黒玉宮
城の内宮を黒玉宮と言い国王とその家族が暮らしており、黒い球体はさらに奥の最深部にあるとマリアが説明してくれようやくその入り口に立つ、マリアは壁のパネルに手を伸ばすと発光してスライドドアが開いた。
〈ズイセツ、まだ機能していると言うのも驚きだがマルチスキャンセンサーが反応すると言うのは興味深い。〉
私は同意して、
「マリアこれは誰でも開けられると言うわけでも無さそうだが」
「4精君主の直系のみが開けられるようで、我が国は今は小国ですが創世記には大国エルグランドとして君臨してきたと言うことです。」
マリアはそう言うと中へ入り大きなドーム状の部屋の中心に直系10m程の巨大な黒い球体があり近寄り球体にマリアが手をかざすと空中にポップアップディスプレイが表示されプログラムが表示され流れる。
〈これは私が使用している人工知能プログラムの初期ヘッド、それも試作品といっていいものです。〉
ハルからの発言に手がかりが増えたことに嬉しくなりながら出番がないボールにハルが指示を与え情報を収集し始めるとマリアが白い壁の一角を指差すと、その一角から壁がスライドして神官服に似た白い服を着てマスクをした者がゾロゾロと出てきており私は刀に手を置くと、
「ズイセツ、危険はないです。王族が手をかかげるたびにああやって出てきては表示内容を記録していく」
そう言っているとマリアと私を囲み流れるように表示されているプログラムを見て書き写していく。しかし流れるプログラムをすべて写せず断片的な物であるがそれに対して疑問も持たないのかひたすらかいていく。
私はこの男達が出てきた通路がきになりボールをマリアのもとにおいて中を確認しようと思い、
「マリアしばらくこれを開けておいてくれあの中を見てみる。」
「おきおつけて」
そう返されて私は通路へと入った。
〈ズイセツこのシステムは生きているが自閉モードになって外部アクセスを受け付けない〉
「あの黒い球体とエネルギーの供給は同じかな、あそこの部屋に入ってみよう」
通路の途中にある部屋へと入ると、そこにはヒューマンの亡骸が積み上げられて入るが腐った様子もなく寝ているようにみずみずしいが心音はせずただ細胞が生きていると言う回答だった。
〈これは黒い球体が供給源となっているエネルギーをすぐ近くで受けることによって生きていると言うことだと推測されます。なので体の内蔵部分が小さくなっており内容物も見てとれない〉
ハルからのスキャンデーターが表示され一般のヒューマンよりも内蔵が小さいのと心臓の形が違うことが表示される。私は亡骸からナイフで心臓を取り出すと宝石のような塊がくっついておりそれをくりぬいて袋にしまった。
「この紫のが影響を与えていると言うことかな情報がもっとほしいな」
〈中を捜索すれば何かしらの情報はあると思います〉
こうしてさらに中へ進むと書き留めた紙を積み上げてその横でつなげようとしている部屋であり、ハルもだが私もデータ等も含まれているので同じ表示が出るわけもなく無駄と言わざるおえない作業と思いながらさらに奥へと進んでいく。
通路は左右に別れており私の癖で左へと曲がって進むとセラミックでできた扉へとたどり着き、タッチセンサーがあるので先程マリアがさわったときに読み取られたデータを擬似として送り込むとドアがスライドして開いた。
この中は制御室であるがスタンバイ状態なのか画面が表示されず、ナノイドを送り込みハルが一部だけを復旧させる。
〈どうやらこの施設の動力制御室と言うものです〉
「反応炉とか出はないようだな、と言うかこれは禁止されているテクノロジーだろ」
〈そうですねマグマを使った発電施設でしょう。我々の時代では禁止であったはずですが、原子力では半減期があるので永劫使えないので地殻変動がなければ永久に取り出せると言うことででゃないでしょうか〉
「ただし修理をするシステムが壊れたために最小限のエネルギーしか変換できていないと言うことだな」
〈修理する場合、手持ちのナノイドでは足りません衛星の修理が完了してその後の生産される余剰で修理すればですが、衛星の修理は25%程です。〉
「まだまだかかるといことだな、システムを自閉モードにしているのはこれのせいでもあると言うことか」
〈そうです。手持ちを使えば1%程出力をアップさせられます。それでシステムを解除すれば衛星経由でコンタクトできます。〉
私は同意すると制御室の前にある作業部屋におりるとナノイドをメンテナンス用の配管に流し込んでいった。
〈しばらくすれば復旧するのでオンラインになるようにシステムを変更しておきます。〉
ハルからの報告を受け通路を戻り反対側に進むことにした。通路を抜け扉を開くとそこの中は巨大な工場らしくプラントが並んでおり、
〈この中で先程のヒューマンが作られているようです〉
ハルはそう言いながら目の前のプラントが人工のタンパク質を精製する機械であり現在は止まっているがかなりの量を生産できると言うことであった。
さらに進むと私はこの光景に見とれるしかなく、目の前には巨大なガラスの筒にアニメで見たドラゴンが寝かされておりその向こうには色々な生き物やヒューマン、ドワーフ等が入っている。
〈ここが生産工場とエネルギーの供給と言うことだな〉
「しかしどう見ても生産は止まっているが」
〈それは自然の法則に戻ったのかもしものための生産設備なのか自閉モードが解除されればわかるだろう〉
「しかしドラゴンが飛ぶ姿は空想かと思ったが見てみたいな」
〈そう言うところはまだ人間臭いなズイセツよ〉
そう最後に言われ自分では人と思っているが何処までが人なのかと思いながらマリアのもとへと戻った。
「おかえりなさい、奥はどの様な様子でしたか」
マリアは興味津々で珍しく聞いてくる。
「生物の元になるものだったとしか言いようがない、あのヒューマンもドワーフとヒューマンの違いくらいだからな、生きている屍というか死骸が生きてると言うか生物と言う範疇からは外れていると私は考えている。」
「私達と外は同じですけど違うのですね」
マリアは通路に戻っていく彼らをただ見送ってくのだった。
上に戻ると貴族達からの会見の申し込みがありマリアは承諾の返答をして、
「どう言い訳をしてくるか、結果は同じです。」
表情を変えずマリアは手入れが行き届いてない中庭を見ながら言う、
「あのドレスを着ることだ、あれなら暗殺も問題なく防ぐ寝るときも」
「貴方は始めてあったときから他人事という姿勢でありながらあれを見るために協力していただきましたがこれ以上は無いと思いますがどうされます」
美しく微笑むがそれはあの屈辱を忘れたわけではなくそれ以上なればと思うが私的にはここにとどまる理由は後少しで完了する。それを見越してということなのだろうが次にどこにいくかとい具体的なものは無いので、
「手詰まりと言うことなのだろうが1つあることをして見たいと考えている。ただし直ぐではないがね」
「この荒廃した国で何をと聞きたいですが」
「単純に実験だ、マリアは歴史的に神か悪魔か後に言われると言うことだがどうだ」
マリアは目を一度閉じて開くと、
「私はこの国の行く末というよりは復讐をしたいと言うこと、周囲の国に、貴族にそして慕ってきた民に」
「一番は自分にと言うことか」
プライドというか王族に産まれた者の考えに私は最後を付け足してしまう。
「そうですね、自分もですねだからこそ地獄での貴方の提案に喜んで同意したのですから」
隠れていた狂気と言うものにふれて何を言ってもやるのだからと思い、
「私的にはマリアの手段は気にすることではないからこちらもさせてもらう。受け入れられなければこの国も滅びの道を突き進むだけだ」
それだけ言うとハルに、
「衛星の修理は後回しで地下の動力を復旧してあの部屋の中のを地上にだす」
〈了解しました。直ちに生産分を全て大型の耐熱コンテナに積めてマスドライバーで打ち出します。3日で完了します。〉
「マリア、貴族との交渉は5日後にここでしてくれ」
「わかりました。何をするかは聞きません私がいた国ではもうないので好きなようになさってください」
そう言うとマリアは行ってしまった。
翌日にはシステムがオンラインになりプラントの様子などを城の中を確認しながらフル稼働できるようにとハルに指示していき、プラントから地上へと出る通路を確認すると入り口の障害物を取り除いていく。銅像の下や噴水の排水口等王族の脱出通路も兼ねていたのか建物の下と言うのはなく十数ヶ所は巨大な入り口も含めスタンバイが完了する。
二日後の早朝には空からパラシュートでゆっくりと着地したコンテナを持ち上げ一番大きい入り口を開けてプラントへそして動力制御室に運びナノイドを流し込んだ、
〈半日ほどで動作不良を起こした部分をナノイドで置き換えることにより60%で安全に供給できます〉
「明日までに間に合うのか」
〈肉体は出来ているものを動かすだけですからあとはしてみるだけです。それと制御機能が有りますがどうされますか〉
「いらないマリアの望みでもあるし」
そう言って明日に向けて準備を行う人々の間を抜けてマリアの元へと向かうと倒れた男達ときつい形相をした護衛の男達と逆に異様に冷静なマリアがいる。
刺客に襲われた様だがドレスを着ており自動の防衛機能が働いたようで特に怪我もないようだが護衛の男が、
「女王陛下これで12度目ですぞ、どこかにお隠れになっていただきたい護衛がもちません」
「何度も申しておろう必要ないと」
そう言われ男は私を見たので、
「言われた通りにするように」
そう言って男達を追い出すと城に入って初めてマリアの寝室へと入った。
「毒殺、弓、吹き矢、物が落ちてくる、家財が倒れる、虫を使ったものや今回のように直接まで何度もあいましたがこのドレスは生き物の様に動き全てを防いでくれました」
後ろの襟から延びている飾りの帯をさわりながらなおも顔色を変えずに呟く、
「明日は着ません、そしてお願いがあります」
私に振り返り両手を広げてドレスは床にゆっくりと落ち生まれた姿でゆっくりと近づいて私の装備を撫でる。
私は黙って装備をパージしていき同じような姿になるとマリアがゆっくりと抱きついて私の胸に顔を埋め私も吸い込まれるように動いていった。
翌朝起きるとマリアは服を着替えてゆっくりとお茶を飲んでいる。私もベットから起きて装備をつけて座ると出されたお茶を飲む、
「ありがとう」
マリアは憑き物がとれたように自然な微笑みをかえすと立ち上がり到着した貴族との謁見に向かい、私も黙って後についていった。
〈ズイセツよ昨日の事どう思う〉
機械の癖に感傷的な言い方をまずらしくしてくるハルに、
「自然の摂理からすれば外れていよう子孫のためではないからな、人の形をしているが人とヒューマンだからな」
〈確かにそうだがマリアの中に変化がある。非常に小さく本人にもわからないと思うが〉
「まわりくどい言い方はらしくないぞ」
〈授精したと考える〉
「人に似せているが人でないはずと言うことだろう」
〈確かにそうだがしないとは言ってない、こんなことで動揺する方がどうかしてると思います〉
「動揺はする、なればこそ確実なのかと聞きたい」
〈99%だがそのまま育つとはDNAが組み合わせで不安定になっているので手を加えなければ自然に消えるだろう〉
そうこうしているうちに謁見の間に入り私はマリアが座った二段高くなっている真ん中に座って待つことにした。
〈何時でも解放はできます〉
ハルからの報告をききながら自分の子供と言うあり得ない状況に心を乱されており、何度も透明化しているボールで熱感知等のセンサーでスキャンをしてしまうが気持ちが晴れることもなく座っている。
「報告します。貴族連合は停止を無視して城の前まで戦力を入れてきており一触即発となっております」
「構わぬ入れさせろ」
「しかし危険では」
「構わぬと言っておろう」
知らせに来た護衛の男にマリアは言い放つ、
しばらくすると本来あり得ないそれぞれが数十人の護衛を引き連れた貴族が謁見の間に入場してきており待ち構えていた文官や護衛が騒ぐのをマリアは止めずにいる。
先頭には痩せた長身の男がおり、
「お久しぶりでございますマリア王女様」
「ライルよ久しぶりだが今さら何しにきたのだ」
いきなり核心をつくマリアにライルと言う貴族は動揺もせず、
「本来の現状を取り戻しにきただけですよ我々は」
「父である王や民を裏切り国を滅ぼしたと言うことかな」
ライルは大笑いしながら、
「無能な国王はそう大国の庇護下に入るようにと再三薦めましたものを否定していたので仕方なくこの様な事になり残念にございます」
そう言うと手を上げるライル、私はハルに命令を与えるとフラッと立ち上がり前に立ちはだかる。
「お前は確かズイセツ卿と言ったな我らに敵対するのか、それとも教会の代理人なのかな」
「私は何をするつもりもない」
そう言うと嬉しそうにライルが頷いた瞬間震動が立て続けに起きてマリアの座っている玉座の後ろも震動と共に黒い影が次々とわいてきた。
鳴き声をあげて私の横に来るその物に沈黙しており誰も何も言えないようだった。
「申し上げます。城内から突如多数の亜人やモンスターが現れパニックになりつつあります。いかがなさいますか」
謁見の間に男が入ってきて報告をする。
「何もするな武器をもっての敵対を禁止する」
マリアはそう言うとようやく正気に戻ったのかライルが、
「王女よ血迷ったかこの様な者達を引き入れるとは」
そう言って剣を抜き構えると殺気に一斉に反応をした亜人やモンスターが威嚇をしながら進みそして駆け出してライル達に次々と襲いかかる。ゴブリンやオークそしてリザードマンなどドワーフやエルフらしき姿やヒューマンも見受けられライル達に倒されていくが次々とわいてくる状況に飲み込まれていった。
「ズイセツ卿これはどういう事ですか我が国はどうなってしまうのですか」
護衛の男は悲鳴をあげたいのを我慢して剣の柄を握りしめ抜きたいのを我慢しているようで、
「我が国とは今のこれが国と言うことだ、安心しろ貴様達が言う創造主の力を使ったまでだ、有りのままを受け入れられなければ死ぬだけだ」
「神よ」
精神を保つには神にすがるしかないと男達は祈り始め、しばらくすると貴族達を駆逐した者達が私達の前に来て敵対行為をしてないのを確認するとオークが、
「我らはいにしえの力により生まれてきた、お前達ともとをただせば同じ」
そう言うと握手を求めてきたので握り返す。
〈どうやら催眠学習なのか知識能力は高いようだな、外もドラゴンに制圧されつつある〉
私は生き残っているものに、
「戦いたければ戦え、生き残りたければ何もするな、融和を求めたければ受け入れろ」
そう言いマリアを連れて王宮の前に出るとガラスの筒に入っていたドラゴンやオーガが自分に敵対したものを排除し終わり出てきた私たちを見つめる。
「我らを解放したものだな、何がしたい」
「特にない、自由に生きてくれ共に生きるならそうすればいい、駄目ならば滅びの道を作るだけだ」
ドラゴンは少し考えマリアに、
「お前はこの国のものか、どうする」
「この国は一度滅ぼされております、そちらには恨みがあるわけではなく御自由に」
「わかった、敵意を向けられなければ我々もそなたたちの祖先の事は伝えられてるからな、最近の事は知らぬが」
そう言うとドラゴンは飛び上がり王宮の裏手に降りていきオーガや出てきたオークやゴブリン等は倒した相手を担ぎ上げると城外へと向かった。
入れ替わりに人々は混乱した状況でマリアの元に現れ口々に助けを求める。
「我らの国は滅びたが共に生きたければ生きよ、否定するなら剣をとれ」
そう言うとマリアはきびすをかえし王宮へと戻っていく、
「私は生き残り、貴方は私に神か悪魔かと言われましたがこの事でしたか、これでは悪魔でしょうね悪夢としか言い様のない状態に」
「自分が決めるわけではないし、評価はのちに決められることだからな」
私は昔はこういう世界でそれを望んだ科学者がいたのだなと思いながら彼らを見送る。
「生き残ってしまったので放棄した責務を果たします。ズイセツはいかがなさいますか」
少しだけ怒った感情を出してくるのを何故か笑顔で返しながら
「ここにいてもすることはないから魔物と呼ばれている者がいる国へ行ってみるつもりだ」
「わかりました。感謝は言いません夫婦ですから」
「そうかわかった」
私はマリアが気がついていない命に少しだけ心引かれるように出発をした。