地球の味方
里奈と洋平は同い年、中学2年になったところだ。お互い家が近いこともあって、保育園、小学校、そして中学校は同じところだった。
「なんかさぁ、俺たちがセカイを救うような、でっかいイベント起きないかな」
近ごろの洋平は、それが口ぐせだった。
「バッカじゃないの? 今日も平穏な日々があることに感謝しなよ、洋平」
里奈のツッコミもおなじみのものだ。
「つまんねぇ。ほんとつまんねぇ」
「そう思えるのは自分がつまんない人間だからでしょ」
「うー」
洋平は不満そうに口をとがらせた。
「あっ、そうだ!」
里奈が、ぱっと顔を輝かせた。
「正義の味方になれるイベント、あるよ!」
「ほんとか!?」
「今度の日曜、わたしについてきて」
里奈はニコニコと微笑んだ。
何かある。とは思ったが、笑う里奈の可愛さに洋平はちょっとドキドキして「う、うん」とうなずいた。
そして、日曜日が訪れた。
二人は水着とタオルと、ゴミ袋とトングを持って海に来ていた。
「はい、正義の味方さん」
里奈がトングを洋平に手渡した。
「何だよコレ!」
洋平は不満そうだ。
「ただのゴミ拾いじゃねーか」
「ちっちっち。甘いよ洋平。たかがゴミ拾いっていうけど、わたしたちがちょっとでもやることで、ゴミだらけの地球を綺麗にできるんだよ。今ね、地球の海はゴミがいっぱいあって、このままいくと魚よりゴミが多い海になっちゃうんだって。それを助けるのが、今のわたしたちの行動なのよ。ちゃんとした地球のための、正義の味方だよ」
「むぅ」
しぶしぶと洋平はトングでゴミを拾った。ポイ、と里奈が持つゴミ袋に放り込む。
そうしていると、大人がひとり、近づいてきた。近所のおじさんだ。
「おや、里奈ちゃんに洋平君。今日はゴミ拾いかい、偉いねえ」
おじさんが穏やかな笑顔で言う。
洋平はちょっと照れた。
「洋平くんとわたしは、今、地球の味方なんです」
里奈が誇らしげに言った。
「ちょっと待っておいで」
おじさんはそう言うと、海に面した道路に立ったコンビニへ行った。しばらくして、手に二本のアイスを持って戻ってくる。
「はい、二人とも。これはご褒美」
「あ、ありがとうございます!」
おじさんは手を振って、去っていった。
「みんなに感謝される、立派な正義の味方でしょ?」
里奈がいたずらっぽく笑う。
「ほんとだな」
「案外、正義の味方っていうのは、地味に目立たないところで活躍しているものなのかもね」
「うん」
二人はアイスを頬張った。あっという間に食べてしまう。
そしてゴミ拾いを再開し、持てるだけのゴミ袋にゴミを入れた。
ゴミ捨て場まで持っていき、捨てる。
「じゃ、わたしたちも泳ごう?」
「お、おう!」
海水浴場に戻り、二人は水着に着替えた。
まぶしい太陽だ。
掃除してから入る海水浴は、格別だった。