一、
ちいさいおとこのこが
ひとりでとことこ歩いていきます
ぬれた松葉が滑る坂を昇り
よあけ前の色づいた木々の小道を抜けて
いしづくりの風の回廊を抜けたところに
その小さなお店はありました
あたたかな明かりに誘われて入ると
「いらっしゃいませ」
すらりと背の高い
まっしろな美しいポニーが出迎えてくれました
ながいたてがみが真っ直ぐで綺麗です
おくの方から
こがらで賢くて可愛らしいジャコウネコが
くるくると手際よく品出しをしながら
「おや、ぼうや一人なの」
こえをかけてくれました
きんいろのどんぐりを一袋と
とけない甘い純粋を
てにもって
レジに行くと
まるい笑顔のまんぼうが
「はい、どうぞ」
ゆきの模様と鹿の絵の
すてきな紙袋にいれてくれました
おかねはいらないのです
このお店では、あしたの寂しさと
きのうの悲しみで買い物ができました
ちいさいおとこのこが
お店を出ると
「ぼうや。探したのよ……」
むかえに来てくれた人に連れられて
ちいさいおとこのこは
かえっていきました
きんいろのどんぐりは
きんいろのままに
とけない甘さの純粋は
とけないままに
あしたの寂しさは
あしたの楽しみに
きのうの悲しみは
きのうの思い出に
よるでもなくて
あさでもない
じかんだけの
だれも知らない
ちいさいこどもの
ゆめのなかだけにある
お店なのです