~希望~
「いらっしゃいませー」
自動ドアが開くとあのコが入って来た。
いつも朝から来店するあの女の子。 顔もスタイルも俺好みだ。
いつも通りペットボトルの緑茶を手にお気に入りのシマに入って来て
目を細めながらひととおり台のデータをチェックすると決めた台に腰を下ろした。
今日も困り顔が可愛い、そして胸も大きい。
俺は監視カメラをズームしながらドキドキしていた。
「また勝たせてあげるからね〜」
俺はニヤニヤしながら特別な操作をした。
俺はアミューズメントホールの店長をしている。
彼女が常連客になってくれるまで勝たせ続けるつもりだ。
『ほら嬉しいだろ、楽しいだろ。』
しかし彼女は全然笑わない。 まあ、またそこが可愛いところでもある。
やがて彼女はスタッフを呼ぶと食事休憩を要求した。
「さて、俺も昼メシにするか。」
彼女は休憩札を確認すると店に併設されている食堂へと入って行った。
俺はスタッフの一人に彼女が何を食べているのか偵察に行かせた。
彼女は親子丼、俺はパーコー麺にした。 一生懸命に食べる姿がまた可愛い。
俺はまるでデートを楽しんでいるかのように一緒に行動した。
「ああ、もう帰るのか…」
時計に目をやると16時を10分過ぎたところだった。
彼女は大体いつもこの時間には切り上げる。どうしてだろう?
『今度つけて行ってみるか⁈』
この何気ないひとつの好奇心が
後に俺と彼女の人生を 大きく狂わせてしまおうとは
この時夢にも思っていなかったのだった。
「へえ、ここに住んでいるのか」
そこは銀行や郵便局、学校が歩いて行ける距離にあり
更には商店街へと続く橋が目の前にある 立地の良いマンションだった。
俺の方はまだ県外から引っ越して来たばかりで
会社から充てがわれたアパートで暮らしていた。
「もっと近くにいたいなあ。」
ヘルメットを被りアクセルをふかすとバス停の前を通り橋を下った。
今日も彼女は10時過ぎにやって来た。
ジーンズにTシャツ、長い髪を少しだけ上の方で結んでいる。
飾り気のないスタイルだが靴はスポーツブランドの物がお気に入り。
いつものように監視カメラ越しにチェックすると 俺は上着を脱ぎベストだけになった。
机の上に脚を投げ出すとタバコに火をつけた。
『俺のものにしたいなあ。』
なんとか彼女に近づける方法をぼんやりと考えていた。
「そうだ!」
画面に目をやると彼女がオレンジジュースを飲もうとストローに口をつけるところだった。
「待っててね」
そう呟くと天井に向けて大きく煙を吐いた。
1週間後の日曜日彼女はやって来た。
「待ってたよ」
俺は彼女の好きな機種のイベントを企画していた。
彼女はイベント開始時刻より少し遅れてやって来た。
小走りでシマに入ると奇跡的に1台だけ空いていた台に座り、ホッとした表情で打ち始めた。
俺はニヤリと笑って操作し始めた。
「今日は週末だから夜までいられるだろう⁈」
ひとしきり遊ばせてやると時計は21時を過ぎていた。
彼女はスタッフを呼び出すと胸の前で小さくバッテンをしてみせた。
「よし!」
彼女がカウンター前に並ぶと俺はスタッフの一人にインカムで指示した。
「護衛をつけましょうか?」
スタッフが彼女にそう告げると彼女は驚いたような表情で首をかしげ
戸惑いながら少し笑って首を横に振った。
「ちっ、ダメなのかよー」
事務所の中でワクワクしながら待機していた俺は思わずドアを蹴った。




