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250 大戦犯謝罪会見


 眷属から事実を聞き、蘇生不可という条件を聞かされてから6時間後。


 それらの事実はプレイヤー達へ迅速に通達された。


 そして巻き起こる責任追及の旋風。


 魔王国魔王城の一室ではパシャパシャパシャとスクリーンショットを取る音が鳴り響く。


「この度は、大変申し訳ありませんでした」


 大量のフラッシュに晒されるのは貴馬隊のレギオンマスターであるユニハルト。


 彼はセレネに用意された謝罪文を机に置きながら、訳も分からず頭を下げた。


「どうしてくれるんだ!」


「どう責任を取るんだ!」


 記者になりきったプレイヤーがユニハルトに追求の言葉を浴びせるが、ユニハルトは頭を下げ終えると静かに椅子へ腰を降ろす。


「えー、今回の件につきましては、我々も大変遺憾に思っており、また重大な事件であってミスではないと……」


 彼が用意された文を読み上げると再び大量のフラッシュが起きた。


「責任逃れするつもりか!」


「大手レギオンのよくない体質だぞ! よくない組織体質だ!」


 読み上げるユニハルトへフラッシュの光と罵声が浴びせられる。


「今回の件はですね、我々が確かに指揮を執っていましたが参加していた人達にも責任があると――」


「ふざけんな!」


「参加者に責任を擦り付けるな!」


 ユニハルトによる現状説明が続き、最後の締めとして貴馬隊だけの責任ではないと告げる。


 あの場を指揮していたのは確かに貴馬隊だった。


 だが、参加は自由。それに鳥籠などというアイテムを敵が持っているなど予想もしなかった。


 この2点を軸に責任追及を躱すつもりであったが、記者もどき達は納得していない様子。


 訳も分からずこの場に連れて来られ、レギマスの仕事だとセレネに言われて謝罪文を持たされたユニハルト。


 事前に「この紙の通りに進めろ。これはお芝居だ」と説明されていた為、その通りに進めている彼であった。


 もはやセレネの操り人形である。


 一通り喋り終えると場は質疑応答に移る。


「蘇生魔法が使えなくなりましたが、大手レギオンとしてはどうするつもりですか!」


「えー、蘇生魔法は確かに使えなくなりましたが我々は今まで通り、大手レギオンとして野良プレイヤー達から羨望の眼差しを受けるような行動を」


「蘇生魔法が使えないのに自爆戦法を使うつもりか! そもそも羨望の眼差しなんてありませんよ!」


「お前ら頭おかしいんだよ!」


 パシャパシャパシャ、とフラッシュが瞬きながら罵声と笑い声が会場を包む。


「…………」


 操り人形状態であったユニハルトだが、ここで苛立ちを見せ始める。


 セレネに言われた通り、紙に書かれた事を読んでいたが机の上にあった紙を横にズラしてマイクを手に取った。


「貴様等。言わせておけば! どうせ蘇生魔法なんぞあっても、エンジョイ勢やクソ雑魚共は勝手に死ぬだろうが! 弱いヤツはどうせ死ぬ! 今までと変わりない!」


 堪忍袋の緒が切れたのか、ユニハルトはいつのも口調に戻って吼える。


 当然、記者もどきも声を張り上げた。


「エンジョイ勢を馬鹿にするな! エンジョイ勢は戦闘よりも重視している事が他にあるんだ!」


「お前だっていつも死んでいるだろうが!」


「お前が言うな!」


「何を言うか! 私は一度たりとも死んだ事は無い!」


「赤ちゃん返りしすぎて記憶が無いだけだろ!」


「女性人気があるからって調子に乗るな! 最近は人気が離れているぞ! 知らないのか!」


 飛び交う罵声。大量に瞬くフラッシュ。


 ユニハルトと記者もどきによる罵声の飛ばしあいが始まり、場は混乱状態に陥った。


 罵声に次ぐ罵声の結果、会見場にいた記者もどきの1人がインベントリから刃物を取り出した。


「殺せえええ!」


 バトルアックスを取り出した記者もどきがユニハルトへ駆けようとするも、他の者に体にしがみ付かれて止められた。


「馬鹿! ダメだ! もう蘇生できないんだぞ!」


「運命の仔馬が完全死亡するにはまだ早い!」


 彼を止めた男達の首からは仔馬と太陽のマークが入った金属製の装飾を施したネックレスが。


 どこかの教団関係者だろうか。


「ふん。馬鹿め。見ていろ! 邪神なんぞ我々貴馬隊が軽く倒してみせようじゃないか!」


 パシャパシャパシャとフラッシュが再び瞬く中、ユニハルトは胸を張りながらマイクを机の上に置いた。


「逃げるのか! 責任を取れ!」


 記者もどきからの罵声を浴びながらもユニハルトは室内を出て行った。


 会見場の最後方で様子を見ていたセレネは腕を組みながら赤い目のウサギさん――ルルララへ顔を向ける。


「完璧なセッティングだった」


「そうかぴょん。流れも完璧だぴょん。これでユニハルトに追求の目が向いたぴょん」


 この会見を仕組んだのはルルララである。彼女は優秀な人材を帝国支部に回してもらう条件にセレネの願いを叶えた。


 罵声を浴びせていた記者もどきの中にルルララの部下を紛れ込ませ、今回の流れを作ったのだった。


「取引は覚えているぴょんね?」


「ああ、勿論だ。ジャハーム支部が暇になった。そちらから人員を回す。それと、お前を今度組合の副組合長に推薦しよう」


 満足気に頷くセレネはルルララを更に昇進させようと言うが、


「それはいらないぴょん」


 彼女は首を振って拒否した。


 しかし、この会見から2日後。ルルララは冒険者組合副組合長となっていた。


現場からは以上です。

次回のアンシエイル・タイムズ更新は月曜日となります。

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― 新着の感想 ―
[一言] どれだけ生贄を用意しても逃れられない責任…… 副組合長頑張って〜
[一言] そうだよ、駄馬ももう蘇生できないじゃん。 これからの主力はゴーレムですかね。
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