表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

135/306

幕間 公式生放送


 ゲーム内のサポートメニューから表示可能となるアンシエイル・オンライン公式ページ。


 最近更新されたトップページには動画再生用のプラグインが埋め込まれており、オンライン接続中のプレイヤー達は動画が始まるのを今か今かと待っていた。


 そして、時計が『0:00』になった時、遂に再生ボタンがアクティブに。


『皆さん、こんにちは。アンシエイル・オンライン公式生放送のお時間です。私、プロデューサーのエイルンと……』


『皆さん、こんにちは。広報担当のカラースで進行していきたいと思います!』


 動画が再生されると軽く頭を下げて挨拶するのは男神と鴉魔人の青年であった。


 プレイヤー達は2人の姿が映し出されると、ソフトウェアキーボードを起動してタイピングを始める。


 男神と鴉魔人の映った画面には『カラース爽やかカッコイイ』『クソPさっさとバランス調整しろ』『クソ雑魚種にアッパー調整入れろ』などのコメントが右から左へ流れて行く。


 もちろん、これらのコメントは男神も鴉魔人の青年もリアルタイムで見ている。だが、いちいち反応していては放送時間の尺が長くなってしまうので無視せざるを得ない。


『今回は皆様に大切なお知らせがあります!』


 無視せざるを得ないが『クソP』『人間贔屓P』『無能P』などと心無い中傷を連呼されれば流石の男神も心がメッタ刺し状態だ。


 少々顔を引き攣らせながらプレイヤー達からの心象を良くしようと、やや大げさにリアクションしながら告げた。


『近いうちに大型アップデートを行います! 今回の目玉は話題沸騰中の未実装エリアが正式にオープン! 現状では限られた人達にテストプレイをお願いしておりましたが、遂にプレイヤーの皆様全員がアクセス可能となります!』


『いやー、ようやく準備が整いましたね! サーバー(現実世界)の調整とか大変でした! 皆様にはお待たせしてしまって、申し訳ないです」


 男神が大々的に発表すると、隣に座っていた鴉魔人の青年も笑顔を浮かべながら拍手で盛り上げる。


 すると、今まで指を咥えてライブ配信を見ている事しか出来なかった夢のエリアへ行けると分かった動画視聴中のプレイヤー達は歓喜の声を上げる。


『やっとかよ』『おせーよ』『おう、あくしろよ』『明日実装しろ。いや、2秒後に実装しろ』などのコメントが大量に流れ、彼らの喜びように男神もホッと胸を撫で下ろす。


『皆さんは既にご存知でしょうが、あちらのエリアに行けば()()()()()な体験が可能となります。と、言っても基本は変わりません。エンドコンテンツである大陸戦争をするも良し、ダンジョンを探すも良し、生活系コンテンツを楽しむのも良し』


『基本的に遊べるコンテンツが増える訳ではありませんが、よりリアル感のあるプレイが可能になるわけですね。いくつか制約はありますが、先行プレイヤーからの受ける感触は悪くないと運営側は感じています」


 男神と鴉魔人の青年は共に頷き合いながら『現実世界へ行く』という部分を濁す。勿論、先行プレイヤーからの直接的な意見など受けてはいない。


 現実世界である事はあくまでも隠しておき、プレイヤー達が気軽かつ前向きになれるよう『ゲームですよ』というスタンスは貫き通しておく。


『あれってどう見ても現実世界』『先行プレイヤー達がマジでトイレとか行ってるじゃん』『飯食ってるじゃん』などのコメントも見られるが、完全スルーの構えである。


『全プレイヤーが新エリアに移動したら旧エリアは閉鎖となります。新エリアの土地や既存の国に対して運営は関与しません。完全にプレイヤーの皆様へお預けし、国や土地をどうするかは皆様次第になります』


 男神がニコリと笑いながら言うと鴉魔人の青年が顔を向けて問う。


『既存の国を発展させても良し、自分達の国を作っても良い。敵側の国を滅ぼして占拠しても良いって事ですね?』


『そういう事です。勿論、冒険コンテンツも充実していますよ。新クエストもありますし、新ストーリーも解禁されます。こちらは特に手を加えているので是非、プレイして頂きたいですね』


『あ~! 運営チームで頭を悩ませていたアレですね! どちらかの陣営が完全に大陸を占拠すると……』


『こらこら! それはまだ言っちゃいけないヤツ! いけないヤツだよ~!?』


『あ! そうでした。すいませんw』


 男神と鴉魔人の青年による露骨な情報リーク漫才。クソ寒いボケとツッコミを駆使してプレイヤー達が人間達を滅ぼすよう誘う。


 するとどうだろうか。


『敵勢力を滅ぼすと何かあるのか?』『新ストーリーのエンディングは分岐する?』『相手を完全殲滅したらストーリークリアになるのか?』と推測するコメントが流れてくるではないか。


 このコメントを見た男神と鴉魔人の青年は内心ほくそ笑んだ。


 だが、ここでプレイヤー達の推測に答えを示してはならない。黙秘を貫き、プレイヤー達の探究心をくすぐらなくては。


『ここで重大発表第2弾! 新エリアへの移行をお待たせしてしまっているプレイヤーの方々限定のキャンペーンです!』


 男神は机の上に置いてあった手持ちのフリップボードを立てて、カメラに見せる。フリップボードは『ユニークスキル育成キャンペーン』と記載されていた。


『皆様はシステム上、ユニークスキルというものがあるのはご存知ですか? これらは何も特別な者に対してだけ与えられるシステムではございません。皆様全員にチャンスがあります。新エリアへ移行する前にこれらの解放を目指しては如何でしょうか?』


 ユニークスキルの例を挙げるならばメイメイの『技巧技術』やセレネの『歌唱』だ。男神はユニークスキルとは探求と切っ掛けがあれば誰でも得る事が出来るとカメラに向かって言った。


『ユニークスキルを得られれば特殊な職業を解放できます。既に解放しているプレイヤーがいますが、全体の1%も満たしません』


 男神は暗に魔族と亜人が人間よりも弱いのは、このユニークスキルと特殊職業を解放していない者が多いからだと伝える。


『でも、どうやってユニークスキルを得るのですか? ヒントとか無いのでしょうか?』


 鴉魔人の青年はプレイヤーの心情を代弁すべく男神へ問いかける。


『そうですね……。世界にあるテキストの読み込み。あとは敵勢力の使う物への解析と研究でしょうかね。それらを行いながら自らがトライ・アンド・エラーを繰り返す事で開花するかもしれません』

 

 未だ多くのプレイヤーは魂の保管所にてアンシエイル・オンライン――訓練シミュレーターを体験している。そこにある書物などは男神や眷属達が集めた異世界の技術や物語に登場する空想技術である。


 こことは違う環境である異世界では空想に終わる物も、神力というチートの源があるアンシエルなら研究と魔法などの代替技術を駆使して実現可能となるのだ。


 それらを現実の物とした時、ユニークスキルは開花する。


 流れてくるコメントにも『ユニークスキルかー』『既に解放済みプレイヤーがいるからあるのは事実』『九尾の百騎夜行にも数人いたよな?』『商工会のレギマスもそうだね』とユニークスキルや職業を解放している有名プレイヤーの名が挙がって、プレイヤー達の関心も高まった様子。


『今は無い全く新しい技術もシステム上は可能ですし、埋め込んでいます。それらは元々我々が順次解放するのではなく、プレイヤーの皆様へお預けして探求と挑戦によって解放される要素となっているのです』


『なるほど。まだまだやり込み要素は十分あるって事ですね』


『そういう事です。ですので、新エリアへ移行する前に見つけてみてはどうでしょう。移行した際はどのコンテンツにおいても有利に動けるのではないでしょうか』


『つまり、今回のキャンペーンはそれらが見つけやすく、開花しやすくなるって事ですか』


『詳しくは言えないですが、そうですね』


 ユニークスキルを開花するには個人の探求と挑戦が必要不可欠であるが、同時に神力も必要になる。


 だが、神力は既にゲーム内には十分満ちているのだ。


 全プレイヤーが新エリアと銘打たれた現実世界へ移行したら、訓練シミュレーターの役割は終わりを告げと同時に内包された神力も消えてしまう。


 ならば、できるだけ多くのプレイヤーがユニークスキルを会得した方が無駄が無い。


『と、いう訳で新エリア移行までの間に準備を整えて下さい! 大型アップデート実装の詳細な日程はまだ未定ですが、近いうちに情報公開しますので公式ページの確認もお忘れなく!』


『本日の公式生放送はこれにて終了致します。最後にアンケートもありますのでご協力お願いします! では、またお会いしましょう!』


 こうして生放送は終了した。



-----



 Q1:本日の生放送はいかがでしたか?


 A1:見所が多かった 70% 


 A2:ユニーク解放してもバランスがクソ 19% 


 A3:運営はもっと仕事しろ 今すぐ実装しろ 10% 


 A4:カラースの抱き枕再販して欲しい 1%未満


 A5:次階梯魔法の解禁はいつなんだよ 1名 (匿名希望梟)



 ※ アンケートのご協力ありがとうございました。


読んで下さりありがとうございます。


次から新章です。

次回投稿日は火曜日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ