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「念入りに死ぬ話。」  作者: 猫SR
2/6

2.





それ以来、

俺と良太と奥さんの縁は

ぷっつり切れた。




先輩の墓が

どこに有るかも知らない。



良太と奥さんは

奥さんの実家にでも

戻ったのか?



だってあの借家は

空き家になってたから。


不動産会社の

「入居者募集」の貼り紙が

寂しげだった。








久々に刺身が食いたくなって

仕事帰りにコンビニじゃなくて

スーパーに寄ったんだ。


残業してから

遅い時間に24時間営業の

スーパーに行った。

時間は遅いのに

長い連休の前日だからか

意外と客が居た。


(まー、

連休工事の予定が入ってる俺には

GW?何それー?

って感じなんだが、、、涙)




…随分と安くなってる、

刺身のパックを物色してたら


「あら?」


って声が聞こえて

振り返ると

先輩の奥さんだった。






「あ、御無沙汰しております、」


「あ、いえ、、

私、あのあと、

直ぐに実家に帰ってしまって… 

猫さんに挨拶も無しで

申し訳、、、」


「いえいえ、そんな、

お気になさらずに、、

そか、ご実家に?」


「ええ、

でも兄嫁と折り合いが悪くて

今は良太と二人で

アパート暮らしです、笑」


「へー、、笑」


「あの、猫さん、電話番号とか

いいかしら?

少し、話したい事が有って。」


「へ?

構いませんよ?

なら俺が番号、ゆーから

ワンギリして下さい、

ってか、俺、何番だっけ?笑」




番号交換とか

そんなやり取りの最中に

突然、背後から


「バーーン!!!」


!!びくぅー!!!!


振り返ると良太が

俺に狙いを定めて

右手をピストルの形にして

第二発目を放とうと

ニヤニヤして構えてる、、、



全く予想してなかったから

マジで慌てたが

それでも、なんとか反応して



「ぐぇーー!!!!!

やーらーれーたー!!!!」


俺は絶叫しながら

久々に良太を奥さんを

笑わかしてやろうと

念入りに念入りに

腹を右手で押さえて

左手で空をつかみ、、、


膝から崩れ落ちて

鮮魚コーナーの床に

寝転がって

白目を向いて

リアルに痙攣しながら、

ジタバタしながら、、


「いでー、いでー、

おのれーっー!!!!」










「だ、大丈夫ですか?」



薄目を開けて見ると

白い長靴が目に映る。


スーパーのエプロンをして

ヘンテコな帽子とマスクをした

おっさんが

心配そうに俺を見ていた。


(え???)


死体の振りをやめて

辺りを見回すと

店内の客がみんな俺を見てる///


…えー???///////



キョロキョロ捜すと

良太と奥さんは遥か彼方の

レジの前の陳列棚から

覗き込む様にこちらを見て

口元、押さえて笑ってるし。笑




ちょー!!///////////




「いえ、ご苦労様です。」



おっさんにテケトーに答えて

何事も無かった風に立ち上がる。


(ま、かなり

ウケたからいいや、笑)





客の視線を感じながら

耳まで真っ赤にした自分を、

強烈に意識しながら

俺は一心不乱に

刺身を選ぶ振りをし続けたし。


結局、いつも通り

色々入った「切り出し」を

買って部屋に戻った。






…帰り道はキレイな月夜で

まだ半月なのに

田んぼだらけの

街灯の無い田舎道が

随分と明るく感じた。


それと良太と奥さんの

笑顔見れたしさ。








でも、その晩は

電話もショートメールも来なくて

俺はケータイ弄りながら

刺身とおビールちゃんで

いつもの通り即死して爆睡した。








朝、珍しく

アラーム一発で起きて

いきなりトイレに籠もる。

朝のトイレに時間が掛かる男だ。





昨日の夜、

先輩の奥さんと良太に会った。


先輩のお墓がどこか、

聞けば良かった。


だが今にして思えば

先輩の話題が

ちっとも出なかったのが

不思議だ。



ふと、そんな違和感を感じたが

トイレに時間を掛け過ぎて

結局、いつもみたいに慌てて

仕事に行って

そんな違和感は忘れてしまった。










その日、

仕事が早く終わって

いつもの通り事務処理をしてると


あ、因みに俺は平日は

外では飲まない男だ。

自営業者だから

現場で働いて帰宅すると

事務処理とゆー、

もうひとつの仕事が

待っているからだ。

…これが中々に煩雑でウザい。


例えば現場でくたくたになって

おビールちゃんで即死したり

或いは女の子とラインを

やり取りしたりして

何日か事務処理をサボると

大変な事になるんだ、

まるでガキの頃の

夏休みの宿題の様に

月末に泣きながら

溜め込んだ請求書やら

報告書やら…、、、


「生まれ変わったら

自営業者は絶対にやらない。」

男は固く心に誓うのである。

ってか、どーでもいいね?笑






さて腹が減ったので

一度、事務処理を中断して、

おビールちゃんとつまみを

仕入れにコンビニに行く。


トラックから

下りようとした瞬間に

ガラケーが、けたたましく鳴る。


見た事無い番号だ。



「…もしもし?」


「あ、猫さん、美智子です、

今、お時間、いいですか?」


(美智子??誰??

あ、先輩の奥さんかっ、)


「あ、はい、

コンビニですがー。」


「少し、込み入った話なんで。

もし、あれでしたら

掛け直しますけど?」


「てか、奥さんも良太も

ひどいぢゃんー!

死体をほったらかして

レジ行っちゃうしー!笑」


「…死体?」


(あ、なんか不味かったかな?)


「あー、、、笑

あれねー、だって猫さんたら

あそこで

寝転んでピクピクし出すから、」


そー言って、奥さんは

思い出したのだろうか

ケタケタと笑い出した。



「あ、ごめんなさい、

良太が帰って来ました、

こちらから掛けといて

すみません、

又、後から掛け直しますね。」




…なんだろ?

良太が居たら出来ない様な

込み入った話って?


ぁっ///まさか告白?

自意識過剰男。←笑





さて、帰宅してから

ビールを飲みながら

事務処理を再開したんだが

なんか、やる気が出ん。



それに奥さんからの電話が

気になって。

こっちから掛けてみようか、

でも

女の人にこっちからって?


とかとか

ガラケー握って逡巡してると

いきなりガラケーが鳴って、、

ビビリまくりながら、、、)))))


「あ、ども、」


「先程はすみません、

今、お話出来ますか?」





一頻り、挨拶とか

近況報告的な話の後から、


…先輩の奥さんは

先輩が生きていた頃、

どんな仕打ちを受けて来たか

時には涙しながら

語り出した。


俺は上手く返答出来ずに

聞き役に徹して

時々、沈黙する奥さんが

泣き止むのを待ち、

黙って話を聞いていたんだ。




…何か話したい事が有って

でもそれを話すのを

躊躇っている感じがしたが

俺はそれには触れずに

聞き役に徹していた。















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