれない。

「入部希望者が増加する時期ということでしょうか」

「その通りよ。一番多いのは新入生が殺到する4月。次に総合体育大会そうたいが終わって、なおかつ文化祭で文化部の特色が広まる10月。この二つが最も賑わうところなのだけれど――」

 立ちっぱなしなことにようやく気がついたのか、綴木先輩が鞄を下ろして腰を落ち着けた。それに続くように僕も座り、日向先輩も自分の椅子を用意した。


「話を戻すわ。先の二つほどではないけど、ゴールデンウィークにもラッシュが存在するの。私たちが狙っているのはそこよ。すでに部長と一緒にチラシをこちらで作り始めているわ」

 僕の考えはどうやら杞憂に終わりそうだ。先輩方の落ち着きようにはきちんとした理由があった。お二人はすでに周到な準備を進めている。僕があくせくと走り回る必要はないだろう。走り回ったところで、風聞を伝える友人がいないのは言うまでもないが。

 日向先輩は……まぁ仕方ない。生徒会の忙しさとやらは計りかねるが、部の運営よりはよほど重要に聞こえるからな。

「そこが外れたら少し問題だけれど、とにかく佐々木さんはまだ焦らなくても大丈夫よ。もしお知り合いで興味のありそうな方がいたら、そういう話をしてみるくらいで構わないわ」

「わかりました。僕なりにやってみます」

 できることが少ないことは、悔やまれる。


 同好会落ちか。

 文芸同好会として名もグループも残るとはいえ、これもまた一種の廃部に近い案件だ。入部早々こんな危機が訪れるとは思わなかった。話題だけ見れば、漫画やドラマのようなフィクションものの導入にありそうな展開だ。

 もっともこれは現実だ。珍しいイベントに出会ったからといって、僕の学生生活が劇的に変わるかと言われればそうでもない。良くて部員をかき集めるために、校内を東奔西走するくらいだ。

 だが実際の僕にできることは、先輩方の勧誘活動が良い結果に終わることを祈るくらいしかない。無力なことこの上ないし、もっと活動的になる必要もあるだろう。今後の課題、というか反省点だ。

 それにこれは「友達を作れ」という天啓なのかもしれないな。ゴールデンウィークが明けたら誰かしらに声をかけるくらいの努力はしないと。三年間ぼっち飯は嫌だ。

 このままずるずると悪い方向に引き摺り回されないよう、何かしら手を打たねばならない。有効的で、決定的で、最善の一手を。

 その一手が簡単に見えたなら、僕はもっと快活な女の子として生活できていたはずだけどね。残念ながらこれは現実で、そうはいかない。

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