レッツパーティー
翌日もあれだけ飲んだにもかかわらず二日酔いにもならず私は起きる。
一階へ降りると昨日の騒ぎが嘘のように静まり返り私はテーブルにつく。
女将さんがしばらくすると朝食を運んできて、私は昨日のテーブルの残骸を指差すと、
「あれはこのままにしておくよ」
そう笑うと肉団子と野菜がてんこ盛りになったスープと皿に盛られたパンが出てくる。
胡椒が利いておりかなり辛いが美味しく女将さんにおかわりをすすめられたのでさらにもう2杯おかわりしてお腹がふくれる。
部屋に戻り装備を担ぐとギルドへと向かう。ギルドにはドワーフがあふれかえり汗からでるアルコールの匂いにむせそうになる。
何をしようかとカウンターで考えていると肩をたたかれ振り向くと冒険者のパーティーが立っており、リーダーらしき戦斧を背中に背負った戦士が、
「昨日は楽しかった。それを見越して依頼を受けるのに我々に加わらないか」
そう言われ、
「記憶がないので迷惑をかける部分があると思うがよろしく。」
そう言って必要な物得たものは折半、高価なものはその時にと言うことになり出発出発した。
リーダーは戦士でガスであり、もう一人戦士でブルズ、戦いの神の僧侶であるコンロッド、盗賊であるルビンスキー、魔法使いで紅一点であるミルレス、もう一人の魔法使いであるフォーゲル、そして荷役で若いドワーフのピノ、フェイグル、アマリスの3人で私をあわせると10人のパーティーであり6人パーティーじゃないんだと思いながら準備された馬車に乗り込み出発する。
今回は新しく見つけられた旧世界の遺物であり、丘の途中で見つかりその探索を受けたと言うことである。
冒険に期待を込めながらパーティーの仲間と話をしてすごし、野営の立ち番をしているときに一緒に起きていたコンロッドから、
「お主は何の神を信じておる。ヒューマンだから至高神か」
そう言われ私は首をふる。
「そうか、至高神は古くから有るようだがヒューマンのみの平等でしかないからな」
そうつぶやく、ようやく交代の時間となり馬車の中で寝てしまう。朝はスープに肉と少しの野菜が入っておりなかなか美味しい、馬車に数日揺られると山を望む池がありその横に目的の丘があった。
池のたもとでキャンプを荷役の3人が設置し始め、7人で入り口を確認しにいく。
何度か別のパーティーが依頼を受けていたが入り口が指示されたところになく達成できずにいるらしく今回も指定された所に行ったが見当たらない。
ルビンスキーが色々調べているがその痕跡がないといい、悪態をつきながらキャンプへと戻る。私はもう少し調べるとガスに言うとエックス線や赤外線等を使いながら調べていると岩の向こうにトンネルがあり岩は何かの信号があれば動くと言うことで、
〈ハル、この岩を開ける信号なんとかなるかな〉
〈ズイセツ、ナノイドを潜り込ませてみます。隙間の間にナノイドをひとつまみ落としてください。〉
そう言われ腰のユニットからひとつまみ落とすと、翌日には開けておきますとハルが言うのでキャンプへ戻り夕食を済ませ立ち番を行い就寝した。
翌日早朝夢の中でハルに起こされる。
〈開ける準備が整いました。中は我々の文明が滅んだあとにもう一度新たにたった文明でもう一度滅んだ遺跡です。文明で言うなら機械が発達した近代というというところでしょうか、電源を一時的に復活させましたがそうはもちません。それと内部は初期のバイオの研究所であり注意してください。〉
そう言うと地響きと共に騒ぎが聞こえ馬車から降りると、岩が移動しておりぽっかり穴が開いていてパーティーの面々はのぞきこんでる。
直ぐに朝食を食べると準備を整え7人と荷役2人で潜ることになった。
「前衛は私とブルズそしてズイセツでいく、まだ連携がうまくいかないかもしれないが頼むぞ」
そう言うとランタンに灯をともすと進んでいく、中はすでに朽ち果てていたが通路はしっかりしている。進んでいくと微かな音がするとルビンスキーが、
「音が近づいてくる。4つ」
そう言うと前衛はランタンのシャッターを閉めて荷役の二人からの光源にかえる。
私も刀を抜きナイトビジョンに切り替えて暗闇を見ていると確かに4つの動きが見えてくる。
後ろではコンロッドが祝福のをかけてくれるが、
〈以上発生、体の各部分が熱のようなものを帯びており詳細は不明〉
そう言われたので、
〈これは後ろの僧侶からの戦意高揚の祝福だ、機能に問題がなければ気にしないでいいよ〉
そう言いながら暗闇から出てくる敵を見つめる。
バルミウム並みの大きさであり、人のかたちをしているが臭いがだんだんひどくなっていく、私は顔の表面に透明なマスクを形成させるとその理由がわかる。そう腐っているようでゾンビと言っていい巨体が見えてくる。
あまりの臭さで後ろでは胃のなかを戻してしまっている様子で、コンロッドが後で祈りを始めゾンビの動きが緩慢になりはじめ、感心しているとガスとブルズが呻いて吐き出す。
〈臭いではなく何かが精神をおかし始めております。早めに対応しないと〉
そう言われ私は一気に走りだし巨体のゾンビに攻撃を開始する。ゾンビは腕を振り上げふり下ろすが私の速度についていけずに私の後方の床を叩きつけ、私は次々と足首を切り落として走り抜ける。
走り抜けるとすぐ折り返して倒した2体はほっておき残りの2体へ走り抜けると大きな音と共に崩れ落ちる。
一番手前の片足と両手で体を持ち上げるゾンビに走り、振り上げられた腕を盾で受け流しながらもう1つの支えている手首を切り落とし顔がこちらに落ちてきたのを首を両断して倒す。
残りも単調な攻撃をかいくぐり同じように首を切り落としていく。
パーティーの元へ戻ると体調が優れないので私はガスとブルズを担ぎ上げ荷役の二人がそれぞれを抱くと、コンロッドが魔法使いを担いで一度キャンプへと退却した。
「すまない助かった。あのまま全滅するところだった。」
そうガスが謝り皆も私に感謝する。
「私が鈍感だったのであの気持ち悪さに耐えられたんですよ、しかしあの腐ったものはなんでしょうか」
そう聞くと皆始めてみたと口々に言う。
〈ハル、あれはなんだったのかな〉
〈予測ですが、実験体が容器で残っていて私の発電により一時的に全体の電源が復活して出てきたのかもしれません〉
〈それってまだ出てくると言うことかい〉
〈その可能性はかなり有ります。〉
そう言われ穴の入り口を見張っているここに残っていた荷役のアマリスをみた。
私は、
「あの腐ったのがまだ出てくるならここもですけど危険ですね、見張っているのはいいですが対応を考えないと」
ガスはコンロッドが薬草を煎じた飲み物をため息をつきながら飲んで、
「あれがまた続くなら戦うのは無理と言っていい、何かいい知恵はあるか」
そう皆に聞くが沈黙してしまう。
「私が偵察してきます。どのくらいの深さかわかりませんが三日して戻らなければ町へ戻っていいです。」
そう言うとガスは、
「しかし仲間を見捨てるわけには」
「ここを調査するにはこれしかないと思います。私は気にしませんので」
そう言って立ち上がり中へと入ることにして今回は自分のリュックを担いで仲間に挨拶して、穴へ向かった。
アマリスに手で挨拶して中へはいる。
マスクをして入り口から中が見えなくなるところで光学迷彩を作動させナイトビジョンを働かせると進む、所々にナノイドの極小アンテナを設置してハルとの連絡を途絶えさせないようにする。通路は傾斜し始めると前方から動くものがみえ犬と思われるゾンビが走ってくる。私は私に気がつかないゾンビを通りすぎる順番に首を両断していき10頭数えるとようやく動くものは居なくなった。
進むと大きな縦穴が開いた場所にでる。
〈これってあれICBMだっけその穴かな〉
〈確定はできませんがその可能性は高いと思います。その跡地が使われたと言うことも考えられます。〉
ハルの考えを考えながら下へ降りる壁沿いの傾斜した道を見つけ下っていく。
かなり深く外周を回り込みながら進んでいくと途中で通路だったであろう穴が続いており入っていく、
〈ハル、電気が回復したと言っていたが施設は無かったようだが〉
〈推測ですが部屋が密閉されてそのままで残っている場所があると推測します。〉
〈かなりの時間がたっているから朽ち果てているはずじゃないかな〉
〈それについては大気中の不明物質が原因と思われます。私の論理では理解できないことが多すぎます。〉
そう言われまあそのうちかなと思いながら通路を歩いていく、X線で通路を見ながら歩いていくといくつかの空間がある場所にたどり着く。
壁を叩いてみると手が向こう側に抜けてしまい何度か繰り返し通り抜けられるほどに穴が開いた。
中に入ると金属などは形をとどめておらずガラスの容器は残っていたが割れている。暗闇の中色々探してみたがめぼしいものはなく他の部屋も同様であり、また通路を戻ると縦穴の外周を下り始める。
底に到着すると左右に通路が続いておりまずは右側からと入っていく特に見るべき物もなく戻り大きな横穴のある方に入っていく、すぐに突き当たり中は部屋があると表示しており私は手で押してみるがびくともしない、いきなりハルが、
〈この中は構造上崩壊していないようです。入るにはナノイドを使いましょう。〉
そう言われポットからひとつまみ取ると壁の下に置いた。ナノイドは結合すると隙間に消えていく、
〈不明な物質のためか密閉されており入れる余地はなさそうです。どうされますか〉
そう言われ表面の土を取り除くとまだ綺麗な金属が露出して、
〈この金属は変異しております。元はスチール製ですが錆びも劣化もしておりません、原因は不明物質と思われます。〉
そう言われ拳で軽く叩くと澄んだ音がする。私は刀を抜くと切りつけてみるが綺麗に跳ね返されキズ1つついておらず、どうしたものかと考えながら
〈ハル、信号を送って開けられないか〉
〈了解、しばらくお待ちください。〉
そう言われ待っている間に食事と水を飲んで少しだけ眠ることにして、ハルに警戒を頼み寝てしまった。