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226 攻略準備


 魔王国に戻ってきたイングリット達。


 まず最初に始めたのは装備類の整備だった。


 整備と言えば活躍するのはメイメイ。彼女は魔王国に戻るなり工房に篭りっきりの生活を1週間程度送る。


 最初にメイメイが着手したのはイングリットの鎧だった。


 暴走状態になった際、イングリットの胸に埋め込まれてしまった魔導心核と何とかリンクさせながらも騙し騙し使用していたという現状。


 その状態で人間達と戦い、帝国の解放を成功させたのは流石と言うべきか。


 最終的にはクリフの禁忌魔法で決着がついたと言えど、機転を利かせたイングリットや新装備を用いて宝石を奪い返したのも重要な出来事だろう。


 結果、イングリットは一度死亡してしまった。身代わり人形のおかげでデスペナ無し、瞬時に蘇生したとしても着用していた鎧は人間の剣によって貫かれた。


 鎧の状態はボロボロ。加えて、ブラックアダマンタイトでは人間の攻撃を防げなくなっている現実。


 そこにタイミングよく齎された新素材。ネオ・オリハルコンである。


 魔導心核の材料とした結晶の欠片とは違い、出所も確かな素材。メイメイは喜々としてネオ・オリハルコンを用いて一から鎧を製造し直す。


 外見はそのままに、使われている素材の質は1段も2段も上がっている。


 防御力の飛躍的な向上。技巧技術による変形ギミックはよりスムーズに。腕部分に仕込まれたアイテムの格納数も向上。


 全体的に性能が上がったのは確かであるが、1点だけ問題がある。


 それは鎧の出力源である魔導心核との同調だ。


 イングリットの胸に埋め込まれてしまった為に、魔導心核を取り出せない。仕方ないのでミスリル線を用いて、胸にある魔導心核と直接内部で繋いでいるのだが。


 やはり鎧本体に取り付けていないので出力を出す際にタイムラグが生じてしまう。


 簡単に言えば、イングリットが全力を出すのには少々時間が掛かってしまうといったところか。


 だが、胸から取り出すのは危険すぎると判断したのでしょうがないと割り切るしかなかった。


 完成した鎧を説明され、イングリットはミスリル線を胸の心核と繋いでから着用を開始。


「うん。しっくりくるな」


 それでも使い慣れた鎧のデザイン。着心地はあまり代わっていなかった。


 上半身を動かす時にミスリル線が動くので、それが少々気がかりになるくらいだろうか。


 といっても、それも慣れれば問題無い様子。


「一通り試してみて~」


 メイメイは工房の庭にある案山子に搭載されているギミックを使用してくれ、と頼む。


 彼女の言う通り、イングリットはアンカーや魔石爆弾の射出を試す。


 問題は無いと告げると、

 

「盾も変形させて~?」


「いや、それは憤怒が貯まらないとダメなんじゃないか?」


「大丈夫~」


 盾の変形は憤怒のエネルギーが無ければ不可能だ。だが、彼女はそれも問題無いと言う。


 メイメイが「よろしく~」と言うと……。


「強欲竜! 強欲竜!」


「金の亡者! 金の亡者!」


 商工会メンバーが2人。ケツを出しながら横歩きで現れた。


「火力は無いけど金のパワー!」


「のじゃのじゃ美少女とヤリたい三昧!」


 そして、イングリットの前でケツの肉をパンパンパン! と叩き始めた。


「ぶっ殺すぞテメェ!」


 イングリットがイラッとすると、盾にエネルギーが溜まった。


 ガチャンガチャンと変形してペンチ状態へ。


「問題無さそうだね~」


 ペチンペチンペチンという音をバックにメイメイが頷いた。


「そうですね」


「じゃ、僕達はこのへんで」


 怒らせる役として呼ばれた2人はそそくさと退場。何とも納得いかないイングリットだった。


「シャルにはこれね~」


 調整を加えたクロスボウと裁縫師と共に開発した戦闘用の洋服を渡す。


 クロスボウは材質をそのままに、魔法の矢を飛ばす為の心核を再調整。加えて、矢の生成に使う魔力を貯蔵しておくマガジンサイズを拡張。


 矢の生成総数と連射速度等を向上させた。


 戦闘用の洋服は彼女が好んで身に着けるゴシックなドレスが元となる。


 生地と生地の間にネオ・オリハルコンを溶かしてコーティングした中敷を仕込み、ゴテゴテとした防具を装着せずとも軽装と同じ防御力を再現。


 多少服全体の重量が重くなっているが、こちらも特に気にする程ではないとシャルロッテは感想を漏らす。


「クリフはこれで良いの?」


「うん。バッチリだよ」


 クリフは杖の強化だ。といっても、宝玉が1つ増えただけ。


 新たに装着されたのは宝玉の色は深緑。禁忌魔法を発動して粉々になってしまった宝石と同じ色をしていた。


「この色は安心するから」


 そう言って、クリフは耳につけていたイヤリングを触る。


 禁忌魔法の反動を肩代わりする宝石は砕け散ってしまった。だが、クリフは同じ色の宝玉を杖に追加して魔法の同時発動数を増やすという強化を注文したのだ。


 この色を見ていると、彼女が見守ってくれている気がする。と優しく追加された宝玉を撫でた。


「これで準備は終わりか?」


 装備の調整、ポーション類の補充。戦闘の準備は完了し、イングリットがメンバーに問う。


「そうだね。でも、前みたいな無茶はやめてよ? もう人形は無いんだからね?」


「そうなのじゃ。あんな事をしたら許さんのじゃ」


 クリフとシャルロッテは厳重注意とばかりにイングリットへ強く言った。


 魔王国に戻ってからイングリットがモグゾーに人形の追加を頼んだが素材不足であると言われてしまった。


 素材が手に入り次第、急ぎで作ると言われているので今回は間に合わなかったというところか。


「わかった、わかった。ラプトル準備して行こう」


「うん」


「そうだね~」


 イングリットがそう言うと、クリフとメイメイは工房を一足先に出て行く。


 最後に工房を出る事となったイングリットとシャルロッテだが。


 シャルロッテはイングリットの手を握った。


「大丈夫だ。今度こそ、お前の家を取り戻しに行ける」


「……うん」


 イングリットとシャルロッテ。出会ってから随分と時が経ったかのように思える。


 彼女にとって因縁の場所を取り戻せるのか。


 そこで待っているのは何者なのだろうか。


読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヘイトの溜め方がジワる メイメイはほんと癒し…火力はステやスキルで補うのでは無く金で引き上げるの好き。盾やってた時に武器の強化を頑張った記憶
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