第3話 その1
「おはようございます、栞」
「ん、あぁ……おはようございます」
沖田さんの元気の良い挨拶から1日が始まる。
さっきまで運動でもしていたのか、沖田さんの額のあたりにうっすらと汗がにじんでいた。
「栞の朝ごはんが待ちきれなくて、起こしてしまいました」
そう言われてしまうと、やっぱり悪い気にはならない。
2年か3年程度の鍛錬だけれど、その成果が感想という形になってようやく返ってきた、といったところか。
時計の針は6時前を指している。昨日はたしか10時ごろに寝たから……だいたい8時間睡眠か。順調、順調。
軽い計算で頭が冴えたところで、顔を洗って、朝食の準備に取り掛かるとしよう。
とはいえ、朝は時間が足りないことの方が多い。お弁当にも詰める分の卵焼きとウインナーを軽く焼いたら、あとは作り置きの惣菜などでまかなう。
「沖田さん、今日もたくあん食べますか?」
「お願いしますー!」
部屋越しに返事が返ってきた。
沖田さんは三食全てにたくあんを添えてご飯を食べる。好物の一つなのだろう。
昨日はコーヒーをそのまま飲んでいたし、味覚についてはミーハーなところがあるのかも。かなり舌が現代に合わせられている印象を受ける。
結局、本物の沖田総司かどうか――昨日の質問ははぐらかされたままだ。十中八九偽物なのはわかっている。わかっているけど……気になるものは気になる。
特に《《女の子》》という部分が。
考えてみてほしい。
沖田総司は男性、ということで現代までその名が伝わっている。侍集団である新撰組に属している以上、まず本人が女性だったなんてことはありえないだろう。その中でなぜ女の子が沖田総司を名乗るのか。その理由に見当がつかない。
少なからず女性説が存在する上杉謙信や、正真正銘女性として名前が残っている巴御前――適当に武人というくくりで名前を挙げてみても、性別を合わせられそうな候補はそれなりにいるだろうに。
もっとも「沖田総司に憧れている」などのように、本人からすればそれらを押しのけるに値する理由も思い浮かんでしまう。
参考の一つにしかならないな。





