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幕間 企画書


 神域に浮かぶモニターの前で男神は部下から渡された企画書を読んでいた。


 企画書の内容は先日行われたRvRの優勝レギオンをいつ転送させるか、余った神力をどう使用するか、という内容だ。


 男神の狙い通りイングリット達が神脈を解放した事で現実世界へ転送する為に使う神力を確保する事が出来た。


 最初は3人のみであったが、今回の転送は100人。これだけで神力の80パーセントを使用してしまう。


 残りの20パーセントは温存しておき、またプレイヤーを転送する際に使おうと考えていたのだが……。


「なるほど。ダンジョン間の転送か」


「確かにジャハームにダンジョンを生んだら行き来が不便ですよね。恐らく彼らは魔王国を拠点にするでしょうし」


 残り20パーセントでジャハームに生み出す予定のダンジョンと魔王国内に生み出したダンジョンを行き来する為の転送陣を作ってはどうか、という提案。


 イングリット達が拠点とする魔王国内のダンジョンに行く際は問題無い。だが、ジャハームのダンジョンにアイテムを取りに行こうとすれば国境を跨ぐので手続き等の面倒が発生してしまう。


 これでは侵略を受けている魔族と亜人プレイヤーからしてみれば、無駄な時間を使わせてしまう事になるだろう。


 迅速な素材アイテム収集と拠点間の移動手段。これは効率的な神脈解放には欠かせないでしょう! と企画書には赤文字で書かれていた。 


 この案には男神も鴉魔人の青年も「確かに」と頷いてしまう。


「20パーセントでは各部門の眷属が提案する新技術の開発や禁術の解放には足りませんからね」


「優先度的には強者の蘇生が最優先であるが、移動時間を省いて戦争の準備に時間を割くのは将来的に大きいか」


 確かに新技術の開発や強力な攻撃手段である禁術の解放も大きな助けになるだろう。


 しかし、男神や鴉魔人の青年がモニタリングしている時に抱いた感想は『アイテム不足』である。


 イングリットの鎧を完全に修理できなかった事が一番の要因であるが、今後そのような事が頻発してしまっては折角蘇らせたプレイヤー達の力が十分に発揮できない可能性が高い。


 それが原因で死亡し、全滅なんて事になれば男神の計画は無になってしまう。


「しかし、ダンジョンに設置している神力結晶はダンジョンを維持するのが限界であるし……」


 日替わりダンジョンが現実世界に存在する為には神力が必要だ。そして、ダンジョン間移動に使用する『転送魔法』も禁術の1つ。


 禁術とは強力な効果を生む代わりに使用するエネルギーは魔力でなく神力を使用する。


 ダンジョンの地中深くにある神脈から維持する為の神力を吸い上げているが、吸い上げる量を増やそうにも結晶の容量的にダンジョンを維持するのが限界。


 どうするか、と思案していると鴉魔人の青年が代替案を提案してくれた。


「魔王国に設置した女神像。あれとリンクさせてはどうですか?」


 大聖堂に突如現れた女神像の役割は死亡した魂を24時間だけ保存する為の仮倉庫みたいなものだ。


 プレイヤーが現実世界で死亡すると女神像に一時的に魂がストックされ、24時間以内に蘇生魔法を使えば蘇るといった仕掛けだ。


 女神像には機能的に自動で神脈から少量の神力を吸い上げる機能が備わっており、あちらは容量的に余裕がある。


 この女神像に転送魔法用の神力を吸い上げさせ、ダンジョンゲートとリンクさせればゲートに転送魔法用の神力を注ぐ事が可能となる……といった方法だ。


「そうしよう。こちらに回ってくる神力が少なくなるが……仕方ないか」


「新たな神脈解放に期待するしかないでしょうね」


 ダンジョンの維持に転送魔法を現実にすれば神域で吸い上げる量が減ってしまうが、2つの神脈を解放した今でも自転車操業状態。


 余裕を作る為には少なくとも後1つは神脈の解放を行わなければならない。


「新たに100人降ろすし、多少は早まると良いが」


「そうですね。今回のプレイヤーは大陸戦争メインにクエストを組む予定ですし、彼らに防衛を任せれば3人は自由に動けるのでは?」


「そう期待したいものだ。あちら側も動き始めそうであるしな……」


 男神は手に持っていた企画書からモニターへ視線を移す。


 モニターには人間とエルフの大軍が自走する箱――車に乗って魔王国へと侵略する様子が映し出されていた。


「本格的に邪神の眷属が動き出したら100人では足りませんね」


「うむ。今回はただの人間(・・・・・)だ。どうにかなるだろう」


 現在侵攻中の人間達の脅威度は低い。が、あの邪神の樹を崇める眷族が動き出せば――


「ヤツ等が本格的に動き出す前に準備を整えなければな」


「はい」


 男神は神妙に呟きながら、机の上にあったハンコを持ち上げる。


 企画書の中央にハンコを押し込むと『許可』と大きな文字が押された。


「ところで、解放した魂はどうであった?」


 次の話題はジャハームの遺跡でイングリット達が解放した王種族の魂について。


「やはり、ダメでした。魂の損傷が激しく……。魂の還る場所にすらも行けません」


 人間に捕まり、人間の兵器実験被害にあった王種族達。その魂は永遠に続く苦しみから解放されたが、魂はボロボロで生まれ変わる事すらも出来ない状態。


「そうか……。解放しても穢されればダメか。新たな王はもう生まれない。やはり、現状のプレイヤー達1人1人の魂を大事に扱わねば」


「はい。王の器を持つ魂の総量が減っては反攻する手札は尽きましょう」


 男神は机に置かれた企画書を両手で持ち、ふぅと溜息を漏らす。 


「……さて、この企画書を渡しておいてくれ」


「承知しました」


読んで下さりありがとうございます。


ちょっと忙しくてストックが尽きそうです…。

前後する可能性がありますが、次回更新は水曜日に。

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