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碧眼の怪物  作者: 曼珠沙華
Prologue
4/91

第0話 その3

 失敗した。


「はぁっ、はぁっ、うぅぅっ……!」

 指先は未だ、ピルケースを探し当てるには至らない。

 焦れば焦るほど、精神は消耗していく。つまりは痛みが長引くだけだ。しかし急がなければ痛みは緩和されない。一体どうすれば……。とにかく探すしか方法は――

「大丈夫ですか?」


 それは女の子の声だった。

「すみません、薬を探していて。緑色のピルケースなんですけど、探してもらえませんか?」

 息を切らさず、明瞭に。最後まではっきりと伝えることを意識してなんとか言葉を綴る。

 これほどまでに苦労したのも久しぶりのことだ。入院中はしょっちゅう看護師さんに手伝ってもらった、苦い記憶が脳裏に浮かび上がる。

「薬ですか、お任せ下さい」


 女の子もカバンの中に腕を入れたようで、ちょうど僕の腕とぶつかった。それを機に、邪魔しないよう自分の腕は引っ込める。

「ありました。一回ぶんですよね」

 1分と経たないうちに女の子は探し出す。

「ありがとう、ございます……」

 左手を前に出すと、確かに薬を乗せられた感覚が伝わってきた。ここまでくればもう安心だ。

 勢いよく錠剤を飲み込んで、痛みに耐えるためにその場にうずくまった。




 薬といっても1、2分程度ですぐに痛みが治まるわけではない。それに今回はいつもとは違う、鈍い痛みだった。

 その分の時間が遅れたのか、痛みで時間感覚が狂っていたのか。それは明確ではないが痛みが治まるまでには、薬を飲んでから体感で10分以上経過するのを待たなければならなかった。

 痛みは徐々に収まってくるので、5分くらいが経過した頃にはかなり気も落ち着いていた。それもこれも、快く薬を探してくれた女の子のおかげだ。


 痛みであふれた涙をぬぐい、顔を上げる。

 待っていてくれていたのか、少女はすぐ目の前で僕の目線に合わせるように、膝をつけていた。

「すみません、ありがとうございます。本当に助かりました」

「いえいえ、お気になさらないでください。私はたまたま通りがかっただけですから」


 涙がきちんと晴れ、ようやく少女の姿がはっきりと左目に映る。

 なんとも可愛らしい顔立ちで、もし僕が男なら惚れていたかもしれない。そのくらいの美少女だ。アイドルグループに混ざっても目立ちそうなくらい。

 それとはまた別に、大正時代の女学校を思わせる、まるでタイムスリップしてきたかのような服装も印象的だ。

 総括すると、一昔前の時代にいそうな美人といったところか。


 唐突に我に帰る。完璧に見とれてしまっていたようだ。

「お名前をお聞きしてよろしいですか?」

「私ですか?私はですね――」

 直後、僕はその名前に驚愕させられることになる。その名は現代にまで語り継がれ続け、伝説の一つとして君臨するものだったからだ。

 そしてなによりもまず、荒唐無稽だった。


「沖田総司です」

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