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242 輸送手段開発と武器の少女


 制圧が完了し、地下施設の見学もそこそこに。


 商工会を中心にして前線基地に残された物資や施設の把握を始めて行く。


 使える物は何でも使う。未知の技術は何でも解析する。商工会に任せれば問題無し、とセレネとレガドが任せた結果だった。


 基地内に多く残されていたのは聖銀製の武器や防具。これらは新素材であるネオ・オリハルコンには劣るものの、アダマンタイトと同等か少し上に当たる素材だ。


 聖銀を溶かし、異種族軍向け装備の素材として活用するのが大変よろしい。帝国にやらせている鉱山からの素材産出も進めているが、選択肢が多い事に越した事は無いだろう。


 前線基地には居住区画もあれば、人間達が装備を作る施設もあった。


 人間製の工房はドワーフ製工房と比べて違いがあるものの、炉などの基本的な部分は流用できる。


 使える物はそのままに、使いずらい部分はアレンジして生産の場を整えると簡易的ではあるが最前線工房の出来上がり。


 これで次に攻めるファドナ皇国や聖樹王国領土内への供給や修理といった部分も魔王国内から届けなくても良い。最前線へ戦う者達のサポートは大幅に改善できるだろう。


 レギオンマスターであるモグゾーが地下施設にあった魂関連の技術に魅入られている中で、他の者達が着目したのは人間達の使う輸送用の技術であった。


 人間達が物資や人材を運ぶ為に使う『車』という技術。これは異種族にとって未知なる技術。


 なんたって馬やラプトルといった動力で馬車を引く技術しか持っていなかったのだ。それらを必要とせず、運転手だけで運用できる()は現在の商工会メンバー達にとって魅力的。


「これを使えれば鉱山からの輸送も解決するな」


 と、感想を漏らした通り。ゴーレムよりも早く、小さく、それなりに物を載せられる。


 こんなにも魅力的な技術はそうそう無い。


 そんな車について大いに貢献したのが、人間であるユウキであった。


「これがエンジンじゃないでしょうか?」


「エンジンってなんだ?」


「ええっと……。この車を動かす心臓、動力と言えば良いでしょうか。ゴーレムのコアみたいな物です」


 ユウキはまだ未成年。元の世界では車を運転した事なんぞ無いが、親が運転する車に乗った事は当然ある。


 車についての基礎知識も男の子であれば軽くは知っているだろう。エンジンがあって、タイヤが動いて……まぁ、その程度であるが。


 しかし、ユウキの拙く薄い知識であっても優秀な商工会メンバー達は自分達の脳内で噛み砕きながら変換していく。


「なるほど。じゃあ、ここをゴーレムコアに置き換えれば行けるか?」


「専用のコントローラーが必要じゃないか? このハンドルとやらを動かすんだろう?」


「命令系統の書き換えが必要だな~。専用のコアを作る方が早そうだ」


 ユウキにとってテキパキと仕事を始める彼らは輝いて見えた。


 まさしく職人と言うべき姿だ。


「凄いですね。もう作れちゃうんですか……」


「はは、あったりめえよぉ」


 ユウキの称賛に照れる職人達。他にも輸送用の知識は無いか、と問われたユウキはウンウンと悩む。


 そこで思いついたのが、


「ファンタジー物と言えば空飛ぶ船じゃないですかね?」


 空飛ぶ輸送船。海に浮かぶ船が空を飛ぶ。ロマンの塊みたいな物を思い出して告げる。


 ファンタジーの物語にある空中輸送船の外見や運用方法を、元の世界で読んだ物語の内容のまま口にした。


「すげえ!」


「ロマン!」


「空飛ぶ船からゴーレムが発進とかヤバくね?」


 商工会メンバー達の間では、いつの間にかファンタジー色が混じるSF物語に発展していた。


「問題はどうやって浮かすかだ」


「風魔法を付与すればいけんじゃね?」


「羽付ければいけんじゃね?」


 安易なアイディアが飛び出す中で、元の世界では空を飛ぶ物があったのかと質問される。


 ユウキは飛行機やヘリコプターといった物を紹介するが、詳しい仕組みはわからない。


「なんで、そのプロペラ? とかいうのを回すと飛ぶんだ?」


「魔法よりよっぽどすげえ」


 こればっかりは商工会のメンバーすらも頭を捻る。科学的な知識が薄い世界では当然か。


「でも、魔法なんて便利で不思議な物があるんですから、そちらで再現する方が良いかもしれません」


 ユウキの言葉は逃避だろうか。しかし、現実的な意見でもあるだろう。


「検証試験を始めよう」


「やらねえと始まらねえ」


 商工会メンバー達の目がギラリと光った。


 以降、車と輸送船の班に分かれて開発が進められて行く。



-----



 一方で、前線基地の薄暗い地下研究所に篭る人物がいた。


 名はメイメイ。


 なぜ地下室かと問われれば、地上にあった家屋はほとんど壊れてしまい、研究に使えるスペースが地下施設にしか残されていなかったからだ。


 彼女は机の上にこれまで手に入れた聖なるシリーズを並べる。


 剣の形状がほとんどであるが、重要なのは外見じゃない。柄に嵌められた宝石が今回のメイン。


 赤黒く濁った宝石はイングリットの鎧強化に使った凝縮核と似ている。というよりも、同じ物にしか見えない。


 イングリットが種としての進化を果たした『理由』を聞いたメイメイはこの宝石に一層着目した。


 これを使えば、これの活用法は。未知なる技術への欲求と求めた結果に得られる強さを渇望するメイメイ。


 それ以上に、この武器にはどこか惹かれる想いが以前からあった。


 触って、解析すれば嫌な雰囲気が漂う。だが、どこか心惹かれる。


 この気持ちの正体は何なのか。ずっと前から疑問に思っていたが――


「圧縮~」


 剣のソケットから宝石を全て外し、1つの塊へと繋ぎ合わせる。


 バラバラの宝石から漂う雰囲気は薄い。では、1つに纏めたらどうか。そう考えた結果であった。


 小石程度だった宝石が全て合わさり、子供が作る拳程度の大きさになった宝石。


 赤黒く、淡い光を発していた宝石にメイメイの手が触れる。


「あっ」


 パチリと目の奥が弾ける感覚。


 映し出される光景は『一人の少女が空腹に耐えながら武器を作る姿』だった。


『お兄ちゃん、お兄ちゃん』


 少女は泣きながら兄を呼ぶ。人間達に命令され、食事を与えられないという拷問を受けながらも言われた通りに武器を作る。


 完成し、ようやく食事を貰えると思ったらガラスケースの中に押し込まれた。


 少女はガラスケースの中に押し込まれたというのに……飢えと孤独と罪悪に狂った目で笑う。


 ガラスの向こう側にいる人間の女性を見て、狂気と飢えの充満した呟きを漏らす。


『オイシソウ』


 そう呟いた少女は目を閉じて、もう一度目を開くと過去の映像を見ているはずの、その場にはいないメイメイへ顔を向けた。


『ソウデショ、オニイチャン』


「君、は……」


 淡く光っていた宝石は激しい光を発してメイメイを包み込む。


 触れていた宝石は溶けるようにメイメイの腕の中へと浸透していくと、彼女の体は床にバタリと倒れた。


 ここには誰もいない。倒れたメイメイに気付く者は誰もいない。


 しかし、数分経つと彼女はムクリと起き上がった。


 薄暗く、1本の松明だけが部屋の中を照らす中で壁に映った少女の影が口を三日月の形にしてニコリと笑う。


「ありがとう。お兄ちゃん」


読んで下さりありがとうございます。

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[一言] 空を飛ぶ…ゴーレムの発進…… まさかラ○ュタ!?
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