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兵器として

ナナイは道を通らず最短で走り抜け私も後をついて走り抜けその後ろから大きな足音をたてておってくる。

マハラジャから渡された物の効果なのか襲われずに進み続け1週間ほどで魔王の都が見えてきた。


「何か不満そうに見えるんだけど」

ナナイが私の顔を見て聞いてくるので、

「魔王の都がこんなにきれいなのは、悪の権現でおどろおどろしい威圧してくるものだと」

「都は都よ、地方は好き放題させてるけどヒューマンも一緒でしょ」

私は肩をすくめながらこちらの方がよほど文化的だなと思いながら花があふれる丘を下り城門へと向かった。


「なかなか早く来たようだな、客人として遇する」

マハラジャと呼ばれたあの魔族が足を組んで空中を漂いながら待ち受けており町中へ進む、

ゴルフは華やかな光景にすげえや、うおぃーなどと声をだしナナイに肘鉄をくらい悶絶している。


「争い等は無いのか」

私はまず疑問に思っている事を前をいくマハラジャに聞く、

「衣食住満ち足りていれば争う事もあるまい」

その通りなのだが自分の固定概念とあまりにも違うことに戸惑いハルも沈黙している。


姿形は異形の者だが生活を見る分にはヒューマンよりも文化的で顔つきも和かだ、マハラジャは敬意を持たれているのか丁寧に挨拶され頷き返していく、

「ついたぞ」

そこは町のなかでは少し高いところだが堀も壁もない花に溢れた平屋の館で門番がおらず、

「警護は」

口に出てしまう。

「わしがいる。数人おるからそれで足りる」

それだけ言うとノックして中へとはいった。

ホールを抜け廊下を抜けるとさらにノックして入ると白い部屋の奥に美しい女性がいた。


「マリア・ディ・ユニバース陛下、冒険者のズイセツ殿をお連れしました」

マリアと言われ懐かしいと感じながら一礼をして見つめる。マリアに顔つきが似ており肌の色や瞳は紫がかった白だが柔らかい顔つきであり魔王と言うギャップに見つめてしまう。

「ようこられた、私の顔に何かついているか」

優しく微笑み、これが物語で言うなら危険のまえぶれとでも言うのだろうがハルの精神的なコントロールがあるので操られるとかはないだろうがその声といい引き込まれてしまいながら、

「知り合いによくにているのと、美しいので見いられていました」


駆け引きをしなければならないところで率直に気持ちを出してしまい、自分でも内心かなり慌てているという状況にどうすればいいか迷ってしまう。

「客人は率直のようだな、しかしわが部下を倒したと言う力、危険すぎるとは思わないか」

確かにここまでやりたい放題と言って良いことをしており子供に武器を持たせるようなものだと言われて素直に頷くしかなかった。

「どうする。ヒューマンのように私を討伐するか」

「いえ、敵対するものでなければどうするつもりもなく、ただ黒い球体を調べさせていただければさいわいです」

本来の目的を忘れそうになりながらなぜか引き込まれている自分がおりハルの感情の遮断も行っているのか効果が不明なのかわからなかった。


「あれを調べたいと、あれがあるからこそわが民は繁栄している」

「いえ、止めようと言うのとは違い調べたいだけです。この世界共々」

「報告通り面白い人物だな、たしかヒューマンの方でも黒い球体を何かしらしてドラゴンなどを産み出したとあったが、よろしい調べて見てくれ、ただし調査結果を教えること」

それだけ言うと思い出したように、

「そう錫杖を代価は支払うから渡してくれれば嬉しい」

ナナイの持っている錫杖を返してほしいと言われ私は同意すると魔族で流通している金貨が入った革袋を渡され、ナナイが両手でうやうやしく献上した。

「感謝する。マローダだけでは冒険者や軍隊の侵入を防ぎきれないからな」

マリアはそのまま退席して私はマハラジャと共に地下へと降りた。


黒い球体は以前のものと比べようがないくらいの大きさで私は表面に手のひらをそえるとシステムを呼び出し目の中に表示させる。

以前のとそれほど変わらないが周辺にある球体の情報や制御システムがあり確認をしていくと1つだけ昔も今も変わっていないのか南極大陸に大きな宇宙港と旧統一政府の機関があったと表示され、

〈多くの人々は空へとあがりましたが一部の地球絶対至上論者が残ったという記録が残されています〉

「そこまでいくと言うことか」

主義は生きるための方便とはいえその子孫が残っていれば厄介なことになると思いながら、

「通信アクセスは確立できないのかな」

〈外部との通信手段は全て物理的に切断しており復旧した形跡もないということです〉


その他のエリアを確認していくと培養の工場には魔族のマハラジャと同じ個体が製造保管されているようで、

「1つ聞きたい、生殖能力は無いのか」

マハラジャは少しだけ考え、

「生殖機能はついてない、もし死んだ場合にはこの輪呀を新しい器に持たせれば記憶が引き継がれる」

手首に3つの金色のわっかが3つ緩いブレスレットのようにありそれをクルリと回して見せる。

「体は器でしかないということか」

「姫を護には問題はない、上位と呼ばれる魔族はみなそうだからな、その事を知っているということはここに絡んでいると言うことか」

私は頷き壁に隠された通路を開くとマハラジャを連れて中へとはいった。


ガラス張りの向こうは実験室というよりオートメーションされた工場であり見たこともない魔族が入っている。

「グラス、ライネル、ガカス。上位がすべているようだな」

自分自身もガラスの大きなフラスコに入っているのを見て唸りため息をつく、

「ズイセツ殿は我等を創りたもう一族と言うことか」

「いや、それよりも前の住人ではじめて知ったから調査をしているということだ」

「我等は何のために創られたのか」

「過去この世界は汚染され人々は空へと逃げ出すしかなく、それに適合できる者としてだと思う」

「それはいずれ戻って来ると言うことですかな」

空へと脱出した人々は戻ってくるかもわからないそして残った人もと思いながら、

「私が言うのもおかしいが今更と思いたい」

「そう願いたいものです」


地上に戻るとマリアの元へ知らせが来る。

「申し上げます。ヒューマン及び亜人どもが大挙して押し寄せ村などを焼き払い侵攻してきております」

「マローダはどうした」

「数に押され倒されましてございます」

「そうか、どうしてくれようかマハラジャ」

魔王であるマリアは微笑みながら聞いてくる。

「我等で迎撃をしたいのですが」

私はあの嫌いな顔の貴族を思い出しながら、

「話の途中すいません、提案があるのですが」

そう伝えると促される。

「地下に上位の魔族である器がありそれに精神を吹き込めば戦えます。それを当ててさらに向こうを壊滅させれば希望に叶うかと」

自分でも悪人と言う自覚はあるが、この場合はそれでもいいと自分に言いながら地下の報告を行い提案をする。


「そうかそうしてもらおう、ただし次に産み出される魔族は生殖機能をつけ子孫を残せるようにしてくれ、我らの臣下は兵器ではない、それによる問題があるのか」

「兵器としてなら性能のばらつきでしょうが、進化も退化もする生きていくものとして普通のことです」

「それでよい、マハラジャ言いたいことはわかるが我等が我等で生きていくという大切なことだからな、すまぬ」

戦いしか知らなかった者に生きる戸惑いを今更ながらに与えなければならないという謝罪なのか魔王と呼ばれた女性は謝ると下がった。


「ズイセツ殿感謝する。我らには言えないことを言ってもらい姫の重圧を取り除いてくれた」

「気にするな、姿はあっちだがこっちの方が好きだからな」

私は自分から素直にマハラジャに笑うと、

「そのついでと言って良いのかわからないが姫に寄り添って貰えないか、我ら臣下ではできないこと御願い致す」

地上に足をつくと頭を下げてきたマハラジャに驚きながら素直に頷いた。


私は寝室を聞いて廊下に出て向かうとノックした。

「だれかな」

たぶん私とわかっているのか口調は柔らかく感じて中へと入る。

「夜這いをしにきた」

そう言うと笑いながら、

「そう言うことは震えながら言うものではない、しかし嬉しいぞ」

見透かされているようだが通してくれベットの横に座る。


「魔王というのはどういうものなんか」

いきなりそんなことを聞かれ考えてしまう。

「ズイセツは真面目なのだな、気楽に考えろ」

上半身を起こして少し笑いながら私を見る。それを感じて顔を赤くしながら、

「敵対する総称でしょう。その名前をつかい施政者は弱者を搾取しているということ理由というわけです。好む好まざる関係なく」

普段は見せないだあろうつまらなそうな顔で、

「私が居なくなれば変わるか」

「それはないでしょう。彼らは何かしらの理由をつけて略奪するために戦争を起こします。同じマリアという女性はそれで国を一度滅ぼされましたから」

「同じ名前か、ズイセツとはどんな関係か」

瞳の中に焔のようなものを少しだけちらつかせ聞いてくるので、

「夫婦と言う名目上は有りましたが利害関係の間なのか自分にもわからないところがあります」

「男というのは罪深いのう、女心をわからないとは」

そう言いながら私を引き寄せ私もチラッとマリアのことを思い出しすぐかきけしてマリアを見る。

「優しいいというべきか」

少しだけ悲しそうな表情をみせ布団に引き込まれていった。


翌日ベットに一人で寝ているのに夢かと思いながら地下へ向かい精神を吹き込んでいく、それと平行して次に作り出される個体それぞれに生殖機能をつけていくようにプログラムを書き換えていき200体程のマハラジャや芋虫の形をしたマローダ等の上位種族を地上につれていきマハラジャに引き渡した。

「感謝するズイセツ殿」

それだけ言うと進軍を開始した。私はボールと鳥形のドローンを製作して追わせた。



数日のち応接室で壁にボールやドローンからの映像を映し出していく、

「魔法ではないテクノロジーというやつだな」

マリアは自分の臣下が闇夜を進みながらヒューマンの騎士団を包囲殲滅戦を行う様子を見つめていく、

経験はないが個体の能力は圧倒的であり、マハラジャの指揮の元次々と飲み込んでいき私が最後に訪れた街おも夜襲で破壊尽くしていった。

「数では圧倒的にヒューマンが上だが連携をとらなければわが臣下の敵ではないな」

マリアは反攻侵攻にかわったのを見届けゆっくりと目を閉じる。3日3晩寝ずに見続けておりさすがに少し疲れたようにしていたが命令したものとしての責任なのか寝ようとはしない。


「本当は私もついていきたいがここから離れるわけにもいかない、影響力が落ちれば騒乱の原因になる」

個々の力が強い魔族は魔王の下で大人しくしていると言うことかと思い、

「この場所から動けばと言うことですか」

「そう、あの球体からの波動により力を得ている。距離が離れれば力は衰え気付かれれば好き勝手を始めるであろう」

「力が得られれば良いのですね」

私はそう言うと返事も聞かずに地下へと降りた。


〈黒い球体を作るのですね〉

「素材をどうするか」

私は球体からの情報を引き出すため手をそえると目の前に色々な情報が流れ込んできてハルが必要でないものを消していく。

〈素材は95%ナノイドで代用できますが中核となる金属は地上にはなく空にあります。直ぐに地上に送り出しますか〉

衛星に付随する小惑星からの採掘で微量ながら採取されており、今回の件は十分賄えると教えてくれたので頼んだ。

〈しかし動力の問題があります。地下の動力炉は古い年代とはいえかなりの高出力、必要な動力はこのようになります〉


かなりのエネルギーが消費されており減らせば球体からのエネルギーが減少する。少し考えているとあることに気づき、

「これだと増幅され周囲のかなりの範囲に放射する。一人分で良いんだ範囲は背中にユニットをつけるから2mもあれば」

〈そう言うことですね、それならこの様になります〉

設計図は腰の左右に取り付け共鳴させ、エネルギーは私がレールガンの供給と同じ羽根を展開して供給と背中にバッテリーを備えると言うことだった。

〈準備まで六時間、落下場所は郊外の荒れ地に落とします〉

私が承認すると直ぐにユニットの製造を始めた。


「誠にそんなことが出来るのかズイセツ」

魔王マリアは驚き威圧が解放され周囲の侍女が悲鳴をあげる。私も肝が冷えると言う言い方が当てはまるほどの力であり言葉の意味を理解した。

「すまぬ、それが本当なら感謝する」

美しく穏やかな表情にもどり私に飛び付いてきた。侍女達は青い顔をして退出していき私たちだけになった。

「1つ聞きたいのだが私がこの力をヒューマンや亜人の領地を飲み込む力としていいのか」

「私には彼らに何のしがらみもなく腐敗した権力にはいやけがさしています」

「そうか、案外青臭いのうズイセツは、力は腐敗を呼ぶ当人に関係なくだ、我らの国もあるからな」

「そうですね、しかし悪魔の皮をかぶったヒューマンの執政者と魔族、たいした違いはないと。逆に魔族以外では上がいなくなればかわるかなとも」

「ズイセツは甘いな、外敵がいて団結はすれど力をつければ主導権争いは起こる。我等は己の力だから分かりやすいがな」

「それとお願いが」

私はもう一人の女性を思い出す。


「かまわん私を解き放ってくれたのだからなお礼をしなければ、そう魔戦将軍でも宰相でもそれか私の伴侶でも良いぞ」

昨夜のことを思い出しながら顔が赤くなり、

「それは今回のことが終わってからで、私のヒューマンの法での伴侶がおります。名目上だけでしたが国を統べておりそこは手を出さずでお願いしたい」

「そうか、私もあってみたいからな、たしかドラゴンなどを産み出したときくから戦えば部下の命が無駄に消耗する」

こうして話を終えると郊外に向け私は移動して落下に備えることになった。

30時間ほどで落下することになっており落下地点は魔王の命令で誰も近づかないようにしてもらった。

出発するとき、

「命令はしたが絶対ではないからな気を付けてくれ」

魔王マリアはそう言って送り出してくれた。



地面に穴を堀りその中で待機する。満月で辺りは照らし出されており静かに待っていると、

〈4方から接近中、ここを目指しております〉

落下まで5分を切っており迎撃に出ても危険だがその前に接触すると言うことらしく判断に迷う。

考えている暇に相手は到着したらしく、

「出てこい、魔王に取り入ったヒューマンよ」

がらがら声が響き渡り私は少しだけ躊躇したが穴から出た。落下まであと3分を切っており穴のすぐ横に立って見るとほっそりとした若者の魔族であり、その他は5mはあろうかと言う角を数本と生やした岩のような素肌の者や体がタコのように出来ており触手を小刻みに震わせている。

〈面白い骨格をしている。あの角の魔族は外骨格と内骨格両方持ち合わせておりかなりの強度をもっている。タコは骨はなく筋力で維持しているが水中でもないのに維持できるとは驚きです〉


ハルの分析よりも落下までとその瞬間にどう切り抜けるか考える方が先で光学免彩を作動させる。その瞬間角を生やした魔族は大きく吠える。耳の機能は自動的に絞りこまれ保護されるがマントの表面にあるナノイドが何かしらの力を表面に受け機能不全を起こしてしまった。

「どんな魔術か知らんが我らには利かぬぞ」

角を生やした魔族はその身なりから信じられない美声を発して笑う。

「魔王やマハラジャが認めたからとてこのラスプーチンは認めぬ」

その名前はたしかロシアの妖僧の名前かと思いながらもカウントダウンは続き30秒を切った。


私は落ちてくる方向をゆっくりと指差しながら、

「この場から立ち去ることをおすすめする。すでに遅いがな」

そう言って光る物を肉眼で視認して魔族が驚いた瞬間穴へと飛び込んだ。


毎度の轟音と爆風が起きて私はローブの中で落ち着くまで大人しくしている。数分して落ち着いてきたのを確認しながら穴から外に飛び出すと、先程角の魔族がいた場所にクレーターが出来ておりそこに降りると表面がうっすら焼けた金属の球体を回収した。



「貴様、私の美しい角を無惨にもどうしてくれよう」

美しい声のした方向に向け発射体勢を整えていたレールガンを撃ち込む、轟音と発射による衝撃波で周囲の砂埃は吹き飛びお腹に亀裂が入り手でおさえているラスプーチンが片膝をついていた。

〈想像以上の皮膚の固さだな、昆虫のDNAと思われる〉

ハルはすぐさま数字でエネルギーとラスプーチンの皮膚の固さを表示しており今は出力の30%程だが70%は必要と言うことで後ろの羽を展開してエネルギーをチャージし始める。


「双方待て、死ぬまで戦うと言うのは姫の意向に反する。ラスプーチンもわかったであろう」

がらがら声の美しい男は進み出てきて、

「ただし死ななければだ、これで戦いたいがどうだ」

バスタードソードを抜いてくるので私もレールガンと羽をしまうと刀を抜いた。


足のパワーをあげて刀を目線の高さに構えると先手で飛び込む、間合いに入ると素早い動作で突きを繰り出した。

「ただのヒューマンではないようだなそのパワーとスピードは」

がらがら声で顔色も変えずにバスタードソードで受けており私はさらにパワーをあげていく、

〈ナノイドの放熱が追いつかない、強制冷却します〉

ハルの声と共に背中の羽が再度展開され細かく震え体に蓄積された熱を放出していきパワーを使ったことの無い領域にいれていき美しい顔が徐々に曇っていった。

「剛力烈火」

そう声が響いた瞬間反撃が始まる。


刀を弾き返したバスタードソードはその勢いのまま弧を描き私の首筋に伸びてくる。私は刃先で弾き返しそのまま切りつける。

右足を後ろに引きながら刃先を鎧で受け切り裂かれながらもバスタードソードを上段から一気にふりおろしてきた。

「双方やめい、ドラクマよその方が命のやり取りをしてどうする」

私の刃先はドラクマの喉に、ドラクマのバスタードソードは私の頭の上で止まっていた。

「クリシュナすまない、年甲斐もなく熱くなったわ」

この魔族はいくつなのかと思いながら相手が武器を納めたので私も鞘に納めた。


「姫は我ら魔戦将軍を待っておられる。急ぐぞ」

そう言うとラスプーチンを軽々とかつぎ上げタコの姿をしたクリシュナは走り去り、もう一人の黒づくめの男も蜃気楼のように揺らめき消えていった。

「すまぬ熱くなったわ、魔戦将軍筆頭のドラクマ、ドラキュラと言った方がいいかな」

美しい男は切り裂かれた鎧を見て嬉しそうにしながら記憶では吸血鬼の領主の名前を名乗ってきて驚かせる。

「最後に消えたのはカーリマン、奴に狙われれば厄介だぞ執念深いからな」

そう言って大笑いして促すと城へむけて走り出した。私も回収したのち館へと戻った。


「どうであった」

マリアは微笑みながらラスプーチンの腹に手を当てると美しい旋律で歌い始め、亀裂の入ったお腹や角が綺麗に修復されていきあっという間にもとの姿にもどりドラキュラの鎧の傷も消えていた。

「これが私の力だ、前戦にいれば命を無くすものもいまい」

「ははっ、魔戦将軍揃いましてございます。勝手にズイセツ殿に挑みこの様なことになるとは不徳のいたすところです」

ドラキュラが片膝をつき頭を下げその他の者も同じようにした。

「魔族でもマハラジャに並ぶ力を持つがそれ以上の者もいるということ心せよ、そしてようやく親征に赴ける」

そう言って私がマリアの腰にユニットを取り付けると驚き、

「これ程の物とは」

マリアの存在が一段と大きくなり魔戦将軍も驚き侍女も悲鳴をあげて下がっていった。

「ドラゴンを呼べ、すぐに向かうぞ」

そう言ってマリアは寝室に私を連れ立ち下がった。


マリアに白銀の鎧を侍女が慌ただしく身につけていき武器は死神を彷彿させるデスサイズであり軽々と持つと侍女を引き連れて外に出た。

造り出した綺麗なドラゴンと違い、あちらこちらに傷だらけな赤や黒や青いドラゴンが次々と降り立ち、最後にふたまわり程大きい白地に赤い稲妻のような模様が入ったドラゴンがおりてきた。


侍女が椅子のついた鞍をドラゴンに取り付け、その後ろに箱を固定して最後に自分達が乗り込むと、

「騎乗」

ラスプーチンが響き渡る美しい声で号令をかけると魔族達はドラゴンに分散して騎乗した。

マリアの横の席に座ると飛び上がる。空高く舞い上がるまでは上下に揺れていたが上がってしまえばゆっくりと風を受け飛翔する。

遠目に見るとヒューマン側は森、魔族側は荒れ地だがその後ろは森と言うか密林が広がっていた。

「荒れ地はヒューマンとの争いでこうなった。元は密林だったのだがな」

マリアは前を向きながらそう呟き、

「しかしこれで終わらせることができよう、早めに降伏してくれればだがな」

その考えは言った本人も私でさえ無理と言うのがわかる。特権を失いたくないものたちが民を煽動して最後まで戦うだろうと言うことを考えながらマハラジャが落とした最前線の街へと降り立った。

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