表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の人  作者: K-ey
58/91

~運命のいたずら~

私はいつもよりも女性らしい格好をして、用意したチョコレートを紙袋に入れると

家を出た。達矢さんときちんとした約束をしたわけでもないのに、まるでデートに

でも行くような感覚で、期待と不安を胸に車に乗り込んだ。エンジンをかけると

紙袋を覗き込み、チョコレートの箱に挟んでおいた手紙を抜き取り、サッと目で

追うとなんとなくドキドキしながらまたすぐにそれをしまった。

『私ってバカだな…』ふと可笑しくなった。



久しぶりに通る道は舗装されていて、新しく走りやすくなった道を皆、“ここは

高速道路ではないか⁈”と見紛う程のスピードで走り抜けて行った。私は後続車に

次々と追い越されながら、カーチェイスでもしているかのように無謀な運転を

繰り返す一台の車に目をやり、“危ないっ、もうぶつかりそう…”とヒヤヒヤしながら

運転をしていた。








「まったく、なんでだよ、仕方ねぇなぁ…」

俺は舌打ちをしながら電話を切った。もうすぐ、あと少しで涼子さんに逢えるかも

知れないって時に…

俺は車の鍵を握りしめると急いで部屋を出て階段を駆け下りた。

「悪いがちょっと頼む…」

そう副店長に告げ、外へ出た。

外に出ると駐車場には入り口から続く順番待ちの列が凄いことになっていて

“もしかしたらあの中に涼子さんがいるかも知れない‥”と焦りでいっぱいになった。


運転をしている最中にも女から連絡があり「ねえまだ?早くして、」と

人の都合も考えずに平気で催促をしてくる身勝手な態度に正直イラついていた。

現場に駆けつけると女は寒そうに長い髪を手で押さえながら強風の中その場に

しゃがみ込んでいて、遠巻きに見る限り相手の車は黒塗りの外車だということが

わかった。

“おいおいやばい奴にぶつかったんじゃねーのか?”と不安になりながら、現場から

少し離れたところに車を停め、女の所までゆっくり歩いて行った。

徐々に近づいていくと女は俺を見つけ“助っ人が来た”とばかりに駆け寄ってきた。

その様子を見ていた相手の男は俺を見て態度をデカくし、

「お前、この女の連れか?」と聞いた。

その男は見るからに“そっち方面の人間”という雰囲気を醸し出していて、俺は若干

ビビリながら「連れというかまぁ知り合いです…」と言った。すると

「この女が生意気によく見もせずに割り込んできたから、俺の車、こんなに

なっちゃって…なーなーどうする?どうしてくれるんだよっ。」と大声で言った。


男の車を見るとボディーに傷が付いており、見た限りはそれ程の傷には見えなかっ

た。すると女は「そんな強くぶつかったわけじゃないよ、少し擦っただけ。警察を

呼べばいいんだよ…」ボソッと言った。

俺は「バカっ何余計なこと言ってんだよ。」と焦りながら目配せをし、静止すると

男は「は?テメェなめたこと言ってんじゃねーよ」と一歩前に出てきた。

俺は「あの、すみません。ほんと何も知らないもんで、あの…きちんと賠償します

ので…」と頭を下げた。

すると男は「兄ちゃんよくわかってるなぁ、それでいいんだよわかれば…賠償して

くれさえすればなーんにも問題ねーよ。」と俺の肩をポンと叩いた。


俺はただひたすら低姿勢で交渉にあたり、事なきを得た。俺はすぐに知り合いの

車屋に電話をし、後のことが穏便にかつ滞りなく済むように手はずを整えた。

女はそれでも納得いかない様子で仏教面をしていたが、やがてホッとしたように

「ありがと、」と言った。

俺は「ここで待ってろ」と女に言うと自分の車を取りに行き、そして女を乗せた。

時計に目をやるともう既に13時を回っており、気落ちしながらも“もしかしたら

まだ間に合うかも…”と思い直し「悪いけど今日忙しいんだよ、急いで帰らなくちゃ

ならないから」と女に告げると「忙しいって何?仕事?」と俺の顔を見た。

「ああ…そうだよ今日は忙しいんだよ、イベントで。早く帰らなきゃならないんだ

よ。」とぶっきらぼうに目も合わせずに言うと女は

「じゃあ、あたしも一緒に行くよ。いいでしょ別に…」と言った。

俺は焦って「いやいいよ、今日は。こんな日にお前少し家で大人しくしてろよ。」

と言い放つと女は「えー」と不満げな声を出し「じゃあ送ってってよ、駅まで」と

言った。

『ったく面倒くせーな。どこまでワガママなんだよ…』と思いながらも

もうそうするしかないので仕方なく「ああ…」と返事をした。


刻々と過ぎて行く時間を気にしながらも俺は女の為に駅まで車を飛ばすのだった。








しばらく走り、長い橋を下るとその先の信号の脇に数台の緊急車両が赤いランプを

くるくると回しながら停まっているのが見えた。

「ほら、やっぱり。みんなスピード出すぎなんだよ、私も気をつけなくちゃ…」と

気を引き締めた。

交通量が多かったが流れは割とスムースで、渋滞に巻き込まれることもなく、私は

達矢さんのお店まで辿り着くことができた。いざ、達矢さんのお店が見えてくると

何となくいい知れぬ不安や怖さを感じたが、でもせっかくのチャンスだからと勇気

を出して駐車場に車を停めた。


車の中で深呼吸をするとチョコレートの入った紙袋を確認しエンジンを切り、

シートベルトをゆっくり外した。紙袋を覗き込み、リボンの下の手紙に目をやり、

ふーと息を吐くと車を降りた。

『本当のことを言おう。何もかも曝け出して全部知ってもらおう。そうすれば楽に

なる。本当の私を知ってもらうの…』

そう決意めいたものを胸に秘め、入り口前の列に並んだ。行列の方はもう既に

入場開始時刻となっていた為、並んでいた人の波は徐々に動き始めていた。

“どこかで見ているかも知れない…”と達矢さんを意識しながらゆっくり前に進んで

行った。


「ちょっとすみません…」とスタッフに制止され、私の前の人のところで一旦

入場が途切れた。

「お待たせしました。」と再度、入場が許され緊張しながら店の中に入った。

久しぶりの緊張感そして今日はなんといっても“達矢さんに逢って伝えたいことが

ある。”という使命感めいたものを抱えながら台を探し始めた。

好きな台を無事確保することができホッとしながら車の鍵を台に置いて飲み物を

買いに出掛けた。『達矢さん私が来てること、もうわかったかな?』

そんなことを思いながら取出し口からジュースを取ると、ちょっと気恥ずかしく

なりながらもワクワクしながら席へと戻った。








女を駅まで送り届ける途中で「お昼に唐揚げ弁当が食べたい!」と言う女の

ワガママに付き合わされ弁当屋に寄り、それを持たせてやると、慌てて店に向か

った。さっきまでいた女の香水の匂いと唐揚げ弁当の匂いとが混ざり合って、俺を

不愉快にした。俺はすぐさま車内の空気を入れ替える為に窓を開け放ち、冷たい風

に自分自身を浄化させるように顔を晒していた。

『もう開店から三時間以上経ってるじゃねーか。どうだろうなぁ大丈夫かな?

涼子さんいるかな?…』

俺は“どうか彼女が来ていて欲しい、そしてまだ帰らないでいて欲しい。”という

願いを込めながら車を飛ばしていた。


前をちんたら走るハイブリッド車を追い越し、店まであと15分少々という所まで

来た。「早く早く、」と前方を見ながら時計とにらめっこをしていた。

やっと店の周辺まで来て、車でいっぱいの駐車場が視野に入ってくるとホッと

しつつも少し緊張感が増してきて、奥の方に空きスペースを見つけると速やかに

車を停めた。ルームミラーで身だしなみを整えると“勇気を出すんだ!”と自分に

言い聞かせエンジンを止めた。車を出ると駐車場に停めてある車に軽く視線を送り

ながら店内に入っていき、副店長に戻ってきた旨を伝えると一目散に店長室へと

駆け上がった。


息を弾ませながら車の鍵を机の上に置き、ネクタイを緩めながらモニター画面を

覗き、入り口から順にゆっくりとチェックしていった。

「涼子さん、トイレにでも行ってるのかな…」

もう一度初めから各シマをチェックし始めた。ひとりひとりの顔を慎重に確かめ

ながらゆっくりと見ていった。








「えっ?もう一度お願いします、ちょっとよく聞こえなくて‥」

私は突然かかってきた電話に出る為、慌てて店の外に出た。


「‥えっ?‥そんな…本当ですか…」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ