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07話 初めての修行

 明日はギレムさんたちと修行に行く。大丈夫かな? 洞窟は前に鍾乳洞とか風穴とかに行った事があるけど、魔物が出る所は初めてだよ。当たり前か…。足手まといにだけはならないようにしなくちゃ。今まで生きてきて命懸けで何かをするなんて事ははじめてだ。まぁ、ギレムさんに言わせれば弱い魔物しかいないから修行にはちょうど良いらしい。でも私にとっては魔物と対峙とかはじめてなんですけど…。手足が震える。


『私は大丈夫。私は大丈夫』


心の中で自分に言い聞かせる。


 弱い魔物って…ゴブリンを想像してシュミレーションしてみる。


『ゴブリンが走ってきた。私は手をかざして火の玉をイメージする! あれっ? 洞窟の中で火の玉って大丈夫なの? 飛び散ったらギレムさんたちに当たるよね? それじゃ、ウォーターカッターか、かまいたちで…いやいや真っ二つとか……ねぇ。それじゃサバイバルナイフ…無理無理。近づいたら殺られちゃうでしょ!』


いろいろ想像してみる。どうするのが一番良いのか…考えているうちに寝てしまった。


 はっ! っと目が覚める。結局何も考えつかなかった。しょうがない…今から考えても良い答えなど見つかるはずもなく、どんよりとした気持ちで朝食をいただく。


 村長の家を出るとアルバートさんとロレンスさんが待っていた。昨日のうちにギレムさんが二人に私も行くって事を話してくれていたらしい。ロレンスさんが綺麗な細身の剣とベルトをくれると言う。お店で眠っていた剣らしい。さすがは細工職人。鞘と刀身と柄。それとベルトにもつる草模様の細工がしてある。眺めているだけでうっとりしてしまうほどの一品だった。お店で眠っていたと言うことは…お高いんだよね…私には支払えないよ。


「妻が助けてもらったからそのお礼にどうぞ。それにグロドビルビーのミツもたくさん頂いた事だし。お店で眠らせて置くくらいなら、使ってもらった方が剣も喜ぶでしょう」


えっ! こんな高価な物を…それに私は大したことしてないのに貰えない…。ロレンスさんと見つめ合っているとギレムさんが


「これからの旅に役だつから貰っておけ」


と……しばらく考えていただく事にした。


「大切に使わせていただきます。今は出来ないけどいつかお礼をしたく思います。ありがとうございます」


 そして装備した。この細身の剣は私にちょうど良い長さだった。早速剣を抜いてみる。ドキドキしてきた。これって鞘から出し入れする時に失敗すると手が無くなる可能性も…何度も練習するしか無いわね…。


 車に乗り込み洞窟に向かう。しばらく進むと少し開けた場所に出た。目の前には洞窟の入り口が。深呼吸をして3人の後ろをついていく。少し行くとなんとも言えない薄い悪臭が漂ってきた。


「うっ! 臭い…何なんですかこの匂いは?」


「これはマルカメールだな。まだ匂いは薄いが攻撃を仕掛けるとこの臭い匂いを出して仲間を呼ぶ。これをやられると目と鼻がしばらくダメになる。倒し方は真ん中を叩く。パキっと割れるからそれでおしまいだ。他の攻撃ではダメだからな。ありさはとりあえず後ろで見ているといい」


 3人は走り出した。私もついて行くとそこにはスイカくらいの大きさの黒いまだら模様の丸っこい虫の魔物が7、8匹いた。また虫系…しかもデカイ! 震えを通り越して身体全体が痺れてきたよ。ギレムさんは槍で、アルバートさんは斧でロレンスさんは剣で次々と真っ二つにしていく。唖然と見ていると1匹のマルカメールが3人の攻撃をかわして私の方に走ってきた。うわぁ~こっちに来る! 気持ち悪い~! 私は気をつけながら剣を抜き両手で持ってスイカ割りの要領で切りつける。剣がマルカメールの真ん中をとらえるとパキっと割れた。


 身体がゾワゾワして茫然と立ち尽くしていると、ロレンスさんが頭を撫でてくれた。ふぅ~まだ手足が震えているけど私にも出来たよ。他の二人は割れたマルカメールの中から袋状の物を取り出してしまっている。あれってなんの素材? 驚いた顔で見ているとロレンスさんが


「あれはマルカメールの匂い袋。魔物避けになるんだよ」


って教えてくれたけど


「イヤイヤ、あの匂いでは人も近寄れ無いでしょ」


「ハハハ…加工するから人は大丈夫だよ。魔物は匂いに敏感だから寄ってこないし、他に匂いを足すからマルカメールも寄ってこない。村の囲いのあちこちに匂い袋がついているけど、気が付かなかった?」


 そういえば囲いのあちこちに小さな巾着袋がついていたっけ。匂い袋を仕舞い終えたらしく、残りの残骸を燃やして先に進む。燃やすのは私の仕事。


 次にいた魔物はうさぎに似たトラビッタ。1メートルくらいの大きさで鋭く長い爪に尖った耳? いやあれは角かな? 凶悪な姿形をしている。近づくと爪や角で攻撃してくるらしい。怖いので離れた所からかまいたちで切りつけた。ギレムさんたちもどんどん倒していく。凶悪な見た目だけどとっても美味しいらしい。13匹もいたのでお肉がいっぱい採れた。今夜はごちそうかな? 

 

 この後も大きいトカゲのような魔物とかカタツムリに似た魔物とかを倒した。ちなみにトカゲに似た魔物も食べられるし、カタツムリに似た魔物からは素材が採れるらしい。たくさんのお土産を持って帰れるねっ! この先は下りになっていてもう少し強い魔物がいっぱいいるんだって。なので今日はここまで。


「今日は連れて来てくれてありがとうございました。良い経験になりました」


「初めてにしては上手くやれていたぞ」


とみんなが褒めてくれた。ほんのちょっとだけ自信がついたかな。来た道を戻り村に帰って来た。初めての洞窟はいい勉強になりました。これからも修行を続けなくちゃ!

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