17 神話戦争
むかし、むかし、世界を創造した2人の神がいました。
女神 アンシャロン と 男神 エイルドゥーク。
2人は夫婦であり、2人で1つ。2人で力を合わせて世界を創造しました。
2神は大地や海、森を創造した後、世界に暮らす住人を創造しました。
魔族、エルフ、亜人の3種族です。
2神によって生み出された3種族は助け合い、生んでくれた2神を称えながら仲良く暮らします。
しかし、ある日の事。2神の創った世界に別の世界から他の神がやって来ました。
別の世界の神は弱っていました。今にも消えそうで、涙を流しながら2神に助けを求めました。
優しい2神は別の世界からやって来た神に手を差し伸べました。
世界に満ちる神の源を分け与え、弱っていた別の世界の神は元気を取り戻します。
元気になった別の世界の神はお礼がしたい、と言って2神のお仕事をお手伝いすると言い出しました。
2神はお礼を言って、世界に恵みをもたらす神の仕事を手伝ってもらいました。
しかし、ある日……。
2神が創った世界にたくさんの災害が起きます。
大雨が降り続き、洪水や地震、世界に暮らす者達は災害でたくさん亡くなってしまいます。
これはいかん、と男神は世界に起きている災害を食い止めに地上へ行きました。
しかし、別の世界の神は男神が留守にしている間、女神に襲い掛かり女神を封印してしまったのです。
そう、世界に災害を起こしたのは別の世界の神でした。
別の世界の神は2神の仕事を手伝うフリをして、2神に隠れて世界の一部をジワジワと自分のモノへ少しずつ作り変えていたのでした。
災害を止めて帰って来た男神は女神が封印されてしまった事に怒り、別の世界の神から取り戻そうとしますが女神と2人で1人である男神は本来の力が出せません。
本来の力が出せない男神は地上にいる王達へ助けを求め、王達と共に別の世界の神を倒そうとしました。
これが世界――アンシエイル最大の戦争である『神話戦争』の始まりでした。
しかし、世界を作り変えた別の世界の神は作り変えた世界から2神の力の源を奪い取り、この世界に来た時よりも強くなっていました。
別の世界の神はこの世界に来る前にいた世界から『人間』という種族を呼び寄せます。
別の世界の神は人間を自分の眷属として、男神と王達を迎え撃ちました。
最初のうち戦況は拮抗していましたが、別の世界の神は一部の人間に神の力を与えて進化させました。
進化によって強力な力を得て、神の力で作りし武器を得た人間達の勢いは増します。
それでも何とか男神と王達は女神を取り戻そうと頑張っていました。
ですが、戦いの最中にエルフが別の世界の神に寝返ってしまったのです。
結果、男神は負けてしまいました。男神と共に戦った王達とその家族や仲間達は全て人間とエルフに殺されてしまいました。
男神は何とか逃げ延びますが怪我を負っていて満足に動けません。
そんな時です。世界の中心に巨大な大樹が姿を現しました。
別の世界の神は封印した女神を苗床にし、世界を蝕む大樹を植えたのです。
この大樹は大地に根を張り、世界から男神の力の源をますます奪っていきます。
力の源を奪った大樹は人間とエルフ達へ恩恵を与え、今も尚、2神の創った世界を侵略し続けるのです。
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「ふーむ」
パタン、と子供向けの歴史書を閉じる。
読んだ感想は子供向けなのに中々シビアな内容を書いているな、というモノだった。
それに――
「この世界は魔族と亜人が負けたのか……」
ゲームの中で描かれるストーリーはまだ両陣営との勝負はついておらずに神話戦争の真っ只中、という内容で未完のままであり続きはアップデート待ちとなっていた。
「真のストーリークエスト……魔族と亜人が負けた後のストーリー?」
『真実の鍵』と『真のストーリークエスト』
神話戦争とされているゲーム内での大陸戦争が終わった後の世界にいる自分。
クリフにはどう考えても真のストーリークエストとやらはゲーム内で描かれていたストーリーの完結以降のストーリーを指し、完結されたストーリーの続きがこの世界そのものだと思える。
所謂、今自分がいる世界は2神が負けた後を描くアフターストーリー。
「女神が封印されたって話もあったしなぁ。聖樹とやらは無かったけど……」
そう呟いた後にクリフは窓の外へ目を向ける。
目線の先、ずっと遠くの空には雲の上まで背を伸ばした大樹が映っていた。
「勘弁してほしいね……」
今の自分は姿が魔族だ。
負けが確定した世界に飛ばされ、その後の世界を体験しろなんて話は地獄で生活しろと言うにも等しい。
本を読んだ内容から世界情勢を見れば人間とエルフに侵略されまくっているようであるし、数の差もだいぶ開いているようだ。
しかもゲーム通りの種族性能であれば魔族と亜人は『クソ雑魚』と称される性能である。
さらには大人向け、老婆の言っていた古い歴史書の方に書かれていた男神と戦った王達――王種族と呼ばれる種族はどう考えても自分や仲間達である。
竜人族、悪魔族、ドワーフ族、幻獣族、妖精族の5種族。
この5種族がこの世界では王種族と呼ばれており、男神を裏切ったエルフは妖精族に当たる。
「どう考えても自分達だし、ゲーム内にもいっぱいいたよねぇ」
ゲームの中には自分達と同じ種族も複数人いたし、幻獣族に該当する種族もいた。
更には歴史書内に書かれている、王種族の仲間や配下とされる種族達もゲーム内でよく見かける種族だ。
クリフはインベントリから真実の鍵を取り出す。
鍵に付いている宝石は光出し、メッセージが空中に浮かび上がった。
「北西にある神殿を攻略……ねぇ」
攻略するとどうなるのかは不明であるが、こうなってしまってはこのクエストも少々怪しく見えてくる。
噂の真偽を確かめるべくイベントに参加した自分達であるが、酷い結果になったものだとクリフは溜息を零した。
「とにかく、2人と合流して今後の相談をしないとだなぁ」
魔族と亜人の負けた世界で厄介事に巻き込まれるのはイヤだな、と思いながら夕食を摂りに食堂へ向かって行った。
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「想定内の動きですね」
「そうだな」
真っ白な空間でモニターを通してクリフの様子を伺っていた男神と鴉青年。
パーティの誰かが現世の世界情勢を知り、自分達の種族が王種族だと知られても尚、彼らの表情は余裕が浮かんでいた。
「自分達の種族が王種族だと知ったところで、過去の自分達がどう殺されたのかなど調べようが無いし知りようが無い。王種族も王種族に従っていた種族達も全て死んでいるのだからな」
故に、彼らが嘗て男神と戦った者達であり本人達だという真実には辿り着けない。
仮に手記か何かが残っていて、情報が書かれていたとしても前世の記憶はごく僅かしか残っていないのだから自分の事だと思いもしないだろう。
「クエストも怪しんでいるようですが、大丈夫ですよね?」
「大丈夫さ。彼らは好奇心に負ける」
現世に降りて何もわからない彼ら。
魔族の国に仕えて軍に加わり、大陸戦争に参加するというのは自由を好む彼らにとって選択肢には入らない。
魔王都で一般人として暮らすのもありえないだろう。
何故なら彼らは冒険者だからだ。
未知を探求し、未知なるアイテムを求め、宝を得る快感を知った者達。
そうなるようにプレイヤーを冒険者として設定したのだから。
現世と同じ広い世界で楽しい冒険をさせて、ダンジョンに心躍る宝を配置し、それを攻略させて一攫千金の夢や強い武器を得て勝利という美酒に酔いしれさせた。
そんな快感を知った彼らが、目の前にぶら下がっている謎――未知なるクエストに飛びつかないはずがない。
クエストをクリアしたらどうなるのか? どんな報酬が待っているのか?
そんな好奇心に抗えるはずがない。
「自由を奪われまいと国には仕えない。大陸戦争に参加して知りもしない者達の為に戦う気なんて微塵も無い。結構。それで良い。それよりも優先すべき事があるのだからな」
現世に生きる者なのだから国に属して従え?
自由を謳歌して来たプレイヤーが国に仕え、現代の王に膝をついて頭を垂れるなど最も嫌悪する事だ。
むしろ、彼らこそが膝をつき頭を垂れて敬われる存在なのだから。
大陸戦争に参加する気がない? 弱者を救う英雄じゃない?
当然だ。
彼らは強者であり、男神の使徒である。現世の者達に対する英雄的行動よりも、優先すべきは神に対する行動だ。
人間とエルフの侵略はどうする?
そんな弱者は彼らが戦うべき相手じゃない。
彼らの敵は他にいるのだから。
「小競り合い程度の戦争なんぞ、現代の王に任せれば良い! 神脈が解放されればいくらでも恩恵をくれてやる!」
男神は目を血走らせ、拳を強く握りながら忌々しい樹を睨み付けた。
「クエストの報酬はどうだ?」
「は。しっかりと用意しております」
彼ら好みのモノを。
そして、いつか相手する事になる敵への対抗手段になるモノを。
「メイメイが合流するのは……すぐか。残りはイングリットであるが」
男神と鴉青年はイングリットの映るモニターへ視線を向けて監視を再開した。
読んで下さりありがとうございます。
女神様はエロ同人のように封印されたのだ。




