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219 冒険者組合帝国支部


 精霊が去った帝国であったがすぐにその効果が現れる訳ではなかった。


 帝国領土内に蓄えられた大地の精霊による加護が切れるのは半年後。エルフの専門家はそう予想する。


 ファティマはすぐに半年後の加護効果喪失に向けて動き始め、国内にある村や街に向けて食糧生産量増加の命を出した。


 これによってエルフ達は大忙しとなる。加護喪失後の食糧生産に向けて畑も準備しなければならないし、魔獣が破壊する自然を維持する為に植林等も行う準備もしなければならない。


 加えて王種族達との約束にある鉱山資源の掘り出し要員の確保。こちらも忘れてはならない。


 食料生産の件は帝城で、鉱山資源については冒険者組合が進める事に。


 二件において現状で最も進んでいるのは鉱山の方だ。


 自然と融合した帝都の中心にあった既存の建物を利用して作られた冒険者組合には続々と鉱山で仕事をするエルフ達が集められていた。


「鉱山の仕事に募集した方はこちらに集まってくださーい!」


 魔王国より派遣されたベテラン組合員が現地採用した者を教育しつつ、案件を進める。


 集まった作業員は200名。彼らを整備が進められている帝国国内西にある山へ送り、プレイヤー達が必要となる鉱石を輸送せねばならない。


「やはりネックなのは移動と輸送方法だな」


 冒険者組合帝国支部の2階にある会議室で話し合うのは商工会とマグナ率いる百鬼夜行のメンバー達。


 難しい顔をしながら現状の問題点を告げる商工会のメンバー。対面に座るマグナの顔も険しかった。


「ゴーレムでの輸送はダメか?」


「大きいから荷は大量に積めるが、移動速度がそこまで早くない。移動速度増加の装備を開発するくらいなら代替え案を出した方が早いぞ」


「ふぅむ。ラプトル車を大量に用意せんといかんか」


 議題は掘り出した鉱石を魔王国まで輸送する手段。加えて、鉱山と街を行き来する為の移動手段だ。


 人を移動させるだけならラプトル車を定期的に行き来させれば済むのだが、掘り出した鉱石を輸送するにはラプトル車数台だけでは足りない。


 ラプトル車とゴーレム輸送を併用してはどうか、そう言いかけたマグナであったが、


「あと、ゴーレム輸送だと街を踏む可能性がある。道中の整備された街道にも足跡が付くぞ」


「……ダメか」


 商工会のメンバーによって答えを先出しされてしまった。


「輸送に適したモンを作るべきかねぇ。魔王国とジャハーム間は転送門があるが、こっちには無いからな」


「確かに。人間から奪ったジャハーム北の駐屯地の行き来も不便だ。開発して公開すれば各国から使用料を取れるのではないか?」


「それは良いアイディアだが、開発するには素材が足りん。そもそも設計もしてない」


 そして話しは振り出しに戻る。


 どう足掻いても鉱山資源を手に入れなければ先に進めない。ここは一旦、時間が掛かっても最優先で素材を確保するべきか。そう決断せざるを得ない。


「現地に工房を作るのは?」


 顔を上げた商工会のメンバーがそう言うが、


「ダメだ。技術が漏れる。まだエルフは完全に信用するな」


 マグナは首を振って否定する。


 帝国を掌握したが、まだ完全に信用すべきではない。


 これは魔王国で開催された魔王国及びジャハーム合同のトップ会議による決定だった。


 参加していたセレネとマグナも意見に賛成しており、まだ隙を見せるべきではないという考えを心に秘めている。


「んじゃあ、魔王国とジャハームにラプトルを都合してもらうしかねぇな」 


「それしかあるまいな」


 両者仕方ない、とため息を零す。


 人間の国を攻撃する為になるべく早く準備を整えたいが、無い物をねだっても仕方がない。


 コツコツと小さな一歩でも前進するのが重要。そうわかっていても気持ちが急いてしまうのは抑えられないのが正直な感想だろう。


「ところで、冒険者組合は上手くいっているのか?」


 話し合いも一旦休憩。会議室にいる者達はお茶とお菓子を摘まみながら世間話に興じる。


「順調だな。2ヵ国から仕入れている材料で食堂も運営できているし、帝国内にいる魔獣討伐依頼も城から受けている。討伐と称して国内事情を堂々と偵察できるのは嬉しい誤算だった」


 食文化によって住民の心を掴み、帝国内にプレイヤー達や他の異種族がいたとしても今のところは暴動などによる反発は起きていない。


 加えてエルフ軍部から受ける魔獣討伐の依頼。


 エルフ達は長きに渡って人間達によって酷使された。心身共にケアをせねばならない者も多く、半年後に国内の精霊の加護を失う事情もあって国内の魔獣討伐に割ける人員は少ない。


 依頼を受ければ金になるし、国内を堂々と歩きまわって情勢を見て観察できる。


 地形、経済、国民の心情。それらは『もしも』に備えて常に監視するべき情報だ。


「特に支部の予算は限られているからな。出資者殿も無駄は好かぬ」


「アイツの財源はどこから湧くんだ。3ヵ国の支部に予算を渡すって相当じゃないのか」


 出資者殿――それはイングリットの事である。


 彼は3ヵ国にある支部へ多額の資金を渡して運営させている。勿論、利益も受け取っているが彼の持つ財は国家予算に匹敵するのではないかともっぱらの噂だ。


「昨日もうちのレギマスからレジェンダリー素材を買い取ってアイテム作らせていたな」


「身代わり人形であろう? あれの有用性はイングリットも高く評価していた。我々もいくつか作っておきたいが……素材も無ければ金も足りん」


 またしても彼は10億相当の金をポンと使ったようだ。それに加えて運営資金も滞らずに渡すのだから、一般プレイヤーと比べて違いがありすぎる。


 彼の持つ資金力の正体。それの1つは話し合う2人もよく知っているアイテム。


「醤油か」


「醤油だ」


 最早、生活には欠かせぬアイテムとなった奇跡の調味料。この生産と販売権利を独占できているのは大きい。


 何たって魔王国とジャハームの国民で買わぬ者はいない。加えてエルフ達まで挙って買うのだから、本人は笑いが止まらぬだろう。


「やっぱり最初に乗り込んだヤツは有利だな」


「確かに。現在の商売は真っ先にやった者勝ちという傾向にあるからな」


 レギオンに所属せず、少人数で行動するイングリット達の強みは最も早くこの世界に来た事だろう。


 競合相手もいなければ競争相手もいない間に利益になる物を確保できる。これはこの世界で金を稼ぐという点において大きなアドバンテージとなった。


「その出資者様に追加の資金を頼むのか?」


 どう説得するんだ、と商工会のメンバーはマグナを不憫に思うが……目の前にいる本人は首を振った。


「私ではない。強力な助っ人が来ているからな。彼女に頼む」


「ああ……」


 言われて商工会のメンバーも『彼女』の顔を思い出す。


 彼女専用として与えられた、書類が置きやすそうな広くて大きな机の下に大量のポーション瓶を落とす彼女の事を……。


読んで下さりありがとうございます。


新作の投稿を始めました。

英雄として召喚されたが武器と魔法は尻から出る

ダーク要素はあまり無く、コメディ色多めのファンタジー小説となっています。


主人公はユウキ君です。詳しくは活動報告にて。

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