表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧眼の怪物  作者: 曼珠沙華
フィクションならよくありそうな話
46/91

第8話 その8

「どうしたの、佐々木さん?」

「……あぁ、ちょっと考え事を。すみません」

 いけないいけない。人と話している時に自分のことに没頭しすぎるのはよくないな。注意しないと。

「今日は特にやることもないし、明後日にまた来てくれるかな?」

「僕の方も明日は予定とかありませんから、行くつもりです」

「そっか。じゃあ明日は綴木さんに任せるね」

「わかりました」

 打ち解けたとまでいかなくとも、今日の会話はかなり一般人らしく振る舞えたのではなかろうか。変なことを口走ったりしないよう心がけていた甲斐があった。


「今日のところは解散しよっか。俺はちょっと先生に用事があるし」

 そう言われて腕時計を見る。すでに18時が近くなっていた。授業が終わったのが16時なのに、2時間も経ったか……?

 あぁいや、僕が体感していたよりも長く、扉の前で立ち止まっていたのかもしれない。ああいう緊張しているときは時間が経つのが早い。体感では10分程度だったのだけれど、どのくらい時間をかけていたんだろう?今更確かめる術はないが、気になるものは気になる。

 今日は買い物もある。夕飯は少し遅くなってしまうが、このあたりでお開きにしてもらった方が都合はいいか。

「わかりました、じゃあ出ますね」

 用意されたパイプ椅子を片付けようとすると、綴木先輩に呼び止められる。

「どうせ明日も来るんだし、出しっ放しでも大丈夫よ」

「あぁ、そうですか。ではお言葉に甘えて」

 疑念が深まる。先輩方がそのように椅子を放置しているなら、僕が部室に入った時に二脚しかなかったのはおかしい。部員がもっといるのなら、という話だが……。

「今日はありがとうございました。明日からよろしくお願いします」

 けれどそれは顔に出さない。間違っていたら部に対して失礼だからだ。

「こちらこそ。新入部員はいつでも歓迎だったから、俺たちも嬉しいよ」

「これからよろしくね、佐々木さん」


 春先ということで、外はもう日が沈みかけている。風も冷たいままだ。

「じゃあ鍵の返却手続きはは俺がやっておくから。二人は先に帰ってて」

「わかりました。では後はお願いします」

 そう言いながら宮原先輩が管理室へと入っていく。僕たちは先輩の言う通り、待つことなく先に部室棟を出た。

「佐々木さんの家はどっちかしら?」

「えっと、学校からまっすぐですね。しばらくしてから左に曲がります」

「そう。私は校門からすぐ右に曲がるから、ここでお別れね。それじゃまた」

「えぇ、また」

 手を振りながら綴木先輩の姿は夕闇に紛れていく。

 僕もまた、今日の買い物を考えながら家路へと向かっていく。

 さぁ、今日からが本番だ。先輩方の背中を見ながら、前に進んでいこう。まだまだひよっこなんだから、少しずつ確実に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ