おまけ : 二神のその後
むかしむかし、異世界に男神と女神がいました。
二神は世界に異種族を創造し、豊かで平和な世の中を作ろうと頑張っていました。
ですが、二神の前に別の世界からやって来た神が現れます。
その神は傷付いていて、二神に助けを求めました。心優しい二神は異世界の神を助けました。
ですが、それは異世界の神による罠だったのです。男神が愛する女神は囚われ、世界の中心に作られた大樹のコアにされてしまいました。
男神は女神を取り戻すべく、異種族の王達と共に戦いました。
異世界の神は対抗すべく人間を召喚して対峙します。神としてまだ未熟だった男神は絶大な力を持っていた異世界の神の軍勢に敗れてしまいました。
異種族の王達は殺され、大陸のほとんどを占拠されてしまった男神は神域へと逃れます。
「必ず救い出す。どんな手を使ってでも……!」
眷属達と共に女神の救出と邪神への復讐を決意し、男神は異世界を覗いて反攻作戦を練るのでした。
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「あなた、起きて。あなた」
「ううん……?」
辛く、苦しい夢を見ていた男神の体がゆっくりと揺すられた。
目を開ければ暖かな日差しと共に映るのは1人の女神。比喩ではなく、本当の女神がそこにいた。
「おはよう」
ニッコリと笑う彼女は正しく輝いていた。この笑顔を求めて、何年も耐え抜いてきた男は涙が出そうになった。
「ああ、おはよう」
「ふふ。朝ご飯できているわよ。今日は赤竜の王にもらった新しい食材で作ってみたの」
神域が落ちてから二神は地上で暮らすようになった。
地上で暮らすのは神域が再構築される間の僅かな時間なはずだったが、1年も地上で暮していると女神奪還の為に戦ってくれた我が子等と顔を合わせるのも悪くないと感じてくる。
神の国リバウの二神殿にあるプライベートエリア。ベッドから降りて共にダイニングへ向かう。
吹き抜けのキッチンに立ちながら朝食を用意してくれる妻。女神である妻は美しい。姿を何度見ようがそう思う。彼女こそが究極の美であると男神は心から思う。
キッチンに対してやや背が足りず、小さな台の上に乗りながらせっせと料理を盛り付ける女神。
ニコリと笑いながら、小さな背と長い髪を揺らしながら皿を両手に持つ姿は神々しい。
そうです。お気付きでしょう。
女神はロリ女神だったのです。
でも、男神はロリコンじゃありません。たまたま女神がロリ女神だっただけです。たまたま好きになった奥さんがロリ女神だっただけなのです。
「美味い!」
「ふふ」
「愛している! 美味い!」
「ふふ、もう」
復讐を遂げ、幸せを取り戻した男神は微妙に語彙力を失いつつあった。
幸せがいっぱい。愛する者と再びできる喜び。そうなるのも当然か。
「今日のお仕事は?」
「今日は赤竜王の報酬を完成させねばな」
実のところ、男神の仕事はそう多くない。
平和になった世界は創造した子供達――異種族に任せるべきであると考えている。
世界が壊れるほどの問題が起きたり、起こされたりすれば手を出すが、それ以外は基本的に見守るスタンスだ。
邪神がこの世界を征服しようとした前例がある為、男神は世界を守る為に尽力するのが主な仕事と言えよう。
今は女神と力を合わせて世界を他の異世界から守る結界を構築している最中だが、そちらの準備は眷属達に任せている段階。
もっと忙しくなる前に、赤竜王にせっつかれる前に別件を終わらせようと考えていた。
朝食を終えて執務室として使っている部屋へ行くと、既にアシスタントをしている鴉魔人が待機していた。
「今日はダンジョンを作るんでしたね?」
「ああ、その事なんだが」
ホワイトボードを引っ張り出してアレコレ言い合う。この作業がひどく懐かしく思えた。
邪神を倒す為の作戦を練っている時、オンラインゲームと称して訓練シュミレーターを作っている時。
眷属達と唸りながら知恵を絞りだしていた頃を思い出す。
「神力を使ってダンジョンを自動生成する仕組みを作ろうと思う」
「どういう事です?」
「世界は平和になった。徐々に人口は増えていくだろう。その時に土地が無くならないよう、ダンジョンの入り口は1つ。その入り口に入った瞬間にダンジョンが自動で生成されるのだ」
最終層までクリアすればまた別のダンジョンが生成される。
この仕組みならば大きな土地は必要無いし、中は神力で作った異空間を使用するので死亡せずに入り口に戻されるというセーフティが実装できる。
本物の自然発生ダンジョンとは違い、アトラクション形式になるが中身はリアルに。難易度も製作者である男神が調整できる仕組みだ。
「これでユーザーの意見を取り入れながら改良しようと思う」
プロデューサーのような事を言う男神であるが、魂状態だった王種族相手にそんなような事をしていたのだから当たり前か。
「では、そのように進めましょう。設計に必要な神力と土地の選定は進めておきます」
「うむ。頼む」
話がひと段落したところで、ドアがノックされた。
ぴょこっとドアから顔を出したのはロリ女神。
「もうお昼だよ」
「そうか、随分集中して話し込んでしまったな」
「ええ」
そう言って、2人は席を立つ。
「お前も食べて行ったらどうだ?」
「いえ、2人の邪魔はできませんよ」
会えなかった分、存分に過ごして下さいと言って鴉魔人は神殿を後にした。
「気を遣わせてしまったな」
「そうね~」
神殿から出て行った鴉魔人に苦笑いを浮かべる二神。
一方で鴉魔人は――
「今日は冒険者食堂で新作料理がリリースされる日でしたね」
戦争に参加して人間を倒した英雄、凄腕の料理人ワンダフルが料理を振るう冒険者食堂へスキップしながら向かうのであった。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
物語のメインキャラなのにその後を忘れてました。
短いですが、よければ読んでやって下さい。
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