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第13話 「アメイジング グレイス」

「わたしは彼らおよび


わが山の周囲の所々を祝福し


季節にしたがって雨を降らす。


これは祝福の雨となる。」



エゼキセル書 第34章 第26節

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僕は「アメイジンググレイス」を弾く事に決め、K牧師に歌をお願いした。



Kさんは性格が表れた実直で誠実な歌を唄った。


途中から僕もハミングで参加し、ふたりのユニゾンが礼拝堂に木霊し、響いた。


後奏は僕のギターソロで、リタルダンドさせて余韻を残して終わった。



やはり天井が高い木造の場所は音が良い。


Kさん夫婦から暖かい拍手が贈られた。


僕は続いて「涙そうそう」のソロアレンジのものを

2人に聞いてもらった。


やはりお腹が満たされていると思い通りの音が出せる。


僕は音色で星を描くイメージで演奏した。


輝く星の欠片がこの空間に、聞いてくれている2人に降り注ぐ、そんなイメージを持って心をこめて弾いた。



最後の1音まで弾き終わると、大きな大きな拍手が

贈られた。

拍手は礼拝堂の中で反響し、とても大きな音に聞こえた。


Kさんが沖縄の曲なのに西洋の音階なんですね、と

言い、すごく綺麗でしたと握手してくれた。


Kさんの奥さんも、とても綺麗な曲ですね、なんと言う曲ですか、と興味を持ってくれたので、涙そうそうといって涙が止まらず流れると言う意味の沖縄の言葉のタイトルですと伝えた。


僕はふたりにお礼を言い、教会を出ることにした。



初対面のギター弾きに惜しみ無い拍手と情をくれたふたりを見て、僕は妻に会いたいと強く思った。



Kさんが僕と食事したと言うことは、奥さんは1人で支度し、食事し、片付けたはずだ。


僕はすでに奥さんにも迷惑をかけていたが、Kさんの奥さんは欠片もそんな素振りを見せなかった。


僕はふたりに心の底から感謝した。



夫婦揃って玄関まで送ってくれて、僕は去り際もう一度Kさんと握手した。


Kさんは奥さんに聞こえないように「こういう時は男が折れておくもんです」と言って、いたずらっ子のような笑みを浮かべて眼鏡の奥でウィンクした。


どこの家も大変なんだな、とつられ笑いしながら僕は再びKさんと奥さんにお礼を言い、深く頭を下げた。



僕がギターを背負って自転車に跨がるとKさんは「やっぱり電車代をさしあげるから、今日は電車で帰って、元気なときにまた自転車取りに来たらどうですか?」と言ってくれた。


でも、今自転車に乗って帰ることに意味があるような気がしたので、折角のお言葉ですが、と断った。


毎週日曜日はお祈りがあって、皆で歌を歌うから

ギターを弾きに来てください、とKさんは言ってくれた。


僕はいつかまたギターを持って妻と伺います、と約束し、自転車を漕ぎ出した。



Kさんはかなり長い間僕を見送ってくれた。


体は疲れてはいたが、早く帰ろうという意志が苦痛から目を背けさせてくれた。


しばらく進んでKさんの姿が見えなくなってから、僕は携帯電話の電源を入れ、妻に電話をかけた。



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