01話 ワクワクの旅行のはずが…
行ってきます! これから私、真野 アリサ は友人たちと一週間の別荘ライフを楽しむ為に、近くの市場で買った食べ物や飲み物。その他いろいろなものを愛車シルフィに積んで出発した。朝早くに家を出たのであと少しで別荘に着くはずだった。友人たちももうすぐ着くはずだ。これから始まる一週間の別荘での生活にワクワクしていた。
向こうに着いたら何からはじめようか……海に行って釣り? それともとりあえずお茶? まぁみんなで決めればいいかな? だけど、峠みちの真ん中に居たものに驚き急ブレーキを踏んだ。キキーッ❗
心臓がバクバクする。待避スペースに車を停めて、深呼吸。それは、見た事のない真っ白な仔鹿だった。どうやら脚を怪我しているようで伏せていた。
私は恐る恐る近づいて撫でてみたの。仔鹿は怯える眼でこちらを見ていたけど、害がないとわかったのか大人しくしていたから
「ここは危ないから車に乗ってくれないかな」
と話しかけながらゆっくり仔鹿を抱えて車に近づいてドアを開けた。
愛車の後部に大人しく乗ってくれた仔鹿を街の獣医の元に連れて行こうと来た道をもどる。途中、凄いスピードで走って来たトラックに接触して私の愛車がガードレールを越えて崖に飛びだした。私はもうダメだ……家族、友人たちの顔が脳裏に浮かぶ……。その時、後部座席からの眩しい白い光に包まれた。
「妾のせいでこんなことに…すまんな」
あの仔鹿が語りかけてきた。少しの間。気がつくと白い世界にいた。車から降りてみると何も無い空間に光る仔鹿。呆然と見ていると仔鹿の姿が女の子の姿にかわっていた。
「妾はまだ幼いが一応神(修行中!)じゃ。下界に遊びに行ったのじゃが、うっかり怪我をしてしまってなぁ。すまない事をした」
なんて返事をしていいやら……。返事に困っていると、後ろから大柄な男が姿を現した。
「うちの娘がすまんなぁ。まったく勝手に下界に遊びに行くとは。まだまだ修行が足りんぞ」
「でも……妾だっていろいろと出来るもん」
「しかしだなぁ。こうして人間のお嬢さんに迷惑をかけたであろう」
「だって……」
「だって、ではない。とにかくこのお嬢さんは下界で死んでしまったのだぞ! どうするつもりじゃ」
「う~ん。どうしよう。このままじゃ妾の立場も危ういのぉ❗ どうするべきか……」
まだ目の前の神の親子の前で何も出来ずに呆然としている私を見て、幼い神がこう言った。
「元の世界に戻してやる事は出来んが、お主らからすると異世界と言われている世界に転生してみんか? 妾のせいじゃからいろいろと便宜ははかるぞ」
しばしの沈黙。この話を断ると普通に死んだだけ……それならば、転生してみようか? まだまだ生きていきたいし。こうして私は異世界に転生したのでした。