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碧眼の怪物  作者: 曼珠沙華
フィクションならよくありそうな話
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第8話 その6

 閑話休題。先輩方との会話に戻ろう。

「先輩方はどのようなお話を書かれているんでしょうか?できれば過去の文芸誌を見せていただきたいのですが」

「あ〜、ごめんね。実は今年から部室の位置が変わって、バックナンバーは一回倉庫の方に移しちゃってるんだ。読みたいようならまた生徒会に聞いて、早めに鍵を借りてくるよ」

「ありがとうございます。僕も運びますから、そのときは呼んでください」

 プロの方々の小説は、上手すぎて初心者の僕には参考にしにくいだろう。言い方は悪いが、慣れていない文章の方が勉強にしやすいと思う。間違いや変なところを見つければ、反面教師として僕の糧になってくれるから。

 どうせ先輩方よりも僕は下手くそなのだ。少し貶めてもバチは当たらないはずだ。自分がまだまだ欠けないことが、自分自身が一番理解している。


「そういうことなら、文芸部のグループに招待するよ。SNSはやってる?」

 あ。

「ごめんなさい。僕まだスマホじゃなくて、ガラケーなんです」

 理解した。そりゃあそうだ、今頃の高校生なら普通はスマホで連絡を取り合ってるだろうな。メールと電話でやりとりするよりも手軽だもの。

 やっぱりそのうちスマホに乗り換えた方がいいのかな。けどこの電話との付き合いも長いし、なんだか手放しにくい。

「メールアドレスを教えるので、そちらでお願いできますか?」

「あぁ、大丈夫だよ。じゃあ紙か何かに書いてもらおうかな――」

「ちょっと待ってください」

 急いで鞄からメモ帳を取り出し、ボールペンで電話番号とメールアドレス、それに名前と学年を書き入れて、破る。

「こちらをどうぞ」

「ごめんね、わざわざ一枚使わせちゃって」

「気にしないでください。これくらいは常に持ち歩いていますから」

 今は先輩方に名前を覚えてもらうことが重要だ。そのためなら紙の一枚や二枚、本当に安いものだ。


「そうだ、佐々木さんには課題を出しておこうかな」

「宿題ですか?」

「うん、文芸部新入部員の伝統みたいなものがあるんだ。そんなに難しいものじゃないから、気構えなくていいよ」

 文芸部の課題というとなんとなくの想像はつく。指定された図書を読んできて感想文を書くとか、自分の好きな本について紹介するとか、そんなものだろうか。

「でも部長、あれも倉庫に置きっぱなしじゃないんですか?」

「あ、そっか。ごめん、やっぱり明後日にでも話すよ」

「明後日ですか?」

「俺の方で明日は用事があってね。さっきも言ったけど、そんなに難しくないから」

 こんな風に秘匿というか、話を先延ばしにされてしまうとなんだかむず痒い。僕の知らないところで何かの計画が始まっているみたいだから。


 そういえば、重要なことを聞き忘れていた。

「文芸部の活動曜日ってどうなってますか?部活がない日に部屋に行っても仕方がないですし、聞いておきたいんですが」

「特に決まってないんだよね。明日は俺はいないけど……綴木さんはどう?」

「特に用事がなければいると思います」

「そんな感じかな。管理室に行けば鍵は貸してくれるから、勝手に開けてくれても構わないよ」

 この辺りはかなり緩いんだな。毎日執筆活動をしているものかと思ったけど、今日も二人とも本を読んでいただけみたいだし。

 それもそうか。常に書くもののアイデアが浮かんでいるとは限らない。それに読書だって立派な勉強だ。そういうものの積み重ねで物語は生まれていく。一朝一夕の作品なんて誰も見向きやしないだろう。よほどの天才でもなければ。

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