マリアと民
「お帰りなさいませ」
マリアとアリスが迎え入れてくれ今日の出来事を話す。
「その遺跡は使い物にならないと言うことなんですね」
マリアは少しだけ残念に思いながらも気持ちを切り替えたようでカラギュウム王家の話をしてくれる。
「かなり古い王家で進行軍には兵を出さず傍観していたと記憶しています。」
自分の国を滅ぼされたことを思い出しながらも顔色を変えずに話続ける。
「もし再興させた場合不可侵条約なりなんなりを結ぶと言うのも考慮に入れるべきかと思うが、やはり許せないかな」
私が聞くと首をふり、
「国を維持するにはそれも考えるべきでしょう。恨みだけでは国は成り立たないのですから」
「わかった、明日城へ呼ばれているので一緒に出向き提案と懐柔そして恫喝も考えてみよう。そうならないことを祈って、」
そう言うとまだ疲れは取れないようなのでアリスに任せて部屋へと戻った。
「ハル、明日衛星からナノイドを打ち出してくれ座標は非常脱出口があった奥に、地面だけを破壊する位で」
〈了解しました。夜中までに発射準備を完了します。〉
「それと万一のためマリアにナノイドでドレスを女王として相応しいものを、使った分は上からの補充をすれば良かろう」
そう言うとバックパックからナノイドが出てきてドレスを形作る。碧を基調として見る角度から紫に変化をするこの時代には無いものを作り終えてそれを持ち渡しに行くと、
「申し訳ございませんズイセツ様、マリア様はお疲れのご様子で就寝なされてしまっております。」
「気にしなくていい、これを明日着てくれと伝えてくれ」
私がドレスを渡すとその美しさと色が変わることに驚き、私が言うまで見とれていてようやく気がつくと顔を真っ赤にして、
「ももぅしわけございません、このようなのは始めてみたのでマリア様は喜ばれるでしょう。ありがとうございます。」
「そう言ってくれて嬉しい、あと何が必要になるかな城へいくのに」
アリスは少し考え、
「靴と装飾品をお願いできれば、急なので無理ならいいのですけど」
「明日の朝に用意をしておく」
私はそう言うと宝石を買うために夕方になりかけた町へと出掛けた。
「いらっしゃいませ、どの様な物をお探しで」
ふくよかな男の店主が宝石屋に入ると出迎えてくれる。
「紅い宝石を二つ、後は大きめの宝石を1つと同色で小さいのを見繕ってくれ」
「それでは紅いのは魔光色のルビーではいかがでしょうか魔物を退治したときの戦利品でございます。」
平らな小箱を開けると大小様々な大きさがあり、
〈ズイセツなかなか興味深いなこの石は脈動しているぞ、普通に見ると光の反射かと思われるが〉
「これは生きていると言うことか宝石が」
「お客様、いかがでしょうか」
私は手頃に強く脈動している宝石を二つ選び、ダイヤモンドのように透き通っている宝石も選び、今日貰った報酬から支払った。
「お客様、腕の良い細工師をご紹介しますがいかがでしょうか」
「自分でするからいいよ」
そう言うと驚かれながら納得したように、
「本職でしたかそれで良い物ばかりを選ばれたのですね」
お世辞なのかなんなのか私は日もくれた町へとでて宿へと歩き始めた。
まだ人通りも多く私はひとつ入った路地を歩く、
〈後方から数人の男達が走ってくる。〉
そう言われ私は振り返ると薄汚れた格好の男達四人が私の前に来ると、
「大人しく石と金を出せば命までは取らねえよ」
刃物をちらつかせながら真ん中の男が言う、
〈あの色は購入者の血と命を吸ってと言うことでしょうか、憶測ですが〉
珍しくハルが不確かなことを言うのを私は同意をするや刀を抜き様に真一文字に横に凪ぎ払う。少し後ろにいた男以外は刀をおさめると崩れ去り、私は男の前にたつと刃物を持つ手を握り締めると、
「雇い主のところへ連れていけ、ああなりたくなければな」
そう言うと男は言葉を発せず頷いてもと来た道を戻り宝石屋の裏口に到着した。
男は私の顔を見たので顎を動かして行動を促すとドアを最初は大きく後は小さく叩くのを繰り返すと、
「待っていろすぐ開けるから、しかしあの細工師と言うおと・・・」
ドアを開けて男の後ろに私がいるのに気がついたのか小さく悲鳴をあげて部屋の仲間で下がる。
「すいませんしくじりました」
男は主犯は宝石商であると言う言い方で中へと入り私も入ろうとするとハルが建物をスキャンした映像を表示して入っていった男の下に空洞があり、宝石商の足元にスイッチらしきものがあるのがわかった。
ゆっくりと入りながら両足がその仕掛けに乗る瞬間に横へと跳躍して、床が開き男だけが悲鳴をあげて吸い込まれていく。
「バカななんでその罠を、きさま同業者か」
私は少しだけ笑みを浮かべ刀を抜くと喉元へと突きつける。
「わかった。残りの宝石も渡そうそれで許してくれ金貨も返すし店にあるのも渡そう」
宝石商は口では色々なことを言うが目はまだ鋭く逆転を狙っているようで動こうとするので、
「一緒に落ちろ」
私は宝石商の襟首をつかみ先程男が落ちた床に転がしながら床のスイッチを作動させる。
「やめろ」
そういった瞬間宝石商の姿は消えて静かになった。
「さてどうするかだが」
〈研究対象としても軍資金の面からも慰謝料としてもらっても良いように思うが〉
ハルからの提案に同意してスキャンしたデータを元に隠し金庫を探してナノイドで仕掛けを開けると宝石や金貨をそして書類を取ると宿へと戻った。
「ハル、靴とイヤリング、ネックレスを作る。」
ナノイドが宝石を取り込んで形作る。私の考えたとおりであり、衛星通信を返してデータバンクからルブタンと言う名のハイヒールが写し出されそれを見ながらナノイドに指示を与えて完成させた。
翌朝アリスが取りに来たので渡すと宝石で飾られ赤と黒のハイヒールに目を奪われているようでほほを染めて見つめ続けている。
私はなにも言わずに様子を見ていたが動き出す気配がないので咳払いをすると顔をさらに赤くして一礼して戻っていった。
戦闘になることも意識して装備を整える。しばらくするとアリスが呼びに来たのでマリアの元へ顔を出すと気品漂う姿にしばらく目を奪われ、
「この様な素晴らしいものありがとうございます。」
「想像以上に美しくて声もでなかった。それでは戦いの場へ」
そう言い前日に宿で頼んでいた馬車が到着したとアリスが知らせてくれ1階へとマリアをエスコートする。
朝の食事の時間で騒がしい食堂が一瞬で静まりかえるとその中を通り抜け馬車へと乗った。
大通りを抜けて城へと到着して衛兵に名前を言うとそのまま中庭まで通してくれ下車する。マリアが姿を表すと近くにいた衛兵や騎士そして侍女も足を止めて見とれており案内役の者もその姿に見とれていた。
咳払いをしてようやく案内役が控えの間に通してくれそこで呼ばれるのを待っている。
「ズイセツ、私の考えていることを話しても問題はないのだなその方に迷惑をかける」
「気にしなくても良いです。最悪戦闘になったら守りますし威嚇が出来るように準備もしていますから」
そう言いながら先程衛星からのマスドライバーの準備が完了したことを知らされ何時でも対応出来るように準備はしている。
妻がいることを伝え謁見まで待っていると呼び出される。
私は黒いマントに鎧をつけた冒険者の格好でありマリアの引き立て役にもならないと思いながら謁見の間への大きな扉が開かれ、
「ズイセツ夫妻入室」
扉の横の男が大きく通る声で発言をする。左右にはそれぞれ貴族と文官武官が並んでおりマリアを見ると驚きと目線が釘付けになり国王も王子も王女も一言も発せず私達が並んで国王に立った状態で礼をしてもなにも言わない。
マリアが一歩前に出ると、
「アルタイル王国女王マリア・エルハザードにございます。」
そう言うとざわめき私達の斜め前にいた派手な衣服を着た黒髪の男が過敏に反応して、
「アルタイル王国は地図から消えている。公女殿下の恩人とはいえ愚弄すれば牢に入れるぞ」
「消えているのではなく消したのでしょう。貴殿方が」
マリアは感情を殺し透き通る声で返す。
「我らを言われもない言いがかりをするとは、衛兵捕らえよ」
「ホルス卿よ待て、客人として恩人として招いたのだ話を聞こうではないか」
国王がホルスと言う大臣をいさめる。
「それでエルハザードの名を名乗る者よ何を考えているのかな」
国王は顔色も表情も変えずマリアにたずねる。
「盟約を求めたい通商と不可侵、出来れば安全相互条約を」
そう言うのを見ながら私はハルに指示を出すと国王は、
「しかしホルス卿の言うとおり地図からは消えているがいかがかな」
「取り返した暁にはと言うことです。他国の裏切りで今は占領されていますが取り返します。」
そう言うとホルス卿が笑い、
「その方ら二人だけではないか戯れ事は大概にしろ」
「確かにズイセツ殿はオーパーツに詳しいと王子から聞いておるが他に何かあるのかな」
国王は私に聞いてきたので、
「今からそれを使った武器の1つをお見せしましょう。裏庭の大木の裏に今から爆発します。かなり揺れますが御安心ください。あと10秒9・・・」
私はカウントを開始して周囲の者がざわめくのもきにせず国王を見ていると大きな振動と衝撃音が謁見の間まで達して悲鳴と混乱を生じる。
私とマリア以外はこの状況に対応出来ずしばらくすると、
「至急のお知らせにございます。星降る庭に空から一条の光と共に何かが落下したようで大混乱でございます。負傷者などは今のところおりません。」
そう言うとホルス卿が、
「出鱈目な、どんなからくりを使ったか知らないが私には通用しないぞ」
「それではここにでも落とせばよろしいのでしょうか」
「なっ、きさま我々を殺すつもりだな衛兵」
「あなたが認めようとしないからです。何発落とせば納得されますかな」
「双方やめい大臣大人しくするように」
そう言いながら王子が王の元からおりてくると、
「ズイセツ殿申し訳ない。」
そう言って一礼して後ろを振り返り王の顔を見て頷いてからマリアに、
「お申しで了解しました。国再興の暁には同盟を結ぶこと了承しました。」
そう言って国王の隣に戻るとマリアが、
「ありがとうございます。両国の末長い繁栄を」
本来呼ばれたことに何も言及されず城を後にして宿へ戻ると、
「ズイセツ殿感謝します。」
「気にしなくてもいい私の目的も同じだからな、明日には出発する何かしらの動きがあるからなあの大臣にしろ今回のことを知った各国もしかり」
「早急だったと思われますか」
「遅かれ早かれと言うところだな、自国に対しては希望を持たせられるしな」
それだけ言うと私はボールを姿を消したまま警戒ように残して移動の馬車を予約をして王宮へと潜り込んだ。
マスドライバーから打ち出した耐熱耐圧の容器は大木以外を吹き飛ばしており兵器としての転用も十分可能とわかり私はすり鉢状になった落下地点の中心からナノイドの回収をして立ち去ろうとすると、
「ズイセツ殿ではないですかロイターです。いきなりですみません」
王子が木の影から現れる。光学免彩は機能しているが容器を取り出すときに気がついたのかと思い自分の迂闊さに眉をひそめながら黙っていると、
「大臣のように敵対するつもりもありません、1つだけお願いがあります。」
そう言われ周囲を確認して姿を表すと、
「それもテクノロジーなのですね、すばらしい」
「ロイター殿お願いとはなんでしょうか」
「私を旅のお供につれていってもらえないでしょうか」
「気軽に出れる身分とは思えないが」
ロイターは頷き、
「実は私には兄がいます。本来は兄が継ぐべきですが母親が侍女で私のように大貴族の後ろ楯も有りません」
「そして何より私は王子と言う地位よりもオーパーツと言うテクノロジーに興味がありズイセツ殿のそれを知りたいというのが私にはあります。勝手な事ですがお願いできませんでしょうか」
「来るなら構わないが命の保証もなし国にも迷惑がかかるがそれでも良いのなら」
「自分の身は自分で守ります。」
「なら明日早朝の馬車を予約をしている。」
「それに間に合うように行きます。」
そう言って別れて宿へと戻った。
翌朝、ロイターがどう来るのかと思いながら、
「マリア旅に一人増えた。来るかはわからないがな」
そう言って2台の待機している馬車にマリアとアリスが乗り込み出発の合図を受けて馬車が動き出す。ロイターの姿はなく街道を進んでいると後方から駆けてくる馬に乗ったロイターが現れた。
「お待たせして申し訳ない、父には了承を得たのですがさすがに堂々とでれば要らぬ揉め事も起きるかと思い場外で待っていました。」
そう言いながら自分の馬の1.5倍はある私の馬を見て驚きながら私の横に並んで進み始めた。
「このままイシスまでいきそこからは馬車がありませんが」
ロイターが聞いてくるので、
「馬車を購入してだろうな戦闘になるだろうし、大臣や各国との戦いも考慮にいれなければだがな」
私はそう言いながら衛星の修理が終われば楽だがしばらくはマスドライバーでの広範囲の攻撃を使うことになると思いながら王子からの情報を聞き考えた。
「しかし国王がよく旅を許したな」
「私の強い希望と同盟のこともあるでしょう。それにあれだけの武器を見せられ、城の防御魔法を無力化できる事を知りましたからお目付け役としてそばにいさせようと考えてでしょう。」
「そうか防御魔法の事を失念していた。ロイター城の防御魔法はどのくらいなのだ。」
「公八家の1つで歴史も古くエルフの援助も受けて完成させましたからねこれ以上は早々ないと思いますが」
私はこの世界の事を何も知らないと改めて思いながらよくしゃべるロイターに相づちをしながら旅を続けた。
10日ほど旅を続けていると前方から大きな馬車が10台、冒険者が二十人以上いる。
「あれは」
私は最近ロイターに色々聞くことが普通になっており何気無く聞くと、
「あの馬車の形から奴隷商人のものと思われます。」
私はそれだけ聞くとその事を忘れて次の村の宿へと到着するとマリアが厳しい顔をしているので聞いてみる。
「あれは我が国の民です。未だにやりたい放題なのですね。」
そう言われて気にしなくても良いのだろうが、
「助けたいのか」
そう聞くと口をきつく結んで頷く。
「ロイターあとは任せる。追い付くまでな」
それだけ言うと私はもと来た道を戻っていった。
「さてどうするかな」
徒歩で近づき少し考えてると近くにいた警戒に当たっている革の鎧をきた男に近づき後ろから口を塞ぐと命をもらう。男は最後まで何が起こったかもわからずようやく静かになったので次の男に向かう。
寝ていた冒険者はそのまま再び目をさますこともなくテントにいた商人二人を引きずり出すと、
「奴隷の首輪を外せ、ああなりたくなければ」
姿の見えない私に悲鳴をあげさらに外に出ると冷たくなった冒険者にさらに悲鳴を重ねる。
「おっお前は誰だ公証の奴隷商人に手を出すとは」
右側の太った商人がふりしぼるように声を出す。
「きさま達に殺された王国の亡霊だ、体も無くしきさま達に見せる事もかなわぬ」
そう言うと左側の男が悲鳴をあげて気絶してしまう。
「今さら出てきたとしても国はないのだ、大人しく立ち去ればこの事はなかったことにしてやろう」
この商人はなぜか強気であるがしらみ始めた空に早めに決着をつけたい私は男をつりあげ痛めつけると、
「わかったわかったから離してくれ」
そう言われて離すと男はぶつぶつと言いながら振り返り、
「わが神ミルレス、命なき者を浄化したまえ」
そう唱えて私の方に腕をつき出すと光が放射される。
私も包まれるが幽体ではないので特に何もなく、
「そんなもの我らが受けた恥辱には影響はない、次に変なことをすれば命はないぞ」
商人は声が聞こえたので驚き腰砕けになりながら私に引きずられ馬車の鍵を明け次々と解放して首輪も外させる。私は中年の疲れた顔だが高位な感じの男に近づき、
「マリア王女が祖国解放のため戻っている。国へ戻りその時を待つがいい」
「マリア様がですか、私は内務大臣のオークスと申します。姫は何処におられますか」
「もどっているとしか言えない、とにかく戻って時を待て」
それだけ言うと離れて動き始めるまで様子を見ていると冒険者から武器と防具を剥ぎ取り森へ隠すと馬車で戻り始めたのを確認して私もマリアお追いかけた。
商人は後日他の商隊に助けられ神聖魔法もきかない亡霊に襲われたと壊れた精神状態でふれまわった。
合流後イシスに到着をする。小さい村のはずだがにぎわっており話を聞くと奴隷市で賑わっていると言うことで情報を集めると百人以上いると言うことで宿へと戻るとマリアが、
「国の人々がどれ程奴隷となったのかもうわかりません」
「当然助けるのだろう」
そう言うと頷き、
「ズイセツ何度もですがお願いします。」
そう言われて私は今回試したいことがあって奴隷市に向かい取りまとめをしている商人に面会を求めた。
「どの様なご用件でしょうか、奴隷市なら明後日開催されますが奴隷も数日後にも到着しますし」
「今いる奴隷を全て買い取りたい金は500でどうだ」
私はいきなり金貨の入った全財産に近い袋をテーブルにのせる。
「いきなりいわれましても公証市場で購入していただかなければ困ります。」
そう言われて私はナノイドを商人に送り込みな、
「一人一人だと面倒なのでこうしてきたのだ、新しい奴隷も来るなら問題あるまい。」
「我々にも法がありまして前に渡せばおとがめが有りますし」
「その辺は役人に付け届けすれば問題ないと思うが」
「そこまで言われるのでしたら」
「奴隷は村の外れに集めさせろ」
「わかりました。それでは変更の手続きを」
そう言いながら売買契約書と移譲の書類を取り出してきて数人を呼んで金貨を数えさせる。
「奴隷135人を金貨525枚で、サインをお願いします。」
そう言って売買を終えると宿へ戻った。
「マリア来てくれ」
そう言ってアリスとロイターの四人で村外れにいくと商人が奴隷達を連れてくる。
「そちら様が、ありがとうございます。今後もご贔屓に」
ロイターとマリアを私の雇い主と思ったのか奴隷商人は挨拶をして村へと戻っていった。
「ズイセツこれからどうしますか」
「マリアはどうしたい」
「ここで旗揚げをして国へと入りたいのですが」
「それはいいが武器も軍資金も食糧もないが」
「それは目の前に戻っていっています。」
奴隷商人の背中を見ている。
「わかった。明日新しい奴隷もくるそうだ、その時に事を起こそう」
ロイターは何か言いたそうだったがマリアの復讐の鬼となっている様子を見て黙っているしかなかった。
私は村の武器屋や雑貨屋などをまわりナノイドを店主に仕込んでいく。その夜はマリア達は戻ってこず、私は静まり返った奴隷商人の家に潜り込んだ。
「お金を取り返しにこられましたかな」
私が来るのを待っていたように商人と数人の男達が待ち構えており、
「少し前に奴隷商人が襲われたと聞いて警戒していたのですよ」
商人は鼻で笑いながら私を見つめる。
〈ハルあの男を乗っ取れ〉
そう言いながら見ていると目を一瞬大きく見開き、
「いや、そう言うわけではないのですね一緒に酒でもいかがですかな」
急にかわった商人に護衛の男達は驚いたが重ねて指示を受けて退出した。
「昼間の金を含め全て渡すように」
そう指示を出して金貨やその他の書類を回収して寝るように指示を出して外に出た。
男達が外で待っており、私は何か言おうとしている彼らに光での催眠術を行うと
「雑貨屋と武器向かい食糧や武器等を全て村外れに運び込め」
それだけ言うと武器屋と雑貨屋の主人をコントロールして男達に品物を引き渡し馬車に積むように指示を与えて村外れに戻った。
「これは」
次々と運び込まれる品物に驚きながら食事や戦いの準備をさせる。
「我々にも装備して戦えと言われるのですか」
マリアのそばにいる数人の男が剣とマリアを見ながら聞いてくる。マリアがこちらを見るので、
「自由を得たいなら対価を払わなければならない奴隷でいたいなら今からでもそうしろ」
それだけ言うと私はマリアの取り巻きから離れてハルに聞く、
「こちらに向かっている奴隷商人は今どこにいる。」
〈ここから30km程のところで夜営をしております。馬車が24台かなりの大商隊ですねこの人数ではきついと思われますが〉
「それはこの弓で遠距離からと、小さなタマゴ位のを連続して馬車の周囲に撃ちだしてくれ」
〈了解しました。馬車を傷つけない程度に周囲の護衛を無力化します。シュミュレートした状況での衝撃波での範囲と無力効果となります。〉
「準備を頼む」
それだけ言うと私は切り株を背に寝転んだ。
「戦ったことなんてないのに」
「なぜこんなことをしなければならないのか」
「奴隷でいたほうが生きられたかもしれない」
「あの男はなんだ姫様のそばで言いたい放題いいおって」
「ここで勝てもなんにも変わらない」
「父さん母さん助けて」
「姫様が居たところで何が変わるのか、私達を守れなかったのに」
次々と小さい声で不満を呟く、
「負け犬は所詮負け犬というところかな」
「私達が守れなかった結果です。」
「自国の民には優しいな」
珍しくため息をついたマリアは自分の民を鼓舞しにいき私は商隊が来る方向に歩き始めた。
遠くから馬車が進んでくる。徐々に近づき私はハルからの情報を表示させながら砲撃ポイントを指示して初弾を連続して撃せた。
私が弓を構えていると通常の弓の射程距離の手前で馬車が止まり護衛の冒険者がおりて周囲の確認と6人のパーティがこちらに動き始める。
私はしぼった弓を放つ。次の瞬間ローブを着た男の眉間を貫き倒れ、矢継ぎ早に6本の矢で全ての冒険者を仕留め悲鳴と混乱が起きる。しかし手慣れているのかすぐに落ち着きを取り戻して盾を構えた戦士が並んで歩き始めるのを見て、
「仲間を助けよ突撃」
そうマリアが言うと泣きそうな顔で悲鳴をあげて私を追い越していく。
その瞬間に上空から唸りをあげて前方から後方に向け次々と着弾をして砂ぼこりと衝撃波が起こる。悲鳴はかきけされ私はマントで砂ぼこりといしくれを防いでようやく視界が確保された。
「助けて、何が起きたの」
護衛で立っている者はおらずうめき声が聞こえてくる。私は振り向き、
「制圧せよ、何時までぼーっと見てるんだ」
後ろで驚いてる男達に言うとおっかなびっくりで剣を構え進む、私は弓を持ち立ち上がり反撃しようとする者や逃亡をはかる者を弓矢で止めを指す。
「きさま達ビッグマン様の商隊を襲うとは討伐をされるぞ」
そんな騒いでる男の体を気絶させると担ぎ上げマリアの前に放り投げ水を頭にぶっかける。
「ぐわ、誰だ貴様はあの小娘、あの夜が忘れずに来たのか、こんなことをせずとも言ってくれば良いものを」
そう言いながら立とうとするのを再度転がし全ての関節を外していくと、
「あの夜の事は一生忘れない、そう一生」
そう言いながら私の腰のものを抜いて突きつけ、
「わが民を解放せよ、そうすれば考えよう。」
そう冷たくいい放ちビッグマンの腰の鞄から契約書と移譲の書類を取り出す。
サインができるようにしたが拒む、生き残るにはサインをしないことなのだから尚更であり、首をふって拒否をするので私はナノイドをビックマンの体に少しだけかけると支配してサインを書かせ支配を解いて呆然とさせる。
私はそのまま立ち去り馬車の方へと向かい悲鳴だけが耳に残る。
馬車の横では護衛の冒険者を拘束し1ヶ所に集めた男達はもて余しぎみで私が来るのを待っており、
「我々は冒険者だ依頼を受けて仕事をしたまでだ解放してくれ」
泥だらけの顔を私に向けてくる。
「仕事で奴隷を集めてきたということだな、親子供を引き離し自由を奪う。」
そう言うと奴隷であった男達は厳しい顔つきになりさらにあおる言葉を伝えると徐々に近づき、冒険者の懇願と泣き叫ぶ声が聞こえる。
「次の戦いのために装備は確保しておくように、それとこの首輪をつければ奴隷としてあつかえるから」
そう言うと絶望的な顔をして私を見上げた冒険者をおいて村へと戻った。
「何があったのですか、大きな音と共に砂ぼこりが上がったようですが」
「何かが上から落ちてきたらしい、ところで村長この村が奴隷市となっているがどう思っている。」
「そうですね、お金をおとしていただいで感謝しております。こんな何もない村が潤うのですから。」
そう言っていると武器屋と雑貨屋の親父が騒いで私を指差しながら男達と来る。
「この男に店の品物を渡したんだな」
「そうですよ、店主に指示されて運んだんです。」
私と村長の前までくると、
「店の品物を盗まれたのですすべて」
「しかし指示を出したと冒険者も言っておられるようですが」
「私はそんなことはしていない訴える。」
そう言ってこの国では裁判官を神官が兼ねているので村でも一番大きくきれいな建物へと向かう。
村長はすまなそうな顔で私を促して後についていった。
「ですから私はそんなことを言った覚えはないんです。」
白い服と冠をかぶった神官に訴えている。
「しかし指示したとも言われているようですね」
そう言っているとその神官の後ろで雑貨屋の親父が聞こえないような小声で、
「戻った品物の半分を金貨でお支払います。」
そう聞こえ神官は、
「冒険者よ、それぞれの店の店主がこう言っている返還してはどうかな」
私は黙って神官を見つめると、
「なにか言いなさい、神の身許で受け入れれば祝福も受けられますぞ」
「1つ聞きたいのだが一方的な理由で国を滅ぼし奴隷に落とす手助けを行っているこの村のことどう思うか」
私が関係ないことを言うので一瞬つまったが神官は、
「そのようなことを聞いているのではない、だいたい滅ぼされる側に問題があったと聞く神の御心のままにです。それで返すのか返さぬのか」
そう言った瞬間に神官やその他のヒューマンを吹き飛ばし気絶している間に全員に奴隷契約の首輪をつけていき最後に付属の紙に記入をすると光ロックされた。
外へ出ると奴隷商人の馬車から助け出された人々が村へ入ってきて騒ぎになっている。私を見つけマリアがきたので、
「村人を広場に集めさせてくれ」
そう言って近くにあった水桶を持って神官の元に戻り水をかけて目を冷まさせた。
「これは神官に対しなんと言うことを破門だ貴様は破門だ」
そう言われたので首輪の機能である喋らせることが出来ない状態にしてもう1つの機能であるショックを与えて村の広場へ連れていく。不安そうに見つめている村人の前に神官達を連れていくと騒ぎになるが私は、
「神官からのお言葉だ奴隷に落とされる側が問題だと言うことだ、なのでここの村人は奴隷として扱わせていただく。」
そう言うと村人もだがマリアの周りの男達も驚いており、
「元々はあなた方が奴隷として売られそれで村人は潤っていたのだから逆になっても良心は痛むまい」
私は毒舌を吐きながら男達が自分達につけられていた奴隷の首輪を襲ってつけ始めていく、
「しかしこんなことをしてもよろしいのでしょうか、神官もおられますし」
「自分の国を滅ぼされ家族を奴隷にされてもよいと言うことなのだな、なれば自分のその手に持っている首輪をつければいい」
そう言うと男はしどろもどろになる。
「薄っぺらい偽善で言うなら体を張った覚悟を見せろ出なければ大人しく従え」
マリアも頷き男は下がっていった。
「これからどうする。」
私はあえて聞くと、
「このまま祖国へ向かいます。まだ国内には侵入してきた騎士団が居座っていると奴隷商人からの情報ですので」
「それでは準備が整い次第進軍をしよう。」
私の目的は黒い球体を調べることだが、肩入れしすぎていると思いつつ何かをしようと言うきにもなり始めていた。