08話 修行の後…
はぁ~。今日は疲れたなぁ、精神的にも肉体的にも…。修行の後、今日採ってきた素材やお肉を分けて解散する事になる。その間、私は剣を抜き魔物の血を拭き取り眺める。
月と青く光る惑星の明かりに照らされ剣が光って見える。本当に美しい剣だし、切れ味抜群。大事に使わせて貰おう。
ギレムさんと家に入ると、マヤナさんが私の手を握ってきた。
どうしたんだろう? いつものニコニコしたマヤナさんじゃない。
訳を聞いてみると、私達が洞窟に行っている間に旅人が隣の村から伝言を預かってきたらしい。
マヤナさんの母が凄い熱を出して何日も寝込んでいると…なんでも川に落ちた村の子どもを助けようとして自分も落ちてしまったらしい。熱を下げる薬草を飲ませても熱が下がらないようで、うわごとでマヤナさんを呼んでいるって。
村の人たちにはどうしようもないって事で旅人に伝言を託したらしかった。
マヤナさんはすぐにでも行きたいけど、隣の村とはいえ徒歩だと4、5日はかかるので私を待っていたんだって。
「ありさ、無事に帰って来てくれてありがとう。すごく疲れているのはわかってる。けど
早く行かないと間に合わないかもしれない…」
涙を流しながら私の手を握っている手に力が入る。
「こんな事を頼むのは間違っているかもしれないけど、私にはどうしようもない」
「ありさ。すまないがマヤナを頼む。伝言を聞いてマヤナは家を出ようとした。しかし夕刻じゃったからワシが止めたんだ。夜は危険すぎるし道のりも長い。魔物もいるじゃろうし」
村長が頭を下げる。ギレムさんも
「頼む。私も一緒に行きたいが、村長代理の仕事がある…」
マリムちゃんも泣きながら
「お願いします。ママとおばあ様を助けてあげて」
「止めてください。私は皆さんにお世話になっているんですよ。こちらこそお礼をさせてくださいよ」
そう言って外に出て愛車に向かう。マヤナさんの荷物を積んで直ぐに出発する。マリムちゃんとドライブに行った方向に車を走らせる。
隣でマヤナさんは祈るような仕草で泣いていた。ソランの群生地を抜けコンボクの林を避ける。今日は月と青い惑星のおかげで地面がよく見える。
どれだけ走っただろう。途中、小さい恐竜のような魔物がちらほらと見えてきた。奴らはアウザーラという魔物で草食らしく、あちこちで草を食べていた。何もしなければ襲ってこない。と言う事で、静かに休憩をとる事にした。車から降りて伸びをする。夜ご飯はまだだったからお腹が空いたな。
缶コーヒーを取りだし飲む……マヤナさんにも渡そうかな?
でも飲み慣れない物だからなぁ…ペットボトルのミネラルウォーターを開けてこの前作ったマローネンのおにぎりと一緒に渡す。
あっ、そうだ! マヤナさんの母の為にマローネンのお握りを崩してお粥を作っておこう。アウザーラに見つからないように車の陰でこっそりとお粥を作り仕舞う。
その後空を見上げておにぎりを食べる。今まで見た事の無いカラフルな星空だけど綺麗だなぁ~。しばらくするとアウザーラたちが山の方向へ去って行ったので、もう一頑張りしますか!
そこでふと、カーナビの事を思い出した。ずっとラジオの画面のままだったっけ。もちろん電波を拾っていないので無音だったけど…。ナビに切り替えてみたけど何も映ってないか……。
ナビのマップを縮小させてみると、川が映った。
あっ! その先にオレント村って書いてある。マヤナさんに聞くとそこが目指している村だった。もっといろいろとナビで調べたいけど、それは今じゃなくていい。まだ遠いなぁ~。
オレント村にナビをセットしてひた走る。
空が少し明るくなってきた。オレント村まで後少し。
先程までの平原と違い地面がボコボコしているけど車を飛ばす。
完全に夜が明けようやく着いた。私は村の外に車を停めマヤナさんに解熱剤とお粥を渡す。
「まず、お粥を食べさせてからこの薬を飲ませて上げてくださいね。私は車で待機してますから…」
マヤナさんは荷物を持って走って行った。
あぁ~さすがに眠い。シートを倒して目を瞑る……。
どれだけ寝ていたんだろう? 窓をコツコツと叩く音に目が覚めた。薄く目を開けて窓を見ると、マヤナさんが涙を拭いている。
慌てて外に出ると、再び手を握ってきた。ニコッと微笑み
「ありさ、ありがとう。食べ物と薬? のおかげで母の熱が下がったのよ。また眠ってしまったけど」
はぁ~良かった。少しは落ち着いたのかな? 私も微笑む。
ところで、何故村の人たちに囲まれているんだろう?
車のせい? 困惑しているとマヤナさんが、
「母はこの村唯一のまじない師なのよ。とても大切にされているの」
「えっ? まじない師って…」
「うん、予言したり病気や怪我を治癒したり占ったりご神託を授かったりするの。母に会いに村を訪ねて来る人もいるわ。でも自分の事はね…」
なるほどね。確か占い師とかって自分の事って占えないんだっけ。
話していると一人の老人が近寄ってきた。
「わしはこのオレント村の村長をやらせて貰っとるカルードと言いますじゃ。この度はマヤナの母マレッカを助けてくださりありがとうございますじゃ。マレッカはこの村のいや、この国にとってもかけがえのないお人なんですじゃなので、是非ともあなた様にはお礼をさせていただきたく…」
「いえ、お礼なら既にマヤナさんたちにいただいていますので、お気になさらず…」
立ち話もアレなのでって事で、村長の家に招かれ、話しを聞きながらハーブティーのような物をご馳走になったよ。
甘い香で爽やかでとっても美味しい。疲れた身体がすっきりした気がする。
マヤナさんが3、4日くらいこの村にいるとの事で、私は一度パチェット村に戻ろうか、どうしようか考えているとカルードさんが
「その間は是非ともうちに滞在してくだされ。お話も聞きたいしのぉ」
と言ってくれた。マヤナさんも
「それがいいわ。今はまだ眠っている母にも紹介したいし、弟にも会ってもらいたいから。それにありさが側に居てくれると安心なのよ」
という訳で3、4日このオレント村でお世話になる事になった。