第9話 その2
「やっほー!!椛ちゃんいるー?」
――ノックもなく勢いよく開けられるドアの音と、突然の来訪者に無理矢理目を覚まさせられる。
「……誰?」
赤色のネクタイ、二年生の人だったか。
急いで立ち上がって自己紹介をする。
「昨日入部した佐々木栞です。よろしくお願いします」
「えっ、新しい部員なの!?よろしくね〜!」
こちらの手を掴んで、縦に大きく振り回すような挨拶をされる。
「すみません、お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
部長や綴木先輩と違って、この人はなかなかに元気の有り余っている人らしい。どちらかというと運動部とかで張り切ってるタイプの女子だ。……いやまぁライトノベル的な知識なのだけれども。
「あ、ごめんね。いや〜嬉しくって忘れてたよ!」
陽の気が強すぎる。日陰者になった僕にはいささか眩しい……。
「二年生の日向ひまわりっていうの。よろしくね」
「改めて、よろしくお願いします」
また同じように、腕を縦に大きく振り回される。腕が少し痛いけど、ここまで明るい笑顔を見せられるとはっきりとは言いにくい。まるで暴力のようだ。
陰の人間にはあまりにも厳しい。
「それで佐々木ちゃんはいつ入ったの?」
「昨日入ったばかりです。昨日は日向先輩はおられませんでしたけれど」
「あぁ、昨日は生徒会の方の仕事やっててさ。そっかぁ、じゃあ入部ほやほやなわけだね!」
「えぇ、まぁそうなりますかね」
「そっかそっか。これで私も文芸部で先輩になれるわけだね。いやっほぅ!!!」
なんだか楽しそうにしているところ悪いが、ノリについていける気がしない。この人の脳には糖分の塊でも詰まっているのだろうか。今時のJK|《女子高生》って感じだ。
入院時の休学の影響で学年が違うとはいえ、僕は一応この人と同い年なんだよな。まぁ嬉しそうにしている本人の前では口を滑らせるまい。
「じゃあゴールデンウィークの課題もあるわけで。何書くか決まった?」
課題というと、先輩方がまた今度と言っていたやつのことだろうか。
「まだ詳しい説明は受けていないんです。宮原先輩は明日教えてくださるそうで」
「あ、そうなの。じゃあ私から言っちゃうのは良くないね」
「そうですね。とりあえず何も聞かなかったことにします」
「うん、ありがとね〜」
とはいえ『書く』という言葉のせいで想像は膨らんでしまう。
多分作文か物語を一本というところか。予想通りなのは嬉しいが、今度はそれがどのくらいの分量として設定されるのかが気がかりだ。初めてなので優しめにしてほしい。
「どう、緊張してる?」
「少しは。宮原先輩はそんなに大したものじゃないって言ってましたけど、まだ何も知らされてませんからね」
「まーそんなに心配しなくてもいいよ。杞憂に終わるから安心して、ね?」
「は、はい……」
顔を近づけらながら甘い声で囁かれる。男子ならイチコロになっていたところだろう。僕にその気はないのでダメージは薄いけれど。どちらかというと迫られているようで気が引けるくらいだ。





