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運命の人  作者: K-ey
29/91

~支配~

彼女は「くすぐったい‥」と言って首をすくめたが俺はそのままキスを続けた。

やがて彼女は吐息を漏らすと

「ちょっと待って、お願い、シャワーを浴びさせて…」と言った。

俺は「そのままでいい」と言うと彼女を振り向かせてまたキスをした。


唇の触れ合う音だけが辺りに響いて俺たちを興奮させた。

俺たちが初めて結ばれてから今日で2回目の...。

我を忘れてお互いの唇を欲していると、やがてどっちがどっちの唇なのか

わからなくなり、俺たちは完全に溶けあっていった。

彼女から漏れる甘美な声が俺から理性を奪い取り、そして…堕落させていった。


俺は彼女の服を剥ぎ取るように脱がすと椅子の上に放り投げた。

そして彼女をベッドまで連れて行き、彼女の身体を見回して

“ 誰のものにもなっていないか ” 確かめるとまたキスをした。

彼女は少し緊張気味に俺のシャツのボタンを外すとゆっくり俺を見上げた。

そして包帯に巻かれた俺の手を取って、くちづけをした。


俺たちは夜景に見守られながら愛し合った。

お互いをいたわりながら、慈しみながら、時には荒々しく

我がままになりながら堂々と愛し合った。

何度も何度もお互いを求め合い、気がすむまで愛し合っていた。



俺の横で寝息を立てている彼女の髪にキスをしてそっと毛布を持ち上げると

彼女の身体を眺めた。

「これは俺のものだから‥」そう呟いてそっと肩にくちづけた。

すると彼女は身体をピクッとさせ、モゾモゾと動いてこっちを見た。

「おはよう。」と言うと少し照れて顔を赤くした。

俺は彼女の身体を引き寄せると髪を撫でて

「イヤだけどそろそろ行こうか、」と囁くと

彼女は向き直って俺の頬にキスをした。



後ろ髪を引かれながら部屋を後にした俺たちはずっと指を絡ませながら

まだ天国の階段を上っていた。






俺たちは親に内緒で夜遊びをした子どものように車の中に佇んでいた。

窓の外を目まぐるしく流れていく光の中で俺たちは、お互いの乱れる姿や

普段では聞けない声や匂いを思い返しては余韻に浸っていた。




「着いちゃった‥」と彼女に声を掛けると、彼女はシートベルトを外し

首に抱きついてきた。俺は背中をさすって額にキスをすると

「おやすみ。」と囁いた。

彼女は「もう、気を付けてよ。」と言うと包帯が巻かれた俺の手を取り

トンと軽く叩いた。

「‥達矢さん、今日は本当にお誕生日おめでとう。」

俺の目をまじまじと見てそう言うと自分の車に乗り込んだ。



俺は今日一日の出来事を噛み締めていた。彼女の匂いや感触を思い出し

言い尽くせぬ安堵感を身にまとい眠りについた。





翌朝

『こんな疲れなら毎日でもいい』そう思いながら仕事に行った。

さっきまで彼女と一緒にいたのが嘘のように、朝が来ると見事に

いつもの現実が待っていた。

『彼女も頑張っているのだから俺も頑張らなくちゃいけないな‥』

そう自分に発破をかけて仕事に取りかかった。






「もうそんなに経ったのか…」

俺の誕生日を一緒に過ごしてから一週間が過ぎていた。

誕生日の翌日に連絡があってからは、ここのところ音沙汰がなく

気になっていた。

こちらから連絡を取る時は何の問題もなく話し合うことができるのだが

どうも彼女からの連絡が少なくなっているような気がしていた。


《 涼子さん、明日逢える? 》

ちょっと心配になり彼女にメールを送ってみた。…すると

《 ごめんなさい明日はちょっと忙しくて 》

そう返事が来た。いつなら都合がつくかと尋ねると

《 ちょっとまだわからないから後で連絡する 》と返事が来た。

俺はどうも気になって

『そうだ明日は休みだから彼女の後をつけて行ってみよう。』と思いついた。



俺は以前、彼女から勤務先の大まかな所在地を聞いていたので、ある程度の

ことはわかっていた。


通勤路の途中で待ち伏せをし後方からこっそりついて行くという方法に出た。

“ 彼女はいつも真っ直ぐ前しか見ていないからきっと俺には気づかない。”

俺の前を確かに通過したのを見届け、数台後からこっそりとつけて行った。

結果彼女の会社はとてもわかりやすい所で、主要道路を走って行き

最後に路地を何ヶ所か入るくらいのところにあった。


俺は彼女が会社に車を停めるのを見届けると、幸いなことに近くにある

病院の駐車場に車を停めた。

「ここか…」

周りは車の往来が激しいところだが、そこから一歩入ったこの場所は

穏やかな環境だった。

この病院は彼女が勤める会社のすぐ隣りの敷地にあり、駐車場からは

その様子が容易に見てとれた。


確かに彼女が事務所の中へと入っていくのを確認すると、俺はしばらく

様子を観察することにした。

「‥あの男か?…」

ひとりの男が事務所の前に現れるとそこにいた従業員らしき数人が皆

頭を下げだした。俺は窓を開けて少しでも何か聞こえて来ないか試してみた

が声は聞こえて来ず、そうこうするうちに彼女が外に飛び出してきて

男に受話器を差し出し、また中に戻った。

しばらくして男は話しを終えると受話器を手に建物の中に入って行った。

『あの男が南ってヤツなのか?』

俺はやきもきしながら見守っていると今度は背の高い40~50代くらいの

男が現れた。身なりからするとどうも営業職っぽい感じがした。

カバンを手に建物の中に入ると先程の男に頭を下げて何やら話している。

‥ってことは『 あの男が南なのか…』

先に建物の中に入って行ったのが社長で、今入ったのが南。

たぶんそうに違いない。

俺は中の様子がもっとよく見えるように車を移動した。


あの男は彼女の隣りの机に座った。

“ 南さんと私の机の後ろに棚があるでしょ…”


俺はふと、この間彼女と伊香保へ行った時に彼女へ掛かってきた電話の

やりとりを思い出した。

『そうだ確かにアイツが南だ‼︎』

俺はあの男が彼女に語り掛け笑っている姿を目にし、憎しみが湧いてきた。

何かを話し掛けられ笑い返す彼女、お茶を差し出す彼女から笑ってそれを

受け取る南、そして次の瞬間何か談笑しながら男が彼女の肩に触れた。

俺は思わずビーとクラクションを鳴らした。

二人はハッとして、音の在りかを確かめるように頭を左右に振り

いぶかしがるとまた何か話し始めた。俺は笑い合っている二人を見ながら

次第に自分の中の憎悪が抑えきれなくなり、思わずハンドルをぶっ叩いた。

彼女がくちづけてくれたこの手を何度も何度もハンドルに叩き続けた。


俺は携帯電話を取り出すと彼女に電話を掛けた。すると彼女は男に背を向けて

電話に出た。

「もしもし」

「あ、もしもし涼子さん?俺。」

「達矢さん、どうしたの?」

「いや、声が聞きたくなって、」

「声って、今仕事中なの。」

「わかってるよごめん、今日仕事が終わったら逢えないかなぁ?

少しだけでもいいんだ」

俺は遠くから彼女を眺めた。

「少しって、でも…」

「頼むよ」

俺は男の方に目をやると男はパソコンを開いて作業をしていた。

「逢いたいんだ‼︎」

俺がわざと大きな声を出すと男はチラッと彼女の方を見た。

「わかった‥じゃあいつものところまで来てくれる?」

そう彼女が答えると俺は薄ら笑いを浮かべながら

「ありがとう。でも今日は途中で落ち合おう、君も忙しいだろうから。

俺、今日そっちの方に用があるんだだから近くで逢うっていうのはどう?」

と提案した。

「沢木病院ってあるだろ国道沿いに、あそこはどう?広いしわかりやすいよ」

南という男は立ち上がると席を外した。


「うん、あ、でもあそこはちょっと…やっぱりいつもの公園でいいから」

と彼女は言った。

「そう‥行ってあげるのに…」

俺は笑いながら話しを続けた。

「大丈夫。ほんとに大丈夫だから、じゃ、いつものところでね。」

彼女はそう言うと電話を切った。

やがて男は席に戻って来るとパソコンを閉じ、カバンを机の上に置くと

彼女にひと声掛けて外へ出た。アイツが車に乗って出掛けるのを

見届けると俺はタバコを取り出し、深く吸い込むと空を見上げて大きく吐いた。

そして声を上げて笑うとその場を離れた。




夕方になるといつもの公園に出向いた。彼女は時間通りにやって来て

いつもの笑顔で俺に手を振った。

『そうだよこの笑顔は俺のものなんだよ。』

俺は車の中から手招きをすると彼女は寒そうに肩をすくめながら走って来た。

「おいで。」

俺は助手席に座ったばかりの彼女を抱き寄せて、きつく抱きしめ

そして車を移動させると人の目につかないところに車を停めた。

彼女は何も言わず、驚いたような表情を浮かべて俺を見た。

俺は彼女に覆い被さると唇を重ねた。目や耳や首すじ、あの男の匂いが

付いていないか確かめながら乱暴にキスをした。

「ちょっと待って、どうして‥どうしたの、達矢さんっ…」

彼女は動揺しながらも俺にされるがままに身体を揺らしていた。


『誰にも渡さない‥誰にも渡さない‥』

そう心の中で繰り返し呟きながら彼女の身体を俺で満たしていた。













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