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プロローグ

 彼はイラついていた。

 目の前の小さな魂に。ただ、ただ平凡な魂に。


「おい、そこの小僧。何故ここに迷い込んだ」


 どこにでもいるような平凡さに苦笑しながら、分かっていても見てしまう。

 何だこの平凡すぎる魂は、これしかいなかったのか。

 循環する世界の中では仕方ない事だとしても、これは無い。

 そこら辺にいる普通の人間と変わらないではないか。


「っててて! 何か頭打ったんだが。迷い込んだ? 真っ暗で何も見えないし、いい加減明かりでも付けてくれよ」


 この神である我の声に萎縮しないだと!?

 平凡な魂が生意気ではないか。


「問いに答えよ。何故、迷い込んだ」


「……言っている意味がよく分からない。気づいたらここにいたんだよ」


 また召喚をしたという訳か……。

 厳選された魂が抽出されるはずが、コレとはどういう事だろうか。


「死した魂が未練を残し、迷いの末に来ることもあろう。だが小僧、貴様はここへ真っ直ぐに来た。つまり、召喚されたという事だ」


「へ? 召喚って、ゲームのやり過ぎじゃねえの? いいから電気付け……」


 ―――ゴロゴロゴロッ……


「な、何だその音……ちょっ、嘘だろ!? 嫌な予感しかしないぞ!」


 ほう、直感というモノなのか。

 その判断は正しいが……ふっ、滑稽なものよ。

 逃げ回っているが、落ちてこないのが不思議に思ったのか、動かなくなった。

 

「よし、落とすぞ」


「え? マジで? やめてくれええ!!」


 何を言うのか聞いてみたら、何とも下らないことだった。

 聞いてから落としてやることにしたが、発した言葉がやめろとは……。

 いきなり落とすべきだったか……。

 さて……と、落とすか。


 ―――ドゴオォォォ!!!!!!!!!!!


「ぎゃあああああああ!」


 やめろと言われて、落とされないとでも思ったのだろうか。

 特に面白くもなかったから落雷を直撃させた。

 まず、口がなっていない。態度が生意気。質問に答えない。

 ロクでもない小僧だが、しばらくは痺れて話もできないだろうから、説明してやることにする。


「次は無いぞ。小僧、貴様は召喚されたが、おそらく器違いで召喚された」


「……っ、……」


「聞け。お前をこのまま戻すこともできる。この神である我であればな! 言っておくが、戻ればお前はそのまま死ぬことになる。身に覚えがあろう?」


「……う……」


「召喚も楽なモノでない。それだけで膨大な魔力を消費することになる。これが失敗となれば、不都合が起こるのは容易に想像がつく。小僧、貴様は平凡だが魂とは一概に決定されているものではない。その生き様によって様々に変わるものだ。」


「……かっ……」


「召喚される魂は先天的なものと言えば小僧にも分かるか?」


「勝手……に……き……」


「ほう……、もう口がきけるか。面白い。」


「……め……」


「ならば小僧、貴様に問う! これより先に進み新たな生を望むか」


「……る……なっ……!」


「これより戻り、その身に滅びを迎え、いつか分からぬ転生を望むか、選べ!」


「………ぐっ、……どこ……まで勝手……な」


 まったく面倒な奴だ、どちらか選べばいい話だろう。

 もう一度くらい受ければ、素直になるのか?

 戻るも進むも、我は構わないがな。

 瞬きの出来事よ、こういう戯れも悪くはない。

 が、こいつは生意気が過ぎる。


 ―――ゴロゴロゴロッ……


「……ま、て……考え……」


「決めろ。でなければ落とす」


「くっ、……進むっ!」


「その決断、確かに聞き届けた!」


「選択になってないだろ! 戻ったら死ぬだろっ!」


「……はぁっ。何なのだ小僧。お前は選んだ。選択しただろう」


 ここまで滑稽な魂は見たことがなかった。

 召喚される魂は見てきたが、大抵は問いに対しても器の大きさを感じたものだ。

 それがこの小僧は何だ。文句ばかりブツブツと。


「ワケが分からないんだよ。何なんだよ、急に決めろとかさ」


「ここは小僧が問う場所ではない。ただの審査だ、この先にいる奴にでも問うのだ

な」


「は? この先って、ここ何も見えないし、どこへ……」


 指を鳴らし、小さな炎を作り出す。

 原初の炎……、久しぶりに創り出した白い橙色の炎をゆっくりと小僧に投げた。


「ちょっ、まて、燃えてる!! 悪かった!」


「焼かれながら聞け」


「おい! いや、まって、本当に熱い! 助けて! 助けてください!」


「……はぁっ。もう小僧の事は分かった。お前は本当に平凡だ。だが、平凡すぎて逆に面白い! お前の進む先がそのままの平凡ならば、お前は後悔することになるだろう」


「うあああ! 熱い! 俺は、また死ぬのか! 熱い熱い!!」


「その炎はお前を焼き尽くすまで消えぬ」


「あああぁぁ! だったらお前も一緒に!」


 小僧が急にひっついてきた。

 この炎を我に移して道連れにするつもりか。


「……ふっふっ、あっはっは! 小僧、貴様は愚かだが面白い!」


 生意気ではあるが、この足掻き様よ。

 この我を道連れだと? くっくっく……。

 阿呆もここまでくれば大したもの。愉快なり。


「くっそおお! お前は燃えないのかよぉ!」


 これは我が創り出した炎。我を焼き尽くす事はできぬ。

 しかし、面白い! どこに自らの炎に焼かれる間抜けがいるのだろうか。

 我は神ぞ、このような浅はかな考えでどうかなると思っているのか。

 この平凡な魂、楽しませてくれそうだ。


「小僧、貴様はここで焼き尽くされて、記憶すら残らぬだろう。だが、覚えておくがいい。この先の召喚者を助けるがいい! そして、惨めに運命という名のレールに抗ってみせよ!」


「くっそぉぉぉ!!」


「小僧、お前は無力だ! どうしようもなくな! ならば、せめて我を楽しませてみせよ! さすれば我が加護も目覚めよう!」


「うわああああぁぁぁ!!!」


「二度と会うことはないだろうが、せいぜい足掻いてみせよ! さらばだ!」


 小僧は悔しそうな表情のまま、欠片も残さずに原初の炎に焼き尽くされて消えた。

 良いぞ、良い……絶望すらせず、恨みもせず、ただ悔しさを滲ませた表情。

 何故こうなったのか、嘆くその様。

 くっくっく……これだから人は面白い。愚かでどうしようもない存在でありなが

ら、この我に食らいつくというのだからな。

 加護は与えた。加護を享受できるかは小僧次第。

 それでもなお、食らいついて生きて行けるならば、その先で見せてみるがいい。


 我の望む、強き魂を。



全てを愉しむのが神。

キーワード、これあったほうがいいってのがあれば教えてください。

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