メネシス
「おかあさんどこいったの」
北に抜ける街道は避難民であふれかえり混乱で前になかなか進まず、はぐれた家族を探して声を上げている。
私はその中に紛れ込み進み続けており、魔族や盗賊にいつ襲われるか不安な顔で進み続けると二日目の夕方に前を進んでいた馬車や人の列が教われた。
傍観することも考えたが新しくなった体を馴染ませるためこちらに迫る盗賊を迎撃した。
ナノイドの量が足らないため以前の30%ほどしか力がでないが人並みよりは全然パワーがあり、スピードとパワーで圧倒した。
「助けてくれ」
力任せに盗賊のショートソードをはね飛ばし迫ると命乞いをしてきたが袈裟懸けに切り裂く、マハラジャの選んでくれたバスタードソードはなかなかの逸品なのか折れたりせず盗賊を倒していった。
「ちっわりがあわねえや、撤退だ」
盗賊が声を上げると倒れた仲間を捨てて逃げ出していった。体の機能はまだしっくりこずハルに調整を頼まないとと思いながら馬に戻り進むことにして道を外れ前へと進む。
襲われた馬車の周囲には襲われた難民が倒れておりその荷物を他の難民が奪い合っておりひどい有り様で通過できずにいた。
「権備使が着たぞ」
その声と共に略奪していた民は蜘蛛の子を散らすように散っていく、しかし何処から現れたか黄色い旗をたて黄色い布を頭に巻いた兵士が現れ次々と捕らえていった。
「抵抗はやめよ、神の御意志である」
馬に乗った騎士が指図をして略奪した者を数珠繋ぎにして馬車と一緒に引き立てていく、家族なのだろうか涙をながして見つめておりその中の一人が、
「魔族や盗賊に襲われても何もしなかったくせにこんな時だけ出てくるなんて」
そう叫ぶや騎士が捕らえるように指示をして向かい女性を捕まえる。
「とうちゃん、母ちゃんを返せ」
子供なのか二人が出てきて石を投げつけると怒った兵士が槍で刺し殺す。悲鳴と避難の声が上がり兵士や騎士に向けて石が投げつけられ兵士も応戦する。民は盗賊たちが使っていた武器をひろい応戦をして収拾がつかなくなっていきとばっちりを受ける前に迂回をしようかと道を探していると、
「双方手を引きなさい」
またもや声が上がり白地に赤いラインの入った鎧を着た数人の騎士と兵士が割り込んできた。
先頭にはほっそりとした顔つきの女性が権備使と民の間に割り込み、
「魔族の侵攻が続いていると言うのに争っている場合か」
そう言うと黄色い騎士の一人が、
「皇女殿下、彼らは略奪を行いましてございます」
「皆ぎりぎりでやっておるのだ、その方たちは神に使える身であろう、ここは良いから内務卿の後を追って侵攻に備えることが急務なはずです」
そう言われ民をにらむと、
「任せます」
そう言って掻き分けながら行ってしまった。
「皆も魔族が迫っている。後方の砦では我らが食い止めているがいつ破られるかもわからない。急ぐように」
そう言って急がせ兵士には片付けを命じているとこちらにやって来た。
「馬上の者、身分をたずねたい」
フードをかぶっているため怪しいと思われた様だが少しだけ紫がかった肌を見せるのを躊躇していると、
「この人は盗賊がこちらに着たときに一人でここに倒れている盗賊を倒したお方です」
横から恰幅のよい中年の女性が出てきて言ってくれる。
「冒険者でズイセツと言います。すいませんが顔は戦いで怪我をおってしまい見せられぬ物なのでご容赦ください」
私は久しぶりに使う冒険者の証を見せると皇女は納得して、
「ロイスレーデンベルグ神聖皇国皇女マリア・ディ・エーレンベルグともうします。我が民を助けていただき礼をもうします。よろしければ報酬を支払うのでこのまま護衛をお願いしてもよろしいでしょうか」
思わず依頼を伝えられ断りたかったが国を抜けて北に向かうにはつてがあった方が良いかなと言うことと、民に懇願をする目を向けられたので頷くしかなかった。
「依頼書に金貨そして通行書だ」
皇女がその場でしたためた書類と金貨が渡され、
「次のバストールまでできうる限り民を助けてやってくれお願いする。書類は再発行できぬから気をつけてくれ」
そう言うと先へと馬を走らせ行ってしまった。
「兄ちゃん頼むよ」
先程口添えをしてくれたおばさんに声をかけられ頷き盗賊の置いていった武器から弓と矢を集めてもらい出発した。
センサーは使えるので広範囲で動くものだけを表示する。移動方向がこちらで真っ直ぐ向かってきて止まった物に向けて馬を走らせ弓を構えて撃ち込み突撃する。半数は動物で夕食の足しになり、半分は盗賊で偵察にきたと思われ知らせを送られる前に仕留めていった。
「すごいね、盗賊のついでに鹿やウサギを取ってくるなんて」
おばさんは私が手渡す獲物を喜びながら受けとり夕食にと皆で分けていく、4日ほどでバストールと言う所には到着できると説明してくれ鹿の肉が入ったスープを飲みながら衛星の機能回復を祈った。
翌日も隊列を組んで進んでおり、先へ急ぎたいが我慢するしかなかった。
空いた時間はハルとの再接続を衛星経由で私が最初にいた宇宙船と取ろうとしたが衛星のせいなのかうまくいかず衛星の機能も未だに修復が完了しない。
避難民は疲れており怪我や病気の者は亡くなったりしており悲しみがただよう。私は必要以上に関わらないため先頭にたって進むか盗賊を駆るために走り回った。
「ご苦労様だよ、護衛についてくれてから盗賊や獣に襲われることもなく進んでこれたのはあんただって言うことは皆感謝しているよ」
夕食を持ってきてくれた世話好きの女性に言われ気恥ずかしいが頷くしかなかった。
おばさんは横に座ると色々言ってくる。ちりじりになった家族のことや、戦争が始まる前の生活のことなどを一方的に話て、
「後三日頼んだわよ」
背中を叩いていってしまった。
翌日も狩りを続ける。子供たちも余裕が出てきたのか私が矢を命中させるとそこに走っていき獲物なら食用に解体して、盗賊なら身ぐるみをはいで嬉しそうに凱旋してくる。
翌日に獲物を取りながら進むと左方向の森の中に集団がおり見張りが木上にいることがわかる。
「何もないように進み私が弓を放ったら馬車を横にして防御を、待ち伏せには私が切り込みます」
そう言って軽く馬を走らせ通りすぎる瞬間弓を構えて矢を放つ、
うまく当たったらしく悲鳴も上げずに落ちてくる盗賊を見ながら馬をおりて馬車の方向へ走らせるとナノイドの肉体にパワーとスピードを命令して森の中へ入っていった。
伏せている場所は茂みの向こうで私は後ろに回り込むとバスタードソードを抜いて切りまくる。
盗賊達は何が起きているか把握できずに次々と首を跳ねられ私はその真ん中に突き進み横凪ぎに斬り抜ける。50人はいたがすでに20人近くの首をはね返り血で赤くなり盗賊は私を見て悲鳴をあげ逃げようとしてお互いぶつかり首を跳ねられた。
「てめえ、子分をよくもやってくれたな」
頭なのか顔に大きな傷がある男が盗賊をかき分けながら飛び出してきたのでバスタードソードを真っ直ぐかまえ一気に突き入れた。
「なっ」
頭はソードで避けようとしたが私の力の方が全然上なのでそのまま体に突き刺さった。
「てめえ人間じゃねえな、剣闘士の中では無敗を誇った俺が一撃で、その力はなんだ」
私は顔を近づけ、
「お前の方が人造人間なんだよ、もといた人と呼ばれるのとは似ても似つかない」
それだけ言うとバスタードソードを捻り命を奪った。
他の盗賊はお頭が一撃で殺されるのを見て放心状態であり私はそのまま目を見ながら横一線に凪ぎ払っていった。
街道へ出ると馬車の向こうから赤く染まった私が出てくると悲鳴が上がり後ずさる。おばさんが後ろから慌てて出てきて水を持ってきてそう言いながら私の元へやって来た。
「守ってくれてありがとうよ、でもその姿は普通驚くから水で洗い流してあげるから」
そう言いながらローブを脱がして洗い流してくれる。
盗賊の戦利品を取りに行こうとする子供たちに一人だけ胸を貫かれている男が頭なのでそれを持っていけば報償金が貰えるだろうと言うと嬉しそうに頷いて行った。
しばらくすると森から叫び声と泣き声が起こり大人たちが慌てて森へ向かっていき戻ってくると、
「あんたが一人であれをやったのか」
私が頷くと驚き暴風ライネルを一撃でとはすごいと驚きながら戦利品を嬉しそうに馬車に積み込んでいった。
その夜は入れ替わりに立ち替わりに馬車の人々が酒を持ってきては注いでくれ飲んでいく、ナノイドの浄化機能を使ってアルコールを分離しナノイドのエネルギーとして取り込んで行くから悪くはないのだが、必要以上にかかわらない様にしているはずがこんなことになり困惑してしまう。
翌日は少し先行しながら食糧を狩っていくようにした。
バストールと言う城壁に囲まれた都市に到着する。右手には湖と左には畑が広がった侵攻が嘘のような状況に馬車の人々は静まりかえりながら城門へ向かった。
避難してきた住民が城門前にあふれており通行出来るようになるまで待っている。
私は先行して衛兵に皇女マリアの通行書を見せると預かると言われ私は拒否をした。衛兵は書類の提出を求めたが再発行できないものなので預り証を代わりにもらえなければ渡せないと言い、信用ならないかと言われたが私は首を横にふった。
私は馬車に戻ると直ぐにはどうこうできるわけではないので夜営の準備をさせ事態が好転しないかと思いながら数日待っていると、城内から衛兵と共に外へ出てきた文官らしき男が、
「身分の証明できるもの通行書を持っているものは集合せよ」
そう言われ私は馬車の代表と向かった。
「皇女殿下の通行書、話は聞いてある通って良いぞ」
そう言われたが依頼書を見せて、
「安全に送り届けると依頼されている。外ではいつ盗賊に襲われるかわからないから一緒にいれてほしい」
ライネルと言う盗賊の頭首だと革袋を渡すと困った顔をして話し合い許可を出してくれた。
依頼書にライネルの首、内務官サインを書いてくれ馬車と共に入場した。
私は中へはいるとギルドに向かい依頼書を見せてその場で登録と完了を行う。最後の首の名前を見るとカウンターのギルド職員は驚き少々お待ちをと言いながら部屋へと入っていった。
しばらくするとギルド長なのかガルネクと言うものが現れ首はどうしたと言われその内務官に渡したことを告げると確認するので明日来てくれと言われ慌てて出ていく、職員は何度も謝りながら宿は空きが少ないので紹介しますと言われお願いをした。
宿は輝く主よ祝福を亭であり宗教が深く浸透しているのを感じ信徒ではないので料金は高めだがギルドの紹介と言うことで割引をしてもらった。
時間があるので街を見て回ったが魔族が迫っているのが知らないのか他人事なのか楽しんでいる。私は衛星を呼び出し地形などを確認しようとしたがまだ修復が終わらずやきもきしながら部屋に戻り翌日まで寝て過ごした。
翌日ギルドへいくと奥へと通され、
「ギルド長のベルクトだ。あのライネルを一撃で倒しただと」
いきなり喰ってかかってきて職員に押さえられる。
深呼吸をしておちついたベルクトは椅子に座るように言いながら謝ってきた。
「1度戦って苦杯を舐めたからな、それを一撃とは奇襲か」
悔しいのか顔を赤くしながら聞いてくるので、
「正面からひと突き」
それを言うと驚きそして放心状態になり机の上に革の袋を置くと、
「討伐の報酬だ、累積でかなりあるからな」
そう言って机の上に置くと上を見上げそうか、そうかと何度も呟いているのを見ながら部屋から出た。
衛星の地図を使えないので北方に向かう道を聞くと一般では北に向かうには通行書がないとと言われ皇女マリアのを見せると驚き簡単な地図を渡してくれた。
馬に食糧を積み込み出発する。
「おや、もう出発するのかい冒険者は忙しいのかい。気をつけて行ってくるんだよあんたは一人じゃないんだよ忘れないでくれ」
正門前でおばさんにあってそう言ってくれなぜか素直に礼を言うと北方へと出発した。
街道にはいると整備されており馬は軽やかに進む、巡礼者が圧倒的に増えており途中で宿泊した村も巡礼者の宿は質素であり祈りの言葉が聞こえてくる。
このままもうひとつ大きな関をこえれば皇都バルハラでありさらに北へと向かうことになり侵攻がどの程度なのかと思いながらも入ってこない情報に苛立ちを感じながらひたすら進んだ。
切り立った山の間に道が続いており石組で作られた関があり通行書を見せるが身体検査や持ち物検査等が厳重に行われていく、巡礼者はたいした荷物もないので問題はないが商人などは馬車の中の荷物一つ一つを確認され問題があれば没収されたり連れていかれている。
私の番になり装備を見ていくとバスタードソードを見て衛兵はいぶかしがり騎士に見せると質問をしてきた。
「これは魔物との戦争で武器が壊れたので落ちていた武器を拾って使い続けている」
そう言うと頷きどうやら騎士が叙勲を受けるときに皇帝から与えられる物で騎士の名が入っているのを見せられた。
没収かと思っていると騎士は独身で身内がおらず私が拾って盗賊頭を討伐したのは神の御導きであるからそのまま保持してもよいと言われ通される。
ただし私の名前を刻まなければならないので指定の工房に持っていくようにと一言かいた紙を渡してくれた。
関を通過して下っていくと美しい景色が広がり始めてきた人々は立ち止まって動けない、大平原に大木が所々にあり美しい河が流れている。道も石畳でできており今までとは違うと言うことが認識できた。
半日ほどで皇都バルハラが見えてくる。
高い単独峰の山に見下ろすように中腹に城があり、そこから城壁が幾重にも重なり裾のに街が広がっており広大な規模に驚きながらさらに半日進み夕方にようやく入城できた。
「巡礼者はこちらに宿泊場所があります」
衛兵が信者を誘導していくと残ったのは私だけであり宿を探さないとと思っていると、
「巡礼者でない旅人、いや冒険者かい珍しいね皇都に入れるとは」
目の前に白い衣装に赤で刺繍をした中年の女性が現れる。
「泊まるところなんかありゃしないよ、外部からは巡礼者以外は関を通過することはできないんだからね」
私の顔をのぞきこみ、
「紫がかっているが顔は良い男だね、宿泊場所を提供するからついておいで」
一方的に話すと歩き始めいく場所がないのでついていった。
夕闇の中大通りを馬を引いて後についていく、人通りは夜になりつつあるので少ないが目の前の女性と同じような白い布を男女とも身に付けておりその他の格好の人々は見受けられなかった。
しばらくすると一軒の大きな白い家に到着する。他の町並みもすべて白い壁であり街すべてを多い尽くす圧迫感があった。
「何してるんだいお入り」
私は馬を馬をつなぐと家へとはいる。中には同じような服を着た男女がおり女性に頭を下げておりお客様に失礼の無いようにと言って一番奥の部屋に通された。
「空いてるところに座っておくれ、飲み物と食べ物は運ばせるからね」
テーブルがおいてあるソファーに旅の装備を下ろすと座る。
「自己紹介がまだだったね、北の百家のひとつクインツ家当主のマリア・クインツだよあんたは」
「ズイセツともうします。冒険者をしており北を見てみたいと思い旅をしている途中です」
四人目のマリアは私の顔をしばらく見て、
「ズイセツかい、ここまでよくこられたと言うかこの国の事を知らないと言うか、まあ知らないからこんなところまで来れたということだね」
何の事だかと思っていると食事が運ばれ装備は寝室に運び込ませとくよと言われ食べ始めた。
食べて一段落するとマリアは話始めた。
この国はひとつの宗教を信仰する国家で皇帝はいるがその上には北の百家と呼ばれる集団がおりそこから枢密院を選出して実際の国家運営をしている宗教国家である。
皇都バルハラから北は立ち入りが禁止されている地域であり北の百家のさらに枢密院のそれも限られたものしか入ることができない。
皇都にも信者しか通常は入ることができず冒険者は戦時の護衛で来るぐらいである。
今回神の怒りが発動したのだが魔族との戦争に破れたため表面上は静かだが周辺の兵を集めている。
何でこんな話をしたかと言うと、北方への護衛を依頼したいと言うことと魔族、それも上級の者の思念がまとわりついてるのを見つけたから色々聞こうと思った。
そう伝えられ今度は質問を受けた。
魔王はすべての国を殲滅するつもりで今は動いている。
これは魔王本人の意思ではなく先代の魔王の思念が起こしておりもとに戻れば不戦条約を結べなくもないが現状は無理だと考える。
私は以前は近くにいたが今は魔族ではないので魔王から狙われかねないので離れた。
北方に何かがあるのでそれを確認しにくつもりだ。
城内の黒い球体を見てみたい。
そう言うと、
「こっちがやり過ぎて魔王が反撃をしてきたが途中から殲滅戦となったことが気になったが理解した」
少しだけ疲れた顔をしたマリアはさらに、
「決定ではないが私が北方にいくので護衛を依頼したい。そうすれば入れるしな、ただこの城の黒い球体は30年に1度しかドアが開かないから無理だとおもうが」
そう言われてセキュリティーの関係だろうがハルの支援なしで開けることは難しかったのでハルが復活するまで保留とするしかなかった。
「護衛の依頼を受けましょう。それと何で声をかけてきたか」
と聞くと、
「残留思念に引かれたと言えば良いかな女二人の、罪な男だね」
口をほころばせ寝室へと案内するように指示をした。翌日からは信者ではないが何かと不都合があるので私も白い布を身に付けてマリアのあとに続いた。
白い街を抜け皇帝の住む城門を顔パスでマリアと共にぬけ他と同じような白い建物に入っていった。
天使の像などが飾ってあり奥に金属で出来たドアがありこの先が黒い球体がある場所と教えてくれる。私は何時ものように手を添えるとシステムにアクセスをしようとしたがやはりセキュリティーがかかっておりどのようにすれば良いかわからず、衛星のシステムを使おうとしたが修復が終わっていないのと通信状況が悪く諦めざる終えなかった。
「落胆した顔でうまくいかなかったようだね」
「アクセスするためのキーが今のところ不明でそれがわかれば何ですが」
「そうかい、まあおいおいだね。夕方に工房の者が訪ねてくるからそれまでは色々案内するよ」
城の中を色々見せてくれるが特に興味があるわけでもなく聞いていると、
「おや、クインツの女傑ではないか城に来るとは珍しい」
振り返ると長身の男をつれた若くマリアと同じ刺繍をしている男がこちらを見ておりマリアは、
「枢密院に入ったばかりの若造がこんな所で呼び止めるほど暇とは思えないね」
「ごもっとも、ガストン家もようやく復帰できましたから忙しいですがクインツの当主たる貴女が奥へと向かうことを決められたと聞きましたので」
「相変わらず盗み聴きが好きなようだね。まあいいさ、護衛が出来たからね行ってみようと思ったんだよ」
ガストンの若者は私を見て、
「どこの馬の骨ともわからないやからを護衛にするとは落ちたものですね」
「ふん、前回の護衛は1000人を連れていき全滅させようやくその後ろの者をえたくせによく言うね」
マリアがそう言うので私は長身の男をスキャンしていく、骨格はヒューマンに似せてあるが骨はカーボン複合材、筋肉も人工の物で作られており私の今のからだの構成に近い。
「どうであろうと私は認められメネシスを与えられたと言うことですよ、まあ死なないようにせいぜい頑張ってください」
そう言うと行ってしまった。
「冒険者を大金で多数雇い聖地へと二百年ぶりに到達したのさ、冒険者は生き残った者はいなかったと聞いている」
それだけ言うと案内を切り上げ戻った。工房の者がやって来て名前を聴くと彫金で名前を刻んでいく、マリアは思いついたように、
「その武器に付与するまじないを刻ませようとおもうが良いかな」
私はナノイドでの武器が持てるまでの繋ぎと考えているので同意すると工房の者が3日ほど時間をくださいと言って帰っていった。
翌日は聖地の事が書いてある本を読むためにマリアから古代の言葉を習いシステムで最適化しながら覚えていく、
「しかしあんたも変わってるね、この言葉はなかなか覚えられないのにすぐ覚えていく、あのガストンの坊やも覚えきれずに投げ出したくらいだからね」
自分で覚えるなら確かに大変だが体のシステムにおぼえこませ翻訳していけば良い、ただしハルのサポートがないため使いずらい部分もあるので早い復活を望んだ。
数日後、
「皇帝のお呼びがかかった。どうやらガストンの坊やが色々吹き込んだらしくお前さんをつれてこいと、面倒なことだ」
そう言うと外に待たせていた馬車に乗り山をかけあがり城の中枢がある山の中腹へと向かった。
「クインツ公家来ていただき感謝する。聖地へと向かうと聞いて心配になってな、護衛のものがどの様なものか見てみたかった」
「気にする必要もないよ、まあ皇帝のお呼びがあれば臣下として参上するのが当たり前だがね」
そう言いながら私にローブの前を脱いで顔を出すように言うので言われた通りにした。
顔が紫がかっているため驚きとヒソヒソ話が起きる。
「そなたはあの時の」
そう言われて見ると皇女マリアが皇帝の横におり、
「マリアよあの者を知っておるのか」
「以前話した信者の護衛を行いあの剣闘士を倒したと報告にあったものです」
そう言うと皇帝は驚きこちらを見ると、
「そなたがあの不破ったものか、それなら実力は頷ける。そうかそうか」
皇帝は嬉しそうに頷きよほど嬉しかったのか報償金を私に急遽くれ、
「その方が一番強いと言うことだな、クインツ公家が向かうと言うのも頷ける」
そう言うと、
「お待ちください、わがメネシスが強いです。こないだの模擬戦で証明されたではないですか」
ガストン家当主が進み出てアピールする。マリアは気にしないが皇帝は少しだけ考え、
「どうかなクインツ公家、このものたちを闘わせてみては、無論刃無しの武器でだがどうかな」
マリアは私を見るので任せると頷くと午後から行われることとなり準備をする。
「まったく成り行きとはいえ面倒なことになったものだよ」
マリアはため息をついていると控え室は騎士であふれかえり装備を提供してくれる。
「前回メネシスにひどくやられたからね、騎士達は期待していると言うことさ」
騎士に渡されたプレートメイルを身に付け刃のつぶれたバスタードソードとナイトシールドを装備して闘技場へと向かった。
門が開かれ中にはいると直径100mの闘技場であり、この事を聞きつけた人々であふれかえっている。
反対側からはメネシスが黒い装具で身を固めておりお互い中央まで進んだ。
「はじめ」
声がかかりバスタードソードを片手で構える。先ずは30%程パワーをあげ飛び込む、首筋に打ち込むが簡単に跳ね返されそのパワーを表示すると60%まであわせてあげる。
お互いプレートメイルを装備しているため隙間を狙うがメネシスは関係なく叩きつけてきており金属音と破片が飛ぶ、ヒューマンの攻撃ならこんなことはないのだろうがお互いそうでない者であり邪魔な部分はベルトのバックルを外して捨てていった。
何かをしてくるかと思ったがどうやらメネシスの刃は潰されておらずそれも相まって金属が削られていき、気がついた騎士達が騒ぎはじめていた。
それをよそに自分的には落ち着いておりなぜかと思っているとメネシスは振り回しているだけと言うことがわかる。足さばきもバスタードソードでの受け流し、技の多才さもなくパワーとスピードで圧倒的に押しきってきているだけで私はただ受け流しているが後ろには一歩たりとも下がらずにいた。
次にきた攻撃を受け流しつつ水平にバスタードソードを繰り出し連撃で関節に突き刺しにいく、一回毎に10%ずつパワーをあげていきメネシスが遅れた瞬間懐に入り込み片手でメネシスの腕をつかむと一本背負いで地面に叩きつけた。
素早く立ち上がるとメネシスは仰向けで驚きながらこちらを見ており私は皇帝の席を見ると前に座っているガストン家当主が怒りながらメネシスを罵倒しておりまだ終わらないと言うことを知らせる。
メネシスは破壊されたプレートメイルを脱ぎ捨てバスタードソードをかまえると切りつけてくる。私はフルパワーのまま心臓部分に突き入れると刃が潰してあるとはいえカーボン複合材の皮を切り裂き骨の間をぬって心臓を貫いた。
メネシスの顔が私を見下ろしており、
「これでようやく解放されます。兄弟によろしく」
それだけ言うと崩れさった。
闘技場は静まりかえりしばらくすると皇帝が勝利宣言を行う、ガストン家とクインツ公家の当主が降りてきて、
「つかえないやつ、それと殺すのはルール違反だ負けと認められない」
そう言うのでメネシスのバスタードソードを拾うと喉元へ突きつけ、
「刃が潰して無いのをどう説明する。返答によってはこのまま突き刺す」
私はメネシスの事を少しだけ見てから睨み付けた。
「枢密院の一人たる私に刃を向けるとは万死に値するぞ」
私に吠えるが気にすることなくバスタードソードをふるって顔を薄く真一文字に切り裂くと悲鳴をあげ転げ回る。
「そのくらいでおよし、この子は敵を作りすぎたから失脚する。任せておくれ」
マリアが私の前に立ったのでメネシスを担ぎ上げて騎士に葬るように言うと館に戻った。
「あの技はどこで知ったんだい、マナウス家が驚いていたよ秘伝の技をだされて」
そう言われて一本背負いの事と気がつき、大昔から伝わる技のひとつと言うと頷き、
「色々あったけどゆっくり休んでおくれ三日後に出発するからね、それと魔王の軍隊との小競り合いがさらに悪化していて早めに対応を皇帝からも頼まれたからね」
風呂の準備をさせ残りの日を古代の言葉を習い古代書を読んで過ごした。