第4話 その5
入り口に到着すると、沖田さんが既に待ち構えていた。
「すみません、少し遅くなってしまいましたかね」
「そんなことないですよ。時間通りどころか数分早いくらいですから、安心してくださいな」
さすがに店内を走るわけにもいかないので、遅れてしまったかと思った。沖田さんのいう通り、やっぱりかなり広いのかもしれない。
「それで、首尾はどうです?」
「それはもう、バッチリですよ」
力強く答え、カゴの中から選りすぐりの9冊たちを順番に紹介していく。
沖田さんはそれを、目を輝かせるように聞いてくれた。
さすがに9冊ともなると、全部の紹介には時間がかかってしまう。気づいた時には、店の時計の長針が数字を6つも超過していた。
「――ってところです。少し長くなってしまいました」
「いえいえ。栞の熱意がしっかりと伝わってきましたよ」
そう言ってにこりと笑いかけてくれる。
「せっかく勧めてくれましたし、全部買ってしまいましょうかね」
「……一気に9冊も、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですって。あ、お財布の中身は安心してくださいね。臨時収入のおかげで潤ってますから」
「そうです、か……」
それ以上は何も言えなかった。
9冊。それだけあればきっと合う本がある。
そう考えていたのだが、こちらに気を遣って全部購入してしまうとは思ってもみなかった。
反対するべきかは迷った。しかしできなかった。
無理やり家に泊めさせることと、一緒に書店を巡ること。僕は既に二度無理を押し通している。それ以上に固辞し続ける資格はない。





