第3話 その2
「ん〜!やっぱり栞の作る料理はいいですね!」
「そこまで手放しに喜んでもらえるなんて、光栄です」
「あぁ、もちろん裏表なんてないですよ〜♪」
そこはあまり疑ってないのだけれど。
むしろこれが演技だったら、その時は沖田さんの名優ぶりに舌を巻くだけだ。というかまず見破れない、無理。
「でも、沖田さんならもっといい料理を味わったことがあるんじゃないですか?僕のは家庭料理なわけですし、もうちょっと豪華な料理の話とか、参考に聞いてみたいんですけど」
半分くらいは嘘だ。
半分の本音は、沖田さんの好みを聞くことで、少しでも本人の素性に近づけるのではないか――そんな淡い期待を抱いている。
「私、最近あんまりまともなご飯を食べてなかったので、あまり身になるようなお話はできないですね……」
「え?」
まともなご飯を食べない状況って、一体どういうことなの?
なんだか質問するたびに、はぐらかされたり、おかしな情報が吐き出されたり。
謎が深まっていくばかりで、まるで沖田さんのことを深く理解できそうにない。
「ん〜〜!!!ほんといいですねこれ!」
沖田さんは笑顔でたくあんをほおばり続けている。それ、僕が漬けたわけじゃないんだけどなぁ……。
「ご飯のお代わりお願いします!」
「……わかりました」
まぁ、沖田さんが楽しそうならそれでいいか。
苦笑の返答がそのまま伝わってしまわないように、少し気をつけよう。
「ごちそうさまでした!」
「ふぅ、ごちそうさまでした」
沖田さんの行動は、一つ一つがとても感情豊かで可愛らしい。
恵まれたルックスも相まって、きっと街に出れば男子の目を釘付けにしてやまないだろう――そんな想像を掻き立てられる。
僕もこれくらい人間らしくいれば、もっと良好な人間関係を築くことができるだろうか。少し真似して生活してみても――いや、自分が暗い時にさらに陰鬱になる未来が見える。多分そういうところ見せたら避けられるな。やめておこう。





