第4話 その2
いけない、いけない。外出の準備に取り掛かろう。夜寝る前にあらかたの準備は済ませておいたから、漏れがないか最終確認だ。
携帯電話、精神安定の薬、換えの眼帯、化粧品一式、お財布、気になるタイトルについてまとめたメモ、手帳、ペン――ざっとこんなものか?
「沖田さん、準備できました?」
「私は大丈夫ですよ。そちらは?」
「僕もいつでも出発できます」
「わかりました」
そう言いながら着替えていた沖田さんが部屋から出てくる。
あの裏路地で出会った時と同じ、和洋折衷の装い。結局これはハイカラと僕の中で仮称しているが、正式な名称はわからないままだ。
昨日は僕の部屋着やパジャマを貸していたが、そのときとはまるで違う。纏う雰囲気や、気迫?そういった、言葉には形容しがたい何かが溢れている。
人の服装や髪型には、「似合っている」という言葉を超えて「ふさわしい」と呼んで差し支えないであろうものがあるように僕は考えている。
この格好、この姿こそが沖田さんにとって「ふさわしい」格好なのだと、改めて今そう感じた。
「やっぱり、そういう服装の方がしっくりきますね」
「慣れっていうのもあるでしょうから。栞に借りた服も新鮮で、悪くありませんでしたよ?」
「そう言っていただけるなら、嬉しいです」
……美しい。
思わずそんな感嘆が溢れ出しそうになる。
見ていて、これはふさわしいという言葉すら間違っているのではないかと、そう思わせられてしまう。いうなれば、一つの完成された形、だろうか――
「どうしました?」
「――あぁ、いえ。なんでもないです」
同性ながら、その姿に強く目を惹かれる。
しかし見とれてばかりもいられない、そろそろ意識を切り替えよう。
「それじゃあ、行きますか」
「えぇ」
扉の側の傘立てから、小さな傘を一本取り出す。持ち手は軽く錆びていて、穴が空いてないのが不思議な安傘だが、今日はこれに頼るかもしれない。
もしもの時は、沖田さんと僕を雨から助けてくれよ、なんて。
そんな冗談を頭に浮かべながら、鍵を閉めた。





