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第0話 その0
そこは偶然見つけた、暗くて静かな裏路地だった。僕以外にここを通る人を、未だに一人として見かけたことがない。
「――痛っ」
軋むように、痺れるような痛みが右目に響く。反射的にその場にしゃがみこんで、眼帯越しに右目を手で覆った。
「大丈夫、大丈夫だから……。今日もきっと大丈夫だから……」
呪いのように、自分に言い聞かせる。
僕は恐れていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
完全に痛みが引く頃には、息が上がってしまっていた。
この瞳を完璧に治療する方法はない。痛みを薬で緩和することもできるが、何度も使うと耐性がついて使えなくなってしまう。もはや本末転倒な存在になってしまっていた。