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229 前線基地攻略 1


 旧アルベルト伯爵領にある前線基地を攻略すべく、合流地点に続々と集まる異種族達。


 先行していたセレネ達は勿論の事、他のプレイヤー達も合流しつつあった。


 まずは百鬼夜行。魔王都に数名だけを残し、全員が参戦。


 サクヤを先頭にして戦闘準備は万端。攻守バランスの良い布陣を敷きつつ、前線基地を睨む。


 商工会も同様にほとんどのメンバーが合流。ただ、こちらは後方支援としての役割を持つ。


 ゴーレムを生成して前衛職のプレイヤー達と前面に圧力を掛けると同時に、弱小レギオンや野良プレイヤー達への装備提供が主な仕事となるだろう。


 プレイヤー達と共に並ぶのは魔王軍とジャハーム軍。


 こちらは各軍2万ずつの派兵。国防の都合上、全ての兵は出せず。


 だが、各軍2万という数は人間に押され、数を減らしていた2ヵ国としては破格の数字でもあった。


 今回の戦争に対する本気度を見せたといったところか。


 彼らのやや後方に並ぶのは新規参入したオーク軍。数は5千。指揮官であるオークキングも槍と盾を持ち、共に並ぶ。 


 オーク達が参戦したのはイングリット達への義理もあるが、何より人間という種を認めたからだ。


 エルフ族を好むオーク達であったが、人間も味と繁殖の面で「まぁまぁ良し」と評価した。


 耳が長くない、顔がちょっと……と不満を漏らすオークもいたが、エルフの代替えとしては悪くないと。


 渋々といった感じもあったが、勢力を伸ばすためにも数を確保できるのであれば、といった具合である。


 プレイヤー、各軍にしても彼らの参戦は心強い。


 何たってオークは魔獣。数が減っても心が痛まない。肉壁が増えて被弾率が減れば上々。


 オークキングを失えば統率が取れなくなり、この同盟も破綻するかもしれない。だが、そうなったらそこまで。


 プレイヤー達からしてみれば大した脅威ではない。困るのは餌として見られているエルフくらいだろうか。


 そんなエルフ達は最後尾に並ぶ。


 オークとの交渉に成功し、エルフ狩りを一旦停止させてホッと胸を撫で下ろすが油断はできない。


 今回の戦闘で人間が確保できなければ交渉の末に結ばれた条約は破棄されてしまう。


 故に女帝ファティマはエルフ軍1万を派兵。


 主な任務は精霊魔法による防御支援とゴーレムの放つ遠距離攻撃と同時に魔法による攻撃役だ。


 加えて戦闘が始まってプレイヤー達が有利になれば、人間達の捕獲を始める手筈である。


 捕獲した人間をオークに捧げ、エルフの立ち位置を固めようという魂胆。


 長年人間によって支配されていて、戦闘不能になっているエルフも多く存在する中での1万人の派兵は他2ヵ国同様にファティマの本気が窺える。


 以上の面々が陣を作り、前方にある前線基地へと矛を向けた。


「これより敵前線基地へ攻撃を始める!」


 特設ライブステージの上でセレネが吠えた。


 この戦争に宣戦布告などという上等なモノはない。


 相手が防御を固めているのであれば、攻撃して打ち破るのみだ。


 セレネの声が響いた後、ズシン、ズシンと足音を鳴らしながら砲撃戦仕様のゴーレムが数歩前進。


 肩に取り付けられた砲の準備が終わると、エルフ達や遠距離職に就くプレイヤー達も魔法を唱え始め――


「砲撃、開始ッ!」


 ゴーレムの砲からは轟音が鳴り、弧を描いて砲弾が飛んでいく。


 同時に放たれた魔法も前線基地の城壁に向かって発射された。

 

 相手は動かぬ的だ。着弾は確実。どこに当たっても有効打となり得る。


 着弾した証拠に轟音と大量の土煙が舞った。


 どれほどのダメージか。


 壁を破り、基地内部へ前衛職が雪崩れ込めるほどの大穴を開けられれば最高の結果だ。


 舞っていた土煙が晴れると――そこには無傷の城壁があった。


「なんだと!?」


 驚愕の声を露わにしたのはレガド。


 まさか、数々の成果を出してきた砲撃を受けても無傷に終わるとは予想できていなかった。


「ありゃあ、人間の砦用防御壁か」


 商工会のメンバーが無傷の壁よりもやや上を睨みつけながら呟く。


 ゲーム内の大陸戦争で魔族と亜人の攻撃を防いできた人間製の防御壁。


 あちらでは前線基地など出て来ず、敵の拠点は全て砦だった。その砦に備わっていたのが遠距離攻撃を防ぐ防御壁だ。


 セレネ達の脳裏には散々ゲーム内で苦渋を味あわされた記憶が蘇る。


「じゃあ、内部に侵入して発生装置を壊さないとダメか?」


「ええ、そうでしょうなぁ」  


 セレネが近くにいたモグゾーへ問うと、彼は人差し指でメガネを押し上げながら頷いた。


 防御壁は魔法攻撃を防ぐが、生身の体は防げない。故に内部へ侵入して発生装置を壊すのがベター。


 外からの攻撃で突き破る事も可能であるが、何発も魔法を撃たなけれならず攻撃側の消耗が激しい。


「おい、見ろ」


 ならばゲーム内の大陸戦争と同様に、と作戦を決めていると前線基地の門が開いた。


 中からゾロゾロと出て来るのは武装した人間達。


 いつもの装備を身に纏ったファドナ兵と、その横には胸に聖樹王国の紋章を刻印した白色の重装を纏った兵がいた。


「ハイディング取得組を内部に侵入させる! 前衛職は前に! 遠距離組は援護射撃しろ!」


 セレネが号令を発すると、砲撃仕様だったゴーレムの数体が肩の砲をパージしつつ、更に前進。


 前衛職のプレイヤーと魔王軍、ジャハーム軍の兵も前進したゴーレムと並ぶ。


「ファドナ兵よ! 意地を見せよ! 突撃ィィィィッ!!」


 異種族達が動きを見せるとファドナ軍から指揮官らしき者の怒号が轟き、一斉に突撃を開始。


「来たぞ!」


「人間狩りじゃあああッ!!」


「ヒャァァァッ!!」


 突撃を開始したファドナ兵を見て、プレイヤー達からは奇声が上がる。


 主に貴馬隊から。


 PvPへの興奮を抑えられず、目を血走らせた貴馬隊メンバーが我先にと駆けると他のプレイヤー達とゴーレムも後に続く。


 突撃を開始した双方の集団からは土煙が舞い、言葉にらない怒声が響く。


 ドドドド、と地面を鳴らして――双方の距離は遂にゼロへ。


 武器と武器がぶつかり合う金属音が複数鳴り響く。


「オラオラオラ! 覚悟しろやあああッ!!」


「我等はもう負けられぬ! 負けられんのだァァァッ!!」


 異種族対人間。


 ゲームの延長ではなく、明確に分けられた陣営による戦争が始まった。


 後にこの戦争は第二次神話戦争と呼ばれる事となる。


読んで下さりありがとうございます。


どう見ても味方が蛮族。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最終的にラスボスとかその辺りの女性もオークたちの慰み者になるのだろうか?興奮しちゃう「ヤバイやつ」
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