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115 ジャハームのダンジョン 1


 サブクエストを2つクリアしたイングリット達はジャハームへと向かう。


 日替わりダンジョンまで転送ゲートでショートカットし、そこから国境へ向かうのだが……当然、日替わりダンジョンからジャハームまでの道のりを徒歩で行くには時間が掛かってしまう。


 そこで――


「あ、あの……。流石に大聖堂内にラプトルを連れ込むのは……」


 イングリット達が大聖堂内に連れてきたラプトル2頭を見て、シスターが口元を引き攣らせながら小さな声で漏らす。


「ゲート通るだけなんで」


「グエェ、グェエ!」


 ステンドグラスから降り注ぐ七色になった太陽の光、祈る信者達の為に用意された長椅子、神聖な祭壇へと続く赤い絨毯。そんな大聖堂内を我が物顔で歩くラプトルが2頭。


 シスターの顔が引き攣るのも頷ける。だが、ラプトルを連れて行かなければジャハームへ向かえない。


 イングリットはラプトルの体に装着された手綱を2つ握りながら転送ゲートへと向かう。


「えーっと。大人4人と……ペットが2匹と」


『3500エイルを入れてね!』『3500エイルを入れてね!』


 いつも通り、要求された金額を投入するとゲートが開く。


「お騒がせしました~」


 最後にゲートを潜るメイメイがシスターへ手を振りながら消えていく姿を見送ったシスターはダッシュで神官長のもとへと向かった。


「よし、出発するぞ」


 ゲートで日替わりダンジョンの入り口までショートカットし、外へと出たイングリットはインベントリからラプトル車のキャビンを取り出してラプトルと連結。


 いつものようにラプトル車で国境へと向かう。


 国境は王種族であれば以前のように通行書が無くとも貴族用の専用門を通れるようになった。冒険者組合で発行しているプレイヤー達専用のミスリル製ドッグタグを窓口で見せれば持ち物検査等もパスできる。

 

 王城のパーティの時に説明を受けたが、プレイヤー達は魔王国とジャハームの国境をどちらも自由に通過できるよう魔王から提案されたようだ。


 最初は自由に国境を越えられるという点に難色を示していたジャハームの3氏族長であったが、プレイヤー達が国内にいるという事は緊急事態になった際に助力を請う事が出来る可能性がある。


 更には自由を認めれば、新たに出現したダンジョンの開拓にも力を貸してくれるだろうというメリットを聞かされて許可を出したようだ。


 実際にイングリット達がマーレの依頼を受けて向かっている最中なので、彼らの選択は間違いではなかったのだろう。


 最近では魔王都で活躍する冒険者組合の噂を聞いて、獣王都にも支部を作れないかと一般人や商会からの意見もある様子。


 やはりダンジョンで採取できる未知の素材を活かす方法を知っているのは大きなアドバンテージになる。とはいえ、まだまだ人手不足な冒険者組合がジャハームに支部を作るのは現実的ではないが。


「見えた。あれだ」


 国境を越えて1日半。事前に出現したダンジョンまでの地図を受け取っていたイングリット達はマーレとの待ち合わせ場所であるダンジョンへと到着。


 待ち合わせとなっていたダンジョンの入り口――周りは砂漠が広がり、岩をくり貫いて作られた洞窟前にはジャハーム軍が駐屯地を設営していた。


 ジャハーム軍に依頼票を見せ、マーレを呼んでくれと頼むと事前に通達されていたのか、軍人はキビキビとした動きで洞窟へ向かって行った。


 ラプトル車を駐屯地に停めてダンジョン入り口となっている洞窟を観察する。


「なんというか、不思議だね」


「砂漠に岩がドーンと置かれたみたい~」


 クリフとメイメイの感想はごもっともだ。


 目の前にあるのは何も無い砂漠のど真ん中に岩が降って来た、もしくは下から生えたような光景だ。日替わりダンジョンは塔だったのにこちらは手抜き感がすごい。


「すまない。待たせたな」


 雑なダンジョンの入り口を観察していると、洞窟の奥からマーレが姿を現す。彼女は以前パーティーを組んだ時と同じようにビキニアーマーを着用し、背中にはトーニュ・ハンマーを背負っていた。


「ダンジョンの入り口は奥だ。早速、向かっても良いか?」


「ああ、構わない」


 マーレの先導に続いて洞窟内へ。洞窟の壁には等間隔で松明が設置されており、歩くには困らない。洞窟に入って10メートルほど歩いたところに地下へと続く階段があり、ダンジョンゲートは地下にあると言う。


 道すがらイングリットはマーレにダンジョンについて質問した。


「日によってダンジョン内の地形が変わるか?」


「いや、変わらないな。魔王国は変わるのだろう? こちらはいつも同じ、ジャングルが広がっている。地形は変わらないが天気は一定だ。あと、陽も落ちない。常に昼の状態だな」


 どうやらジャハームのダンジョンはジャングル型の地形になっているようだ。


「我々も独自に調査しようと思ったのだが、奥へ行くほど凶悪な魔獣が姿を見せるようになってな。地図も作っているが、入り口付近しか調査できていない」


 階段を降りると小部屋があり、そこにダンジョンゲートが設置されていた。


 ダンジョンゲートの向こう側に映し出される景色は確かにジャングルのようだ。緑色の雑草が地面を覆い、巨大な大木や背の高い草や花がうっすらと見える。


「ちょっと待ってくれ」 


 マーレがゲートに手を伸ばし、中へ入ろうとするがイングリットが制止する。


 イングリットはダンジョンゲートの柱に近づき、真ん中辺りに触れると『登録完了』という文字が記されたウインドウが空中投影された。


 ここへ転送できるようになった事を確認すると、仲間達の顔を見て頷きを返す。


「よし、完了だ。行くぞ」


 ダンジョンゲートを潜ると映し出されてた光景と同じく、雑草が生い茂る地面がまず目に入る。


 入り口から500メートルくらいは雑草が生えた広場のような場所だ。そこから先はジャングルになっており、メイメイの身長以上に育った草木が隙間無く生えていた。


 ゲートのある広場には軍が持ち込んだキャンプ用品や食料などの物資が入った箱が置かれ、マーレの部下らしきダークエルフの女性軍人が数名と亜人の軍人達が武器を持って待機していた。


 イングリット達はキョロキョロと周りを観察するが、ダンジョンがどの程度の広さを持っているのかは分からない。


 やはり出現する魔獣やドロップアイテムを見なければ判断できないだろう。


「俺達が先導するから一番奥まで行くぞ」


「承知した。これより奥地へ向かう! 隊列を組め!」


 マーレが入り口で待機していた者達へ号令をかけると、20名程度の軍人と3名の学者が素早く列を成す。


 イングリットを先頭に、クリフとメイメイの傍には学者達が。その後ろにはマーレと軍人達が続き、ジャングルの中へと入って行った。


-----



 ジャングルの中に一度入れば視界のほとんどは緑色に染まる。


 クリフが探知魔法を発動すると既に何匹かの魔獣が引っ掛かった様子。イングリットも近くにある木の上から気配を感じ、立ち止まった。


 先頭のイングリットが止まった事で他の者達も足を止めて警戒態勢に。イングリットは上から気配のする木の腹を思いっきり蹴飛ばすとガサガサと音を立てながら魔獣が落ちてきた。


「キシャー!」


 木の上から落ちてきたのは緑色の皮膚と所々黄色の斑点を持ったイグアナで名を酸毒イグアナという。


「こいつは獲物を見つけると、木の上から酸をお見舞いしてくる毒属性の魔獣だ。頭に酸をかけられたら悲惨な事になる。注意しろ」


 背後にいるマーレ達に魔獣の特性を説明するイングリットに、イグアナは酸液の塊をブッと口から吐き出す。


 大盾で酸を防ぐとジュワッという音と共に白い煙が上がった。


 ゲーム内であれば初心者以上、中堅未満で十分対応できる魔獣だろうか。酸に気をつけていれば特別強い魔獣ではない。


 イングリットは吐き出される酸を大盾で防ぎながら接近し、力の限りイグアナの腹を踏みつけた。動けなくなったところで、頭目掛けてもう1度踏み付けるとゴリッという骨の砕けた音が鳴り響きイグアナは粒子に変わった。


「ダンジョンに出現する魔獣は倒せば消える。そして、ドロップアイテムが残される可能性がある」


 イングリットの見せたダンジョンの基本を頷きながら見守るマーレ達。学者達は解説された内容や魔獣についての特性などを紙にメモしていた。


「酸毒イグアナが出るなら日替わりダンジョンよりも上かな?」


 クリフが出現した魔獣からダンジョンの難易度を測るが、もう少し情報が欲しい。


 彼がそう思っていると、再び木の上が騒がしくなった。


「キキッ!」


 木から降りて来たのは1匹のチンパンジーのような魔獣。手が長く、クリクリとした瞳が特徴的な黒い毛を持つ猿だ。


 猿はイグアナのドロップアイテムを掴むと「ウキキ、ウキキ」と鳴き声を上げながら近くの木へ昇って行く。


「ああ!? 折角のアイテムが盗まれてしまったぞ!」


 アイテムを盗んだ猿を指差し、慌てるマーレをイングリットは手で制す。


「待て。慌てるな。盗まれたからといって迂闊に追いかけてはいけない。追いかけた先に罠を仕掛けて誘導するのがアイツの特徴だ」


 この猿は盗人チンパンジーと呼ばれる手癖の悪い猿魔獣である。プレイヤーの倒した魔獣からドロップしたアイテムを盗み、それを取り替えそうと追いかけてきたプレイヤーを罠に嵌めて殺す。


 他の魔獣よりも知能が高い。だが、所詮は猿だ。しっかりと弱点は存在する。


「アイツは追いかけない限りその場に留まって挑発してくる。腕の良い弓使いがバレない位置で陣取っていれば簡単に狙撃できるが、もっと簡単な方法がある」


 そう言ってイングリットは地面に顔を向けて何かを探し始めた。


「お、丁度良い」


 イングリットの近くに落ちていた丸い小石を拾い上げ、盗人チンパンジーに見せ付ける。


 すると、手に持ったアイテムとイングリットの見せ付ける丸い小石を見比べるように顔を行き来させた。その仕草を見たイングリットはポイッと地面に丸い石を投げ捨てる。


 イングリットが小石を投げ捨てたのを見た途端、盗人チンパンジーは猛ダッシュで木を降りて小石へと向かう。


 丸い小石の前までやって来ると、先ほどまで持っていたアイテムを地面に捨てて小石を拾い上げる。拾い上げた小石を両手でクルクルと弄繰り回しながら、小石の曲線にウットリするような表情を浮かべた。


「フンッ!」


「ウキキー!!」


 曲線の美しさにウットリしているところを奇襲。大盾の餌食となった盗人チンパンジーは粒子となって消えた。


「見た通り、アイツは丸い石に過剰な反応を示す。アイテムを盗まれたら丸い石を見せろ。ポイントは尖った石や大きめの石を渡さない事。見蕩れている間に倒せば良いが、倒せなければ渡した石を使って反撃してくる」


 渡した石で返り討ちにされた、なんて話は初心者を脱したプレイヤーによくある笑い話だ。ゲーム内ならばリスポーンできるが現実ではそうもいかない。


「なるほど、なるほど~」


 イングリットの説明を紙にメモする学者は未知なる魔獣との遭遇に瞳を輝かせていた。彼は魔獣の生態を研究する学者なのだろうか。


 遭遇する魔獣の名前と特徴、ダンジョン内に自生する植物、採取できる鉱石等の情報をイングリット達が教えながら一行は奥へと進む。


「キャー!」


 ダンジョンの中盤に差し掛かった時、列の後ろから女性の悲鳴が上がった。


 何事か、と皆が一斉に振り返ると、そこには触手を生やした植物によって捕獲されているダークエルフの軍人がいた。


「いやー! 助けてェー!」


 何かヌメヌメとした液体が滴る複数の触手が彼女の体を這い回る。腕と足を拘束されたダークエルフの軍人は宙吊り状態になりながら、脱出しようともがくが潤滑油のようなヌメヌメ液体によって思うように動けない様子。


 そうこうしているうちに、いくつかの触手が彼女の身に付けるチューブトップブラタイプの胸当ての中へと潜りこみ、それを剥がそうとするではないか。


「何という事だ……。何という事だ……」


 クリフはゲーム内にあった『異世界同人誌』と呼ばれる書物(テキスト)に描かれるシーンが再現されている現実に鼻息を荒くしながら視線を釘付けに。


「チューブトップブラも捨てがたい」


 イングリットはマーレの身に付けるビキニアーマーと比較しながらひたすら頷いていた。


「お、おい! はよう助けた方が良いんじゃないか!?」


 ウンウンと頷くイングリットの背中を叩きながら宙に吊られるダークエルフの女性を指差すシャルロッテ。


 同行している男性軍人達も「クソォ!」「仲間を離せ!」と言いながらも前屈みになってしまっている中、彼女を救出すべく動いたのはメイメイだった。


 大鎌を構え、ダークエルフの軍人を拘束する触手を切断。地面に落ちた彼女の腕を引っ張って退避しながら叫ぶ。


「ダイズカズラだ!」


 メイメイが指差す先にはダンジョン内に生える草木に紛れる食人植物の魔獣、ダイズカズラがいた。


 ダイズカズラは人1人がすっぽりと収まるくらい大きな麻袋のような消化器官を持ち、消化器官には口と鋭利な歯を持つ人喰い植物である。


 先ほど拘束されたダークエルフのように油断している獲物を触手で絡め取り、そのまま丸呑みして消化器官の中で溶かして栄養分へと変えてしまう。


 特に注意しなければならないのは、気配を感じさせない事に加えて周囲の景色の色に自身の体の色を変化させて擬態する能力を持つ。植物系魔獣の中ではかなり凶悪な部類に入る。


 メイメイに触手を斬られたダイズカズラは体の色を景色と同化させて姿を消してしまった。


「何という事だ! 何か対処法は無いのか!?」


「しっかり警戒しながら周囲を見れば分かるんだけど~。一番手っ取り早いのはコレ~」


 メイメイはここに来る前に倒した魔獣がドロップした片栗粉を取り出す。これをダイズカズラに向けて投げつけると、ダイズカズラのヌメヌメな触手に片栗粉が付着して白く染まった。


「ヌメヌメしていて粉がよく付くから~。ダンジョン中盤になったら粉撒きながら進むと安全かな~。すっごい手間も時間も掛かるけど~」


 片栗粉をドロップするのは入り口に近い場所で群生していた攻撃性の無い植物系魔獣。あれならばクソザコな現代亜人達でも倒せるし、数をこなせば片栗粉が大量に手に入る。


 分かりやすい色をつければ良いので他の染料などでも代用できるだろう。


「なるほど。しかし、凶悪な魔獣には変わりない。ダンジョン中盤に立ち入るのは許可制にした方が良いか……」


「それも良いが、ダイズカズラを倒すと手に入るアイテムはジャハームを()()()ぞ」


「なに?」


 危険度を考えるとマーレの提案は正しい。だが、凶悪な魔獣ほど良いアイテムを落とすのがセオリーだ。


 メイメイが片栗粉を浴びて己の位置を顕わにしたダイズカズラを倒すと地面に落ちていたのはガラス瓶に入った黒い液体。その名は――


「醤油だ」


 ダイズカズラのドロップアイテム。それは醤油である。


 塩、ミソ、醤油。


 調味料三神器とも呼ばれ、料理に使用する際は汎用性がドチャクソ高い調味料。


 魔王国にある日替わりダンジョンでは得る事の出来ない、現状ジャハームでしか手に入れる事が出来ないアイテムだ。これを食文化大爆発中の魔王国に輸出できるとしたら……。


「ジャハームは巨額の富を得るだろう。醤油がドロップするダンジョンがこの先出現しなければ、永続的に。加えて魔王国のようにジャハーム国民の食も豊かになる」


 魔王国に対して食材系輸出品が増える。食文化が急成長中の魔王国に対して、これは大きい。しかも醤油だ。醤油である。


 出来上がった料理にかけて良し。水で薄めて煮込んで良し。焼いた肉にかけて良し。焦がして良し。利用方法はとてつもない数だ。


 魔王国の日替わりダンジョンから取れる食材アイテムや、ここで採れる食材アイテムを使えばメニューも豊富になるだろう。いや、倍以上に増える。

 

 特に冒険者組合の食堂でフライパンを振るうワーウルフのワンダフルが聞けば泣いて喜ぶだろう。


「う、美味いのか!? 焼肉のタレより美味いのか!?」


「焼肉のタレの元と言える調味料だ。もし焼肉のタレを人の手で生成するとなれば醤油が必須となる。控えろ! 頭が高い! 貴様の大好きな焼肉のタレの起源となるアイテムぞ!」


「は、ははー!」


 焼肉のタレ中毒者であるシャルロッテは醤油というアイテムを前に平伏した。


「そ、そこまで……。何というアイテムだ……!」


 マーレは醤油の入った瓶を手に持ちながら、驚愕の表情を浮かべる。話を聞いていた軍人や学者達もゴクリと喉を鳴らした。


「と、いう訳で出来ることなら倒した方が良い。なに、5人くらいで余裕だろう。不安ならバックアップ部隊も付けて、ダイズカズラ討伐隊でも組んでみたらどうだ?」


「ふむ。確かに」


「よし、今から数匹倒そう。倒し方をレクチャーしてやる」


「おお! それは助かるな!」


 随分と親切な提案をするイングリットであるが、彼は兜の中にある唇をベロリと舐めた。


 ジャハーム軍がダイズカズラを倒して醤油を量産すればイングリットの手元へやって来る。それも()()でだ。


 このダンジョンの調査とアイテムの利用法を教える対価として冒険者組合に4割のアイテムを卸す。魔王国同様にそういう契約を結んでいる。


 しかし、魔王国との契約と違ってジャハームの場合は卸す相手先は『冒険者組合』ではない。イングリット()()という事になっているのだ。


 魔王国の場合はユニハルト達がいた為に冒険者組合という組織を対象にしたが、ジャハームはマーレと個人的なパイプを持つのはイングリット達だけ。


 貴馬隊無しで条件を組んでも文句は言われないだろう。何たって、ジャハームの代表と知り合いなのはイングリット達だけなのだから。


 むしろ、貴馬隊はジャハームのダンジョンに出入りできるようになるだけでもイングリットに感謝すべき事。


 つまり、フログ達の行っていたアイテムの中抜き……不正として行っていた行為をイングリットが『合法的』に行うということだ。


 加えて、卸し先がイングリットなので醤油の販売権利はイングリットが1人で握るという事になる。冒険者組合を通して販売するが、日替わりダンジョンで得たアイテムを売るのとは違い、イングリット個人が受け取るマージンが発生するのだ。


(ククク……。金の匂いがプンプンしやがるッ! これだからダンジョンはたまらねえッ!!) 


 イングリットの瞳には国の為にと奮起するマーレと軍人達が従順な犬のように映って見えた。 


読んで下さりありがとうございます。


次回は日曜日です。

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