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207 帝国解放戦 立場逆転


 駐屯地にいた人間はファドナと聖樹王国の混合部隊である。


 人間対異種族。今まで人間は負け無し。


 侵略をすれば全てを奪えて、気に入らない者は好きに殺せる。


 聖樹王国の目的もあったが、ジワジワと相手の首を絞める快感は何事にも代えがたい。


 略奪、凌辱、殺し。常に主国の命令に従わなければならないファドナ国民にとっては良いストレス解消だっただろう。


 だが、今はどうだ?


「ヒャッハーッ!」


 目を血走らせた貴馬隊が大斧でファドナ兵の首を両断。


「ぐ、く、クソッ!」


『オオオオオッ!』


「あああ――!?」 


 昇華という絶対的な力があったにも拘らず、数の差によって追い詰められていた聖騎士がゴーレムの拳によって圧殺される。


「ヒャアーッ! 人間狩りじゃああ!!」


 イカれた貴馬隊が追い込み、百鬼夜行が人間1人に対して3人で仕留める。


 物資も、兵器も燃やされ、挟み込まれて逃げ場を失った人間達は本来の力を発揮できない。


 特に今まで指揮を執っていた上位者が不在というのも大きい。


「な、なによ、これ……。嘘よ、嘘よぉ……」


 砲撃された駐屯地の敷地内で、無事だった建物の中で迫り来る恐怖にガタガタと体を震わせるファドナの女性兵士。


 壁に空いた小さな穴からは絶対的勝者だった聖騎士が次々と貴馬隊や百鬼夜行のメンバーによって殺される姿があった。


 このままジッとしていれば、バレないかもしれない。


 そう思った矢先に――


「人間、みぃ~つけたぁ」


 小さな穴に映るは異種族の瞳。


 女性兵士がビクリと体を跳ねさせたと同時に建物の壁が壊された。


「おおい! こっちに人間の女がいたぞ~!」


「いや、いやあああ!! 離してえええ!!」


 恐怖に負けた女性兵士は戦う事すらもできない。ただ、手足をバタつかせて後退りするしかなかった。


 貴馬隊のメンバーは女性兵士の髪を掴むと、ズルズルと引き摺っていく。


 引き摺られた先には自分と同じように連れて来られたと思われる女性兵士達。それは聖樹王国もファドナも変わらない。


「拘束しとけ。オークとの約束があるしな」


「はい」


 捕まった女性兵士はエルフによって腕と足を縄で拘束され、地面に転がされる。


「裏切り者めッ!」


「…………」


 人間を縛り上げるエルフ達へ吐き捨てるも、彼らは反応を見せない。


 いや、反応できなかったと言うべきか。


 今まで人間に協力してきた。


 人間が魔族と亜人を殺す場面を何度も見て来た。自分達の同胞が殺される場面も見て来た。


 その世界は終わりを告げ、立場が逆転したのだ。


 圧倒的な力を持った王達が目覚め、再び片方へと傾き始めた。


 もしも、女帝が決断を下さなかったら……。人間よりも弱い自分達が『こう』なっていた。


 エルフ達は心底、恐怖していただけだ。人間達以上に。


「今だ……ッ!」


 捕まっていた聖騎士の女性兵が隙を見て走る。


 が、ヒュンと風を切る音が聞こえると、逃げ出した女性兵は数メートル進んだ場所で地面に崩れ落ちる。


「あああ!! 足が、足がああ!!」


 崩れ落ちた女性兵は死んでいない。だが、足からは血を流して泣き喚く。


「おい。逃がすな。オークへ渡さなければ、お前達の未来は無いぞ」


「は、はい! 申し訳ありません!」


 逃げ出した者を止めたのはレイピアに付着した血を払うユニハルト。


「フン……。繁殖用だろう。生きていれば良い。手足は不要だ」


 人間達が『繁殖用』という言葉に絶望を覚える中で、彼は淡々とエルフ達へと告げた。


「わかりました!」


 ユニハルトの言葉を聞いたエルフ達は一斉に剣やナタを抜く。


 これから何が起こるのか、人間達にとって想像するに容易い。


 人間達の悲鳴が轟く一方で、貴馬隊のメンバー達がユニハルトをジッと見つめる。


「……あいつ、死んでねえぞ」


「アイツが死ななきゃ勝てないって方程式はやはり無しか?」


「まだわからん。これから何かあるのかもしれねえ」


「守護者がいないだけかもしれんぞ。守護者がトリガーなのかもしれん」


 不穏な事をヒソヒソと話し合うが、ユニハルトの耳には届かなかった。


「さて、大体殲滅できたか」

 

 後方部隊の指揮を執っていたマグナがセレネとレガドへ歩み寄る。


「ええ。数名は取り逃しましたが、ほぼ終了と言っていいでしょう」


 神話戦争以降、人間へ初めての、それも一方的な『勝利』を掴んだ事でレガドの心は人生最大級の歓喜に満ちていた。


「まだ油断できねぇな」


 そう言うのはセレネ。彼は髪のリボンを直しながら、帝都のある方角へ顔を向けた。


「帝都に守護者がいると見ているか?」


「あり得ない話じゃないだろ」


 マグナの問いに、振り向かず頷いた。


「それに、これからだぜ」


 次はレガドの顔を見て、


「エルフは重要視されてねえ。帝都を掌握したら、次は人間達の領土だ。次はこんなにも簡単にはいかねえだろうよ」


 セレネの言う通り、これはまだ『本番』じゃない。


 確かに人間へ侵略して勝利した。だが、ここは飛び地だ。人間達が完全に支配している場所じゃない。


「次は挟撃もできねえ。本当に、真正面からの戦いだ。死人は覚悟しておけよ」


 人間達が支配する領域を攻めれば、当然防衛するだろう。防衛戦には守護者が出て来るだろう。


 まだ『守護者』という強敵と本格的に相対していないのだ。


 大規模、広範囲、高威力の3拍子が揃った攻撃手段を持つ守護者と戦えば……プレイヤー達も死亡する者が多く出るはず。


 それよりも弱い魔王軍はもっと死亡者が出るだろう。


「覚悟しております」


「なら、良いけどな」


読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 駄馬が死なないまま終わっただと・・・!? まだこの後何か起こるな、間違いない
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